[コラム] 脱暴力を呼びかける第19回
──「子供の虐待」にみる暴力の連鎖断ち切る方法 水野阿修羅
暴力被害者の4通りの対処法
栃木県で子供二人が殺される事件が起きた。マスコミの報道によると、被害者の親も加害者も、それぞれ二人の子供をもつ父子家庭だそうだ。「四〇歳前後の男が、子供をかかえて大きくもない家で同居していること自体が不自然だなあ」と思ったが、その後の報道で、親二人は、中学時代からの先輩─後輩関係で、暴走族に関わり、建設関係の仕事に就いているとのことだった。
加害者Sは、被害者の父Kの後輩で、家に居すわられたことや、クーラーのある部屋をとられたことなど、不平不満がいっぱいあったが、Kには言うことができず、Kの子供にやつあたりしては、Kにどつかれていたようだ。
子供を殺害したのも、日頃のうっぷんが爆発してKの子供をどついてしまったのが、Kにばれると自分がどつかれるというので、子供を殺したと自供している。
真相はまだまだ分からないが、暴力の連鎖を痛感させられた。
暴力の被害を受けた人の対応は、次の四つに分類できる。
@「理不尽だ」として止めさせる。
A「自分が悪いから仕方がない」とあきらめる。
B腹が立つけどやり返せないから、もっと弱い者にあたる。
C誰か第三者に支えてもらって、傷を大きくせずに、立ち直っていく。
@のタイプは、相手より強くなってやり返すタイプで、少数派。
Aのタイプは、日本人に多い、あきらめ派。
Bのタイプが一番多い。栃木のSは、このBのタイプだったようだ。
Cのタイプは、幸運な人で、誰かが手をさしのべてくれたため、傷を大きくせずに立ち直れたケースで、これも今までは少数派であろう。
普通の人が加害者に
私は、「自分自身は@とCのミックスかな」と思っている。暴力的には決して強くはないが、頭の回転が早い(と自分では思っている)ので、知恵を使ってやり返そうとしてきた。支えてくれる人も結構いたので、個人的暴力行為で逮捕されたことはないが、運動としてやり返して逮捕され、有罪(傷害六ケ月)になったことはある。
Aのタイプの中には、自分を責めて、うつ病になったり、薬物中毒になったりする人も多い。ちなみに、SもKも、覚醒剤を使っていたとされる。
問題は、Bのタイプだろう。栃木の事件の数週間後、京都の病院で、看護助手の女性が、高齢の患者の爪をはがすという事件が起きた。加害者は職場でいじめを受けてストレスがたまっていたので、何も抵抗できない患者の爪をはがして、うっぷんを晴らしていたようだ。
このケースは極端な例かもしれないが、小さな嫌がらせを、自分より弱い立場の人にする人は沢山いる。
そして、このタイプの人の中には、強い者にはペコペコする人が多い。児童虐待でよく問題になるのが、警察や行政、児童相談所に通報されたのに、子供が保護されずに、結果的に、殺されてしまうことが多い。
栃木のケースも、児童相談所に連絡がいったのち、KもSも、Kの親も、人当たりの良い、低姿勢な態度で応対するため、警察や児童相談所が親を信頼して、子供を引き取らせることになり、結果的に、子供が保護されずに、被害が集中した。栃木のケースに限らず、こうしたことはあちこちで起きていて、その度に、「児童相談所は何をしていたのか」と責める声があがるが、加害者の多くは、普通の人であり、強い人にはペコペコするタイプなので、専門職でもない行政の人は、トラブルをおそれて子供を返してしまう。Bのタイプについては、次回で対処法を述べよう。(つづく)