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更新日:2004/06/20(日)

[社会] アフター9.11世代座談会/根本は「世界」ではなく「自分のスタイル」をどう変えるか

座談会参加者

  1. 清水ミカ(30歳・仮名):フリーター
  2. 増岡博美(24歳・仮名):団体職員
  3. 多田 聡(28歳・仮名):会社員
  4. 藤井祐子(23歳・仮名):大学生

アメリカで起きた同時多発テロ事件。そしてその後に続くアフガニスタン戦争・イラク戦争。アメリカのブッシュ大統領は、「正義と自由」を大義名分に、一方的な戦争を始めた。そして、その9.11以降、初めて平和活動に参加した、という若者も少なくない。関西に住む、アフター9.11世代の若者たち4人に、その思いを語ってもらった。(編集部)

「人数が多ければいい」わけじゃない

編:イラク開戦から一年経った、今年三月二〇日。大阪では、二つの反戦アクションが企画され、一緒にやった方がいいのでは?との意見にもかかわらず結局分裂集会になりましたが‥‥

藤井:東京では、ワールド・ピース・ナウ(WPN)の呼びかけなどで、開戦前に様々な平和グループが一緒になった、という経験があり、「どうやって一緒にやるか」を話し合う場がすでにある。けれど、大阪はみんながつながれないままにきてる。 清水:結局、そういうことを「一緒にやろう」と呼びかける人がいない。いないんだから、一緒にやれなくて当たり前。今回は「一緒にやろう」という呼びかけが一方からあったけれど、一方でそれを蹴った、という話もある。けれど今回、「繋がることがそんなにいいことなのか?」ということを私は考えたし、結果として「繋がらなくてもいいんじゃないかな」というふうにも思った。

多田:平和活動の「絶対数」が多ければ、つながる必要もないよね。絶対数が少ないところで、いくら東京に集まっっても、世の中を動かすような規模にはなっていない。イギリスなら一〇〇万人、とかになっていたけど。

清水:人数や規模って関係ないんじゃないかな。何人集まろうが、報道されなければ意味がないと思う。四万人集まったって「人数」でテレビに映るわけではないのだから、結局人数を集める、ということに奔走するのは無駄な気もする。それと、本当に人を集めたいなら、組織などに頼るのではなくて、自分達の力で集めないと意味がない。更に、どこの人も参加できて、楽しくやれるようなモノでないと。「人を集める」前に、そういうまともな運動の作り方、というのを目指してもいいんじゃないかな。

ちゃんとした情報あればデモ参加する

増岡:実際に活動はやっていないけれども、「楽しそうなら行く」という平和予備軍的な人たちは本当にたくさんいる。それが例えば、「シュプレヒコール 」とか、「〜〜党!」とかになると、一般の人が参加しづらくて、結局一部の人や、一部の政党のためのものになっている。だって、別に「〜〜党」とか、「〜〜組合」の旗の下を歩こうとは思わない。少なくとも、私は三月二〇日のデモは参加しにくかったし、友達を連れて行こう、という気にはならなかった。

清水:ぶっちゃけて言うと、ああいう集会に行ってもすごく嘘くさい。「ホンマに平和を作ろうと思っているの?」という気になる。

増岡:別にそう言う人たちでも、「平和を作ろう」と思っている人はたくさんいると思うよ。実際に活動をしている人もたくさんいる。ただ、若い人を増やそうとか、絶対数を集めようと思うなら、もう一工夫は必要かな。

清水:結局のところ、数じゃないよ。イラク戦争反対にしても、開戦前には自然と人が増えるもので、重要なのは「ちゃんとした情報」があれば、少なくとも一回行ってみようかな、という気にはなる。だからどちらかというと、旗が悪い、とかシュプレヒコールが悪いのではなくて、「情報が悪いんだ」と私は思う。それに、自分が参加しにくいなら、自分が参加できるものを作っていくことも必要。

『楽しいデモ』への批判「どうして?」

編:最近の若い人たちがやっているデモについて、「楽しさ」が優先されていて本質的でないという批判も一部上がっているけれど・・・。

増岡:私の場合は逆に、初めてデモに参加したのが海外だったから、「うわっ!デモってめっちゃオモロイ 」と思って日本に帰ってきた。そしたら、もう幻滅。日本のデモに参加して、「なんやこれ」みたいな。(笑)私の中では、デモといえば人生の中でドキドキする瞬間ベスト三の中の一つだったのに…。社会状況も政治状況も違うにしても、日本でああいうやり方をしていれば、どれだけの人が集まるだろう?と疑問に思う。

多田:でも、逆に日本であそこまでやっても、土壌がなければ来ないんじゃないかな。いきなりあの形を持ってきても、参加する志や意識がなければ、形だけ見繕ってもなぁ。

増岡:私は日本で平和活動には全然参加していなくて、「あそこで歩くこと」がとても楽しそうだから行った。そしてそれがきっかけで、色んな活動を始めたから、デモが一つの集まる場、きっかけの場として、日本にもあればなぁとは思う。

清水:ほら、ワールドカップの時って、普段はサッカーファンでもないくせに、そんな時だけファン、みたいな人が沢山出てきたやん?みんなが騒いでるから、そこにいると楽しい、みたいな(笑)ああいうようなノリのものを作っていく、ということも必要なのかな。

批判」よりも怖い「無関心」

藤井:若者たちのデモに対して、批判的な意見もあるみたいだけど、ぶっちゃけ何とも思ってないというか、そういうことを「話し合う場」があれば、批判されること自体は全然問題じゃない。「それ、おかしいやん」と言われれば、「なんで?」と聞くことができるし、話し合う場があれば「どう思う?」と聞くこともできる。

清水:確かに同年代の人たちからも、「人が殺されたり苦しんでいる時に、楽しんでてええんかい」と言われることがあった。でも、それって要は「表現する」ということに慣れていないだけなんちゃうかな。「色々な表現の仕方があってもいい」という土壌がないから批判になる。最初、ぎょっとすることには、みんなひくやん(笑)

多田:確かに、「批判される」ことよりも、「無関心である」ことのほうが怖い。批判から議論が生まれたり、「じゃぁどうしていく?」という話ができるのであれば、意味はあるね。

清水:命賭けで活動している人から見たら、若者がチャラチャラやってるのなんて気にくわないと思うよ。実際、友達に誘われただけのチャラチャラした人も来るわけだし。(笑)でも、私はそれでいいと思う。一日の内五分だけでも平和について考えることができるなら、それはありだと思う。確かに、平和活動をずっと続けてきた人から見れば、若い人なんかちょっと来てすぐにやめちゃう、とか、飽き性みたいに見えるだろうし。それはわかる。

多田:十個の方法があれば十通りの人間に訴えられるわけだし、色々な表現があることは悪いことじゃない。

日本人救出のための自衛隊撤退??

編:イラク人質事件、その後の日本政府の対応について。

清水:人質が捕まった瞬間に「彼らを守るため」と、多くの人が街に出て署名を集めたりしたけれど、そもそもイラクでは多くの人が死んでる。三人を救うためではなく、そもそも自衛隊は撤退なんだ、という意味で色々な葛藤があった。

増岡:NGO関係のメーリングリストでも、「三人を救うために」みたいなものがたくさん流れていて、三人の無事を望んではいたけれど、日本人救出のための自衛隊撤退ではないと強く感じた。

藤井:この前行ったイベントで、「高遠さんが叩かれているのは、ジェンダー的な壁がある」というのを聞いた。例えば、解放された直後に「煙草が吸いたい」とか、飴をなめている映像ばかりが繰り返し流され、「何よ、あの人!煙草吸ったり腹減ったとか言って!」みたいな。でも、男の人が解放されてホッとして、そこで煙草を吸ったとしても認められると思う。そういう所にも、隠れたジェンダーがあるのかぁ?というのは思った。

一同:それは絶対あるね。

増岡:確かに年輩の人とかは、「あんな所に女性一人で行かせて、親は何をやっているんだ」とか言ってた。それだけで「誹謗・中傷の対象」にできちゃったりするところを見て、正直すごく怖かった。

藤井:郡山さんなんかは、一応ジャーナリストで責任ある大人、みたいに書いてるところもあったけど、特に「女性と子ども」みたいな部分を悪くかき立てるメディアが多かった。そんな意図はないにしても、そう思わせる内容だった。

清水:今回の事件を通じて、これからは国家と国家が戦争をする際に、そこに暮らす「市民と市民」が繋がらないといけない、と強く思った。国の機関同士がいくら話し合いをしても、所詮私たちに「命令する立場」の人が話をするだけ。いつまでたっても、利害だ国益だと仲良くなることはできない。だからこそ、市民が「そこに行かなければ」ならない。国が密室にしようとすればするほど、疑う姿勢を忘れちゃいけない。

若い世代に広がる靖国肯定派

編:最近の、日本の右傾化について。

増岡:靖国参拝についての世論調査で、四〇代・五〇代は参拝に否定的で、二〇代・六〇代が肯定的である、というのがあった。あれってすごく怖くない?

清水:でもあれは、「靖国に参拝することに肯定的」なのではなくて、「靖国参拝をバッシングしていることに否定的」なんじゃないのかな。別に靖国が何なのか?がわかっていないだけのような気がする。

増岡:私の大学の時のゼミは、戦後補償や南京大虐殺のことをテーマによく話をしていたけれど、ゼミにいる二〇人中一〇人くらいはきちんと勉強した上で「小林よしのり派」みたいな人だった。靖国が一体どういう場所で、何を意味しているのかを知った上で、靖国に行くべきだという人が多くて、怖い思いをした(笑)

多田:確かに、「日本が経済大国としての幸せを享受し続けるためには、軍隊は絶対に必要で、戦略として中国には強気な外交をしないといけない」、という同年代の友達がいる。僕らなんかよりも、どっぷり経済に浸かって、僕らの年代で経済のことばかり考えている人が、特にそういうことを言う。「この国は、なんせ経済で成り立っているんだから」、と。現実に、平和活動してる僕らって「理想主義」みたいなとこあるじゃん。

一同:確かに。あるある(笑)

多田:「お前は甘すぎる。現実を知らない」とか「一体どういう風にお金というのは回っていて、アメリカがいるお陰で、一体どれだけ日本が利益を得ていると思ってるんだ」とか言われる。

清水:でも、「気付かない人」にとっては、それってごく普通の意見なんじゃないの?と思う。みんな、「世界には飢餓がある」ということは知ってる。でも、「なんでそうなっているのか?」を知っている人は少ない。よもや、自分が「現実的な思想」に基づいて生きているだけで、そういった飢餓のある世界を作っている、とは、私も昔は知らなかった。そういうことを知らない人たちが、そういう意見を持つのは普通に聞こえる。

増岡:私のゼミの人たちでも、この世界について「議論したい人」というのがたくさんいた。ただ、自分の中に「議論する思想」がない。それで小林よしのりなんかを読んで、「日本人たる誇りが持てた」とか言うわけ。そういった「議論できる思想」なんかを求めている人に、小林よしのりなんかの思想は「すーっ」と入ってくるのだと思う。

多田:日本は宗教を信仰しない分、「自分が誇れる何か」を探している若者は多いと思う。何かに頼りたい、という気持ちもある。前に、「今は父親がいない時代」だから、国や、石原慎太郎みたいな「強いもの」に頼ろうとする、というのを読んだことがある。そうすると、軍国や石原都知事みたいなのに、人気が出てくるわけ。

家庭の中から身近なピースを作る

清水:過去の活動は、全然生活レベルに落ちていない。自分の家族や、従兄弟とかに語りかけることが重要。そこから、本当の平和が作られる。でも、それが一番難しかったりするけど。(笑)

藤井:何よりも、まず「知る」ことが大事だと思う。肉の問題にしても、牛を育てる分の穀物だけで、世界の飢餓がなくなると知れば、五回に一回は肉をやめよう、とか思う。自分と世界が関わっていることを知ることが重要。

清水:そうそう、自分とあらゆる問題や世界がつながってる。「肉が食べたい!」という欲求のために、人を殺している事実がある。それを知れば、人は変わる。何も、「外に出ること」だけが平和を作るのではなく、「家庭の中から平和を作る」ことができる。自分の身の回りの問題が、平和を作る。要は、大企業が金儲けするために、色々やってるだけなんだから。

増岡:「身近なピース」って感じだよね。根本は、「世界」ではなく「自分のスタイル」を、どう変えるかってところだから。身近な人とか、今飲んでいるコーヒーが、とかいう身近なレベルに物事が落ちていけば、全部が「遠い国の話」ではなくなる。やっぱり全部の問題は、つながっているからね。

座談会を終えて

「自分の生活」を変えることで、「世界」を変える。そんな想いが、各々の口から出た。また、政府や官僚ではなく、「親や友人」などの身近な人に訴えるのが本当の平和活動につながると言う。(編)自身も、「私は私の生活を守りたい。世界のことよりも、私の生活の方が大事」と言い切る母親に、この二年間「アメリカの戦争は虐殺・侵略」という事を言い続けてきた。すると母はつい最近になってからだが、自分の方から「戦争って虐殺なんやね」と話を切りだしてきた。目の前にいる、一人の人間を納得させることもできずに、世界は変えられないと思っていた私には嬉しい瞬間だった。

自分たちの生活がいかに世界と関わっているのか。それを知り、そしてすぐに街に出るのではなく、目の前にいる人々とどう対話していくのか。そういった姿勢が、これからの活動に求められている

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