[コラム] 出版界に出没するお化けたち
──有機本屋=ほんコミ社 五味正彦
出版界には、いろんな『お化け』がいる。
◎売れていることになっているのに、本屋では全く(ほとんど)見かけない本。
◎『本屋に並んでいます』と連日新聞に大きな広告を出している、いくつかの出版社の本、実際の本は見たことないよね。で、この広告の端にはたいてい『あなたの本出版相談会のお知らせ』がある。
私は、「すでに出版業界は崩壊している」と、くり返してきた。システムだけでなく出版理念や倫理もである。
この二つのお化け、出版業界の人にとってアイディア商法らしく、マネる人、出版社が絶えない。まさに倫理の崩壊だと思うが、いかがだろう。
といっても、一般読者には何のことかわからないだろうから、ちょっと説明してみる。◎ 前者のお化け――わかり易く言うと、買上げ商法、おどし商法である。昔(今でも)ブラックジャーナリズム、総会屋雑誌商法、というのがあった。「書くぞ!」と取材に行って、広告費をもらって書くのをやめたり、刷った雑誌を全部買ってもらう方法だ。
これに似たことを今では大手の出版社も雑誌や単行本でやっている。雑誌の場合は同一社の別の雑誌に大広告をもらい、本誌の内容トーンは落とす。単行本だと『全量近い買上げ』。これ直接やるとやばいので、大書店の倉庫が使われる。出版社―取次店―書店までは本はまともに動き、書店の倉庫からその本は書棚に並ぶことなく、内容と関係ある会社や宗教団体の倉庫へ行き処分される。
取次・書店はトンネル。出版社と書かれた団体がどこまでつめた話をしているかはわからないが、これはある種のマネーロンダリングであり恐喝商法だ。間に広告代理店がはいるのかもしれない(これは筆者の憶測)。
典型的な例ではないが、変型をお教えしよう。
文芸春秋から一九九七年に出版された『カルト資本主義』――京セラ・ソニー・船井幸雄や世界救世教、そしてヤマギシズムなどに共通する内情を取材した、すごく興味深い本だが、なかなか手に入らなかった。やっと入手できたのが三刷の本。結局この本何度か増刷され、しかし全く話題にならないまま消えてしまった。倉庫商法で売られ買われたからだ。
著者(たぶんこのこと知らないんでしょう。知ったら取材して書かざるを得ないでしょう。私この本で知った人だが、今日では「共謀罪に反対する市民の集い 6・ 」のメイン講師をする、硬骨のジャーナリスト、齋藤貴男さんだ。
二匹目のお化けの話は又、いずれ。