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更新日:2004/06/26(土)

[コラム] 脱暴力を呼びかける第15回
作り上げられた男の「暴力性」──「男のための脱暴力グループ」 水野阿修羅

男の化粧を禁止した明治政府

「男は暴力的なものだ」という意識を持っている人は今も多い。また、「男はスケベだ」という人も多い。そしてそれを「本能」のせいにする人も多い。

「人間は本能が壊れた動物」「本能のままに行動することができなくなったため、文化が発生した」(岸田秀『母親幻想』)という考えを聞いた時、私はなるほど、と思った。

とすると、「男と暴力的なもの」というのも「文化」で、誰かが、何かの意図を持って流布させているのかもしれない。

「産経新聞」の今年の五月五日の社説に「男の子は男らしく育もう」とある。「男女の性差は、その国の歴史や伝統文化と密接に関係している」「男らしさ・女らしさを否定してしまうと、子供に対する十分な躾けができなくなる。『男の子のくせに泣くな』『女の子はもっと、しとやかに』といった躾けは、子供が将来、社会に出て恥をかかないために必要である」といっている。

しかしそれならば、明治天皇が子供のころ泣き虫で西郷隆盛が怒ったことや、二〇才まで女性と同じ化粧をしていたことは、「日本の文化」ではないのだろうか。明治天皇を「泣かない男」にし、ヒゲをはやさせて、「男らしい男」に作りかえた明治政府は、何を狙っていたのだろうか。

また、「徴兵制」という新しいシステムの中で、日本中の男を「人を殺せる兵士」に生まれ変わらせるため、数々の政策を打ち出した。男を台所から引き離し、子供から引き離し、「泣くな、弱音を吐くな」と強要していったのは、明治政府である。産経は「万葉集」を引用して「ますらおぶり」を強調しているが、この当時の男が、よく泣いたことには一切触れていない。

「男の子のくせに泣くな」という主張は、明治以降の権力者の主張なのだ。男の化粧の禁止や、長髪(チョンマゲは肩より長い髪でないと結えない)の禁止も、すべて明治からである。アイヌの男の耳輪(ピアスのことだろう)禁止令や、沖縄の男の化粧禁止令もこの時期に出されている。

度胸ある女性 愛敬ある男性

産経が主張する「男らしさの文化」は、たかだか百年ちょっとのものでしかない。それを万葉時代から続いてきたかのように言うのは、別の意図があるからだろう。

今年の春の関西学院大学のワンダーフォーゲル部の遭難に関し、「無謀な計画」「捜索費用の負担」などとする挑発的報道の中で、「産経」の一面のコラム氏は、若者がいさぎよく謝罪したこと、チャレンジ精神旺盛なことをすごく評価し、「いまどき珍しい若者」と賛美していた。

ところが、、イラク人質事件では「自己責任論」を最も強く主張し、「無謀な若者」と罵倒し、「救出費用の本人負担を」と論陣を張ったのは、産経だった。

ここから読み取れるものは、今の日本の若者に対して、「国家の利益を考えず、無気力で情けない」と嘆いているオジさんの発想だ。女性が元気でガンバッテると、よけいに腹が立つらしい。人質事件の唯一の女性・高遠さんに批判が集中したのも、そんなところだろう。だから社説で「女の子はもっとしとやかに」と言いたくなったのだろう。

「男の子は泣くな」という考えは、「男を暴力的な人間にしたい」と思う人間が常に使うスローガンでもある。

また、「男は度胸、女は愛敬」という言葉も、明治期に流行らされたものだが、私は女性に度胸のある人が好きだし、男に愛敬のある人が好きだ。人間として、両方あるのが当たり前だ、と思っている。自分を大切にできない人間が、他人を大切に出来るわけがない。自分を粗末にする人は、他人も粗末にする。(つづく)

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