[コラム] 神戸空港/埋め立て土地売却も、乗り入れる航空会社もなくお手上げの神戸市
──讃岐田訓(神戸水環境研究所)
来年九月にも、神戸空港の工事が完成するというのに、その財源とされていた空港島用地の売却がほとんど進まず、空港建設計画の基本的前提が完全に崩れてしまっている。
「埋め立て島」の本体工事費三一四〇億円のうち、土地売却による原資として、二一〇八億円が見込まれているが、いまのところ民間企業への売却が一社もなく、返済の目途がまったく立っていない。
ここで、空港島建設事業のための財源と、返済計画を見てみよう(表@)。事業は、臨海土地造成事業、空港整備事業、港湾整備事業の三つに分けられ、財源として、起債・土地処分・国庫補助他、としている。ここで注意をしておきたいことは、土地造成事業には、国庫補助等がつかないということ、また土地処分、つまり土地造成地の売却益をあらかじめ財源に入れているのは、ほぼ確実に売却できる、と見込んだものと思われる。
これらの事業費は、すでに大半がせっせと出費されてきたのであるが、神戸市の返済計画の方は大丈夫なのか?というところが問題なのである。
神戸市の返済計画では、起債@一七四三億円は航空会社の格納庫、整備施設用地、あるいは叶_戸新交通のポートライナー用車庫などとして売却、起債A二九九億円は空港収入、起債B六六億円は港湾収入であてるとしている。
また、土地処分益六七七億円は、空港ターミナル会社が、旅客ターミナル・貨物ターミナル・駐車場などの建設用地として買い取る計画になっている。
しかし、「売れるはずがない」ということは、着工以前からわれわれは繰り返し指摘してきた。これに対し、神戸市は、「市民には税金からびた一文も負担をかけることはない」と強弁し、取らぬ狸の皮算用を主張しつづけてきたのである。しかし、この土壇場で、抜き差しならぬ事態に立ち至ったのだ。
最も当てにしていた空港ターミナル会社は、昨秋、第三セクターとして設立されたものの、当初見込まれていた出資金が集まらないため、用地購入ができず、神戸市から賃貸で借り受けるという形でスタートせざるを得なかった。
また、叶_戸新交通によるポートライナーの空港島への乗り入れが、現在の六両編成から、八両編成に増両することを前提に、空港島に約八fの車両基地を建設することが予定されていた。ところが、厳しい経営状況のため、同社は増両を断念し、車両基地の建設を見送った。
さらに、神戸空港へ乗り入れる大手航空会社などが、格納庫や整備施設などを建設することが見込まれていた。しかし、現在、スカイマークエアーラインズ社のみが、神戸─羽田路線(一日四往復程度)の就航を表明しているだけで、大手航空会社の乗り入れ計画自体がまったくないのが現実である。したがって、格納庫などは出来るわけがないし、もし乗り入れが決まったとしても、そんなものは不用なのである。それに、一日六〇往復という需要予測は完全に破綻しており、空港収入による返済はおぼつかない。また港湾収入もありそうにないので、返済の目途がまったく立たず、神戸市はお手上げ状態に陥っているのである。