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[コラム]「女帝」も天皇も要らない
──釜ヶ崎パトロールの会　かねはぎあつし

二〇〇四年夏、非国民宣言

テレビでヒロノミヤが「…雅子の人格を否定する…」とか何とかと発言していた。…これはひょっとしてワシらか？と思い、テレビに向かって「ハーイ！」と手をあげる。なぜなら私たちは九七年の京都高校総体の開会式の会場でヒロノミヤが「お言葉」をやり出したその瞬間に「天皇制解体！」を叫んだのだから。

発煙筒が炸裂した九二年の山形国体で、開会式の天皇の「お言葉」を粉砕するために、列島各地の仲間たちと会場に入った私は、ロイヤルボックスに現れた天皇を見て、怒りを感じた。たまたま天皇の「家」に生まれたこいつ！たまたま部落に生まれたワシ！ただそこに生まれただけで、こいつは何で一生いい思いをするんか…。ワシの父ちゃんやら母ちゃんは、こんな奴がおるばっかりにボロボロの人生を生きてきたんか…。ワシらは、こんな奴がおるばっかりに差別されるんか このままロイヤルボックスに行って、天皇を張り倒してやりたかった！

私は「部落に生まれた」ということで、保育所に行っていた時から、他の子どもたちのいる前で、先公に「汚い！」「嘘つき！」と言われ、みんなに笑われ、隣近所の人から怖い目で見られた。家が貧乏なことも、私が生まれて三週間後の集中豪雨による土砂崩れで親戚が死んだにもかかわらず、それが何なのかも分からなかった。まずそのように扱われる自分が、何者かさえも分からないまま、そしてそのことを考えるすべも分からないまま、私は生きてきた。

雅子がどうであっても知ったことではない。「かわいそうに」と言う気にも全然ならないし、逆に「かわいそう」と言う人の気持ちが分からない。どう考えたら、そんな言葉が出てくるのだろう？

…まあ、確かに踏んだり蹴ったりだ。あれだけ公然と「あんなとこには行かない！」と言って、ヒロノミヤをフリまくっていたのに、雅子の親父が天皇とミチコに脅され、自民党代議士の息子とラブラブで結婚するはずだったのに、その男がなぜか死んでしまい、八方ふさがりでヒロノミヤに屈服するしかなくなった。しかし、王家にとって一番重要な跡継ぎができなくて──皇室に入る時に頭から足の先まで調べ尽くしたにもかかわらず妊娠しない、とすれば、それはヒロノミヤの方に問題があると考えるのが自然だろう──やっと生まれた後継ぎが女だった。

雅子が病気になった…。かわいそう…？誰が イヤならさっさとやめればいいじゃないか。雅子の人権？そんなものあるものか！皇族は「神」であって、人ではないじゃないか！

ここにきて、男しか天皇になれない皇室テンパンの「改正」が議論されている。「女帝」が登場する可能性が出てきたことから、「女性解放の一歩だ」とする倒錯したのも表れている。東大だ！外務省だ！キャリアだ！と大騒ぎした雅子の登場の時にもフェミニスト（らしい）として、テレビでブイブイ言っていたタジマヨウコなんていうのも、雅子が皇室に入ることに大喜びだった。

「『女帝』の登場は女性解放」というヤツは、考え直した方がいい。皇族がどこかに行くたびに、どれだけの大騒ぎになるのか。洗濯物さえ干せないじゃないか。「女帝」ならいいのか！「女帝」の登場で、部落民の私に何かいいことがあるのだろうか。まったくくだらない話だ。私たちが言うべきことは、「女帝」も天皇もいらない！ということだけだ。