[政治] 米軍ヘリ墜落事故/占領意識丸出し・米軍の無法 黙って見逃す警察と小泉政権
米軍が事故を起こせばそこは占領下
「取材しながら何度も軍服を着た人たちと衝突しましたが、まさに『占領意識丸出し』という現状を実感しました」──琉球朝日放送記者のコメントである。
米軍ヘリが沖縄国際大学に墜落した事故で、アメリカ軍は事故直後から厳しい立ち入り制限をしいて県警を締め出し、当事者である大学関係者にも一切足を踏み入れさせなかった。そんななかで琉球朝日放送は現場の模様を伝えようと事故直後の建物の中に入り、取材したのだ。しかし米軍は、取材陣を強制排除したのみならず、「テープを出さなければ、ここから出て行かせないと激しく問い詰め、押し問答になった」とレポートしている。
軍事政権下で軍事施設を撮影し、軍が「取材テープをわたせ」と強要するというのは、聞かぬ話ではない。しかし今回のケースは、全く事情が違う。他国の民間施設である大学で事故をおこしておいて、事故現場一帯を封鎖した上で当該国メディアを強制排除し、取材テープをわたせと強要したのだ。米軍が沖縄を今だに占領地域と見なしていることを示すと共に、日米関係の真の姿をあからさまにしたと言うべきだろう。
米軍が事故を起こせば、そこは米軍占領下になるというのが今の「法治国家」日本の現状なのだ。
米軍は、事故翌日から日本の警察による現場検証を拒否したまま、機体の残がいの撤去を開始した。伊良波幸臣県警刑事部長は「捜査を展開する意味では(機体を)現場に残した方がいいが、米軍財産の規制は県警にはできない」と述べ、県警は撤去作業を「見ているだけ」。未だに事故を起こしたヘリ乗組員の氏名・所属・階級なども把握していない。
事故機を含む現場検証は行われなかったため、市民からは「原因究明がうやむやにされ、再発につながるのでは」と不安の声が上がっている。
こうした事態について、「日米地位協定改定を実現するNGO」事務局長の新垣勉弁護士は、次のように語っている。
「米軍は、勝手に立ち入り禁止区域を設け、警察による現場検証を妨害しています。こうした行為は、駐留米軍の地位を定めた日米地位協定からみても違法です。米軍が行っていることは、警察権を基地の外で行使しているということです。たしかに地位協定によると、米軍が基地外で警察権を行使できる場合があります。しかし、地位協定にもとづき日米両政府が結んだ合意によれば、それは米兵間の「秩序及び規律の維持」に関する場合に限られています。たとえば、スナックで米兵同士が暴れている場合に止めに入ることができるといったことです。今回の事故が、それにあたらないことは明らかです」
「この夏休みは思いっ切り頭を空っぽにしたいね」─小泉首相
「首相は何も見ず、知ろうともしない」「政府はまた、うやむやにする気ではないか」。沖縄の基地問題解決に及び腰の政府に、沖縄の不信感は増すばかりだ。
自然保護や普天間基地撤去を求める活動に参加している兼城順子さんは、「辺野古を見たり、沖縄の現状を見るべきなのに、首相は何も見ず、知ろうともしない。今ほど腹が立つことはない」と批判、前田芙美子さん( 才・那覇市)は「人こそ亡くなっていないが、大惨事。この非常時に当然、首相として現場に駆けつけ、米軍の管理下に置かれている様子も見るべきだ」と憤る。
また、元公務員の男性( )は「安保を優先して、沖縄を見捨てている。これまで多くの事故があったが、政府は今回もうやむやに終わらせるつもりじゃないか。絶対に許せない」とやり切れなさを込めた。
こうした中、防衛庁は一七日、在日米軍司令部に対し、再発防止策が講じられるまでの間、普天間飛行場のすべての航空機の飛行を停止するよう求めた。米軍は同日から事故機と同型機以外のヘリの飛行再開を発表しているが、防衛庁の要請に対し、在日米軍司令部のラーセン副司令官は「考慮した上で返答する」と答えたという。
一方、外務省は同日、マハラック駐日米臨時大使に「ヘリ運航を必要最小限にとどめるよう」要請しており、政府内で対応が分かれている。
こうした事態に首相は一体何をしているのか?「この夏休みは思いっ切り頭を空っぽにしたいね」とは、お盆を前にした小泉の抱負だが、初志貫徹のようだ。
一三日の事故から一週間たった二〇日午前、在沖米海兵隊は、事故を起こしたCH53D型機を除く所属ヘリコプターの飛行を再開させた。在日米軍は非公式に小泉の意向を打診したはずだが、ホテルで「静養」している小泉は、「もうそんな、お気を使わないで。どんどん飛ばして」とでも答えたのだろう。
ちなみに小泉の一九日の動静は、午前中は来客なく、高輪プリンスホテルでアテネ五輪のテレビ観戦などして過ごした。午後も来客なく、同様にアテネ五輪のテレビ観戦などして過ごしている(時事)。五輪三昧で住民のことを考える「余裕」はないようだ。
米軍への思いやり
米軍駐留経費 7716.8億円のうち日本政府が49%に当たる 3781.2億円を負担している。
(2003年12月31日現在)