[政治] 年金未納スキャンダルのウラで有事関連7法案衆院通過!
米軍協力法・国民統制法としての有事関連法案
年金未納問題で世の中がバタバタしている裏で、自民党憲法調査会の憲法改正プロジェクトチームは一三日、「自衛、国際協力のための戦力の保持」を党の改正案に明記する方針を固めた。さらに国民統制法・米軍協力法ともいえる有事関連七法案が、二〇日にもコッソリと衆議院通過する可能性が高まっている。あらためて、法案の内容を整理してみる。
まず有事関連七法案を概略すると、
@外国軍用品等海上輸送規制法案―「敵国」に武器などを輸送している疑いがある船を、立ち入り検査し、「合理的に必要な限度」で、武器の使用を可能にする。
A米軍行動円滑化法案―アメリカの軍隊の行動を円滑化するために、自衛隊がアメリカの軍隊に物品や役務を提供する。首相はアメリカの軍隊に提供するために、日本の土地や家屋を使用する。
B自衛隊法改正案―自衛隊が、アメリカ軍に武器・弾薬・医療品や役務を提供する際の手続き規定。
C特定公共施設利用法案法案―自衛隊やアメリカ軍などが港や空港などを優先利用できるよう首相が管理者に要請・指示できる(「交通・通信利用法案」とも呼称)。
D国際人道法違反処罰法案―ジュネーブ条約違反の行為のうち、刑法に定めのない重要文化財破壊罪や捕虜送還遅延罪などを規定。
E捕虜等取り扱い法案―
「捕虜」の拘束、「捕虜収容所」建設手続き規定。
F国民保護法案―名前こそ「国民保護法案」だが、むしろ「国民統制」法と言った方が実態を反映している
首相・自衛隊による国民統制
まず押さえておかなければならないのは、有事法制が「有事」に、国や国民がどうするかを規定する法律といわれているが、法案が通ったその日から「戦争中」を想定した日常生活作りが始まるという点だ。役所やテレビ局、病院などは「戦時」のための計画を作り、総理大臣と相談しながら「戦時」にむけて組織を整えなければならならない。地域ボランティアも協力を要請され、道路を通行禁止にして、住民が参加する避難訓練も行われる。こうして社会のすみずみに戦争を前提とした統制がいきわたる「平時」が現出する。
生田幸広全日本鉄道労組鳥取県協議会長は、「戦争に駆り出されるのは労働者。国会議員や役人は戦地に行かないから、こんな法案を通そうとしている」と、皮肉を込めて反対意見を述べている。
非現実的で曖昧な避難・保護
この法案で国民を保護する手だての中心は「避難」なのだが、鳥取県の試算では、三つの村の住民二万六千人がバスで隣りの県に避難するのに一一日かかり、鳥取市民一二万人を避難させることは「検討の余地を超えている」と結論した。
避難のための幹線道路を自衛隊や米軍が優先的に使うことを考えると、避難はさらにむずかしい。このように、「国民保護」の具体的中身は非現実的で曖昧である。
原子力施設が攻撃された場合は、特に現実味がない。危険が迫った時に慌てて操業停止をしても、攻撃を受ければ、広範囲にわたって破局的な被害が出る。原発攻撃への対処策はなく、事実上周辺住民は見捨てられているのである。
本土攻撃を想定せず
どこかの国が大規模な上陸作戦を展開することが一ヶ月以上前にわかっているならば、民族移動のような避難が意味を持つかもしれない。しかし、そのような大規模な上陸作戦による侵略行為が可能な国は、米国のみである。
米国以外の国からミサイルや航空機による攻撃を想定した場合、大規模な避難をする時間も避難先もない。にもかかわらず、シェルターを作るという対処法はでてこない。
この法案は、本土に武力攻撃をしかけられることを実は想定していないのである。
それならば、この法案はどういう時のためにつくられているのだろうか?
この法案では、攻撃された時の「国民保護策」にはリアリティがないのに、物資の収用や物資流通の統制にはずいぶん力を入れている。つまり、アメリカの戦争のために物も人も協力できる国作りを目指しているのである。
有事関連七法案は、国民保護ではなく米軍協力という目的に添って見た時に初めて整合性を持つ。つまり有事関連七法案は、@有事を創りだし、有事に向けて国民を組織する「国民統制法」であり、A国民保護を謳った「米軍協力法」なのである。
米軍と自衛隊は我々を守らない
有事法制推進勢力の最も大きなまやかしは、「自衛隊と米軍が我々の生命・財産を保護するために存在し、行動する」という前提である。先の日本人人質事件の際、小泉首相は、まず「自衛隊は撤退させない」と宣言した。その後も人質救出に努力するどころか、人質の生命を危険に追い込む言動を繰り返した。
さらに解放後も小泉政権は、「自己責任論」を展開・煽動し、政府の国民保護責任の放棄をぬけぬけと言い放ったばかりなのである。
彼らのいう「国民」とは、定職に就き、一定以上の収入と財産を持ち、国家の方針に忠実なる人々であって、こうした要件を満たさない我々有象無象は、「国民」のなかに入っていない。保護の対象ではなく、場合によっては「敵性」非国民とされて、抑圧されるのがオチなのである。こうした観点から、国民保護法制は、「国民統制法」という表現も生ぬるく、「有象無象抑圧法」でしかないので、白紙撤回を迫る以外にない。
(参考:「国民保護法案ウォッチャーズ」)