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更新日:2004/08/25(水)

[情報] 追悼・松下竜一さんを偲ぶ──元箕面忠魂碑訴訟原告 古川佳子

「ホンモノのもの書き」として勇気やユーモアをもった松下さんと出会えたことは私の喜び

七日、六七才で亡くなった。宿痾の肺のう胞症で、激しい咳と痰に悩まされながら、闘う人々の貴重な情報メディアである月刊「草の根通信」を三〇年も出し続けた。「底抜けビンボー暮らし」の売れない地方作家の死を、マスコミは大見出しで丁寧に報じた。彼の存在が如何に高く評価されていたかを確かめることができた。

私が松下さんを識ったのは、三〇年程前になろうか。七四年六月一七日、私は母を喪くした。悲しみの渕から私を救いあげてくれたのは、松下著『檜の山のうたびと』であった。ハンセン氏病療養所で秀歌を詠み続けた伊藤保を描いたヒューマン・ドキュメントである。母の遺影の前でそれを読んでいたある日、今は亡き夫が雑誌『終末から』を手に、「この中に松下竜一という人が『立て、日本のランソのヘイよ!』を書いているが、その本と同じ人じゃろか」と問う。それは筑摩書房刊で七四年九月号で終刊になった本。松下さんが「豊前火力発電建設差止め訴訟」における抱腹絶倒のレポートを連載し、夫は愛読していたのだった。双方同人物と分かって、私たちは興奮し、付記の住所へ「草の根通信」の講読を申し込んだ。こうして出会った松下さんが、わが母と命日まで同じだなんて…!

七五年、箕面で「忠魂碑移設再建事件」が起こった。神坂夫妻の誘いに応じて私と夫が原告本人訴訟に踏み切れたのは、豊前の七人のサムライが織りなすユーモラスな法廷奮闘記『五分の虫、一寸の魂』の軽はずみのココロに触発されたからでもあった。ノンフィクション『憶い続けむ』は、二人の息子を戦争に奪われたわが母の痛哭の書で、読む人の胸を衝ち、松下さんは裁判に大きく貢献して下さった。

甲山事件の冤罪を告発した『記憶の闇』は、判決以前に山田悦子さんの無罪を確信して書かれたもので、松下さんの作家生命を賭けた勇気におどろき、敬服する。

講談社ノンフィクション賞の『ルイズ・父に貰いし名は』は、大杉栄と伊藤野枝の四女・伊藤ルイさんの半生を辿った名著で、ルイさんはこの本によって偉大な親の桎梏から解き放たれ、「草の根通信」と共に全国を飛翔された。

『豆腐屋の四季』はテレビドラマになり、松下さんは町の人気者だったが、「周防灘開発反対」の声をあげた七二年春以降、毒虫のような嫌われ者になった。そんな松下さんに師と仰ぐ上野英信は「ものかきは社会の毒虫のような存在にならなければホンモノとは言えぬ」と言い、また「松下さんは、これからの日本になくてならない重要な一人です」と言われたそうだが、それは新聞の訃報からも、松下ファンの多彩さからも言えることである。

河出書房新社は、採算を度外視して松下竜一著作三〇巻をすでに刊行したし、全集刊行記念誌『松下竜一その仕事』は、彼の業績を知るには恰好の書である。

響きのある声がもう聞けないのは淋しいが、松下竜一さんと出会えたことを喜びとしたい。

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