更新日:2004/06/07(月)
[情報] 映画評/『泥ウソとテント村──東大・山形大廃寮反対闘争記──』
圧倒的なリアリティで迫る若者たちの闘いの記録
この映画は、学生寮が解体されている現在の状況下の中で、学寮闘争を最後まで戦い抜いた東大と山形大が舞台となっている。
映画が始まってすぐの、東大・明寮取り壊しのシーンで、建物にいる学生ごと取り壊して、叩きつけるシーンは見る者に強い衝撃を与える。
全編を通じて大学当局の弾圧、そして強制執行シーンは続く。生活基盤を奪われる危険にさらされた学生たちの悲痛な叫びが胸を打つ。
中でも作中最大の弾圧事件は、山形大で起きた学生四人の不当な逮捕であった。大学側が清掃員を使い、学生たちのノートや活動記録などを盗ませていたのが、学生たちの防犯カメラにより発覚。清掃員もそれを認めたため、大学側に訴えたところ、大学当局は、「学生が清掃員を監禁した」と嘘の告発をした。
その結果、山形大の丸一寮委員長をはじめとする四名が逮捕された。その後、彼らの疑いは晴れ、釈放されたが、拘束中の弾圧は凄まじく、その内容は丸一氏の獄中日記「丸一ノート」に詳しい。
こうした司法と権力が一体となった攻撃により、東大・山形大の学寮は打ち壊されてしまうのだが、彼らの真摯な姿勢と言葉には、未来への希望があった。
この作品は、事実起こった事のみを抽出したドキュメンタリーである。一般の映画に比べて画質や音質は劣るが、だからこそ「リアリティー」を表現することに成功している。
日本の「民主主義」の闇が、この作品には描かれている。「真実」を追求する全ての人に推薦できる秀作だ。(評者/田中大也)
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