[コラム] 渡辺雄三自伝第18回
マオイズムは途上国の「守り神」そして反グローバリズムの柱
現在は「グローバリズムの時代」といわれ、価格万能、「何でも安けりゃ結構」との言説が世界中で大手を振って闊歩しています。
しかし、これで困っているのが途上国です。自国で生産している農産品に比べて、外国から輸入する肥料・農薬・農機具などの価格が、彼らの所得と比べて余りにも高いので、買うことができないからです。
したがって、反グローバリズムの柱の一つがマオイズム、すなわち「それぞれの国で農業と工業との間で経済的循環を作り出すために、農民の平均収入を都市労働者の平均収入と同額にするよう主要農産物価格を設定する」という原則です。
こうして、戦後日本経済復興の青写真となったのはマオイズムでした。しかし、この成功に溺れた自民党は、農業に資金をつぎ込むこと自体が目的となり、日本の国家財政を破綻の淵にまで追い込んでしまいました。
何事も「過ぎたるは及ばざるが如し」です。 日本では、「我が国の戦後復興は、もっぱら米国が提供してくれた資金のおかげだ」との言説が横行していますが、これは間違いです。国際共産主義運動の成果・マオイズムが無ければ、戦後の経済復興は有り得ませんでした。
現在、途上国が自国の資源を基礎に自前の工業を興そうとすると、多国籍企業が低価格商品を持ち込んで、それを潰してしまう、ということが横行しています。これを国際基準として公認させようとしたのが、「投資保護協定」でした。
昨年九月、メキシコのカンクンで開かれたWTO総会で、先進国は「投資保護協定」を国際基準として公認させようとしましたが、途上国の反対で潰されました。マオイズムは途上国の守り神なのです。
朝鮮・インドからも渡来していた「シルクロード」東端=古代の日本
「新左翼」、「人民新聞」を通じて私に大きな影響を与えた人々の一人として、私にとって忘れられない人がいます。I君という、韓国青年同盟大阪府連の幹部でした。
彼の一言が無ければ、私は日本の古代史に関心を示すことはなかったでしょう。当時、韓国内で軍事独裁政権反対・民主化運動が高揚し、彼らと連帯して、国内でデモや集会などが頻繁に行われました。
それで、I君とは頻繁に連絡を取り合っていました。ある時、私は酒飲みに誘われ、飲んでいた時、彼は私にこう言いました。「日本の天皇は金官伽耶の王族の末裔だ、と韓国人は見ているんです」。
私は、天皇家の中だけで使われている言葉が朝鮮語に近いことを知っていたので、「やはりそうだったのか」と思いました。
朝鮮で日本の「古事記」「日本書紀」に当る「三国史記」「三国遺事」には、金官伽耶の王族について《インドから渡来した》との記述があります。古事記や日本書記には、《船で海を渡ってきた渡来人の一団が京都の久美浜近くに上陸し、陸路で大和に入った》との記述があり、これが金官伽耶の王族亡命を指しているとされています。
彼らが通った道には、鉄器を作った集団の跡が点々と残されており、「鉄の道」とも言われています。今風に言えば、彼らはハイテク集団でした。彼らが大和で主導権を握ったであろうことは、容易に想像されます。
「古代、インドから日本に人が渡っていた」という話は、唐突ではありませんでした。戦後、大野晋学習院大教授が「日本語タミール起源説」を発表し、注目を浴びました。
タミール人はインドにおける先住民族です。中東でアーリア人によって農耕文明が発展し、彼らはインド大陸に進出し、その結果、先住民であったタミール人はインドの東南部地域に押し込められます。
NHKTVで見ましたが、タミール人は「魔除け」として狛犬の石像を使っており、日本の神社の入り口に置かれているものとそっくりです。確かに、日本語とタミール語との間には関連性が認められますが、文法が全く違うので、現在学会ではこの説は否定されています。
しかし、ヴェトナムでローマ帝国の金貨が見つかっており、古くから「絹の道」がヨーロッパとの間で通じていたことも判っており、古代からアジアとヨーロッパとの間には、今考えられている以上に広い交易関係がありました。 (つづく)