人民新聞オンライン

タイトル 人民新聞ロゴ 最新版 1部150円 購読料半年間3,000円 郵便振替口座 00950-4-88555┃購読申込・問合せはこちらまで┃人民新聞社┃TEL (06) 6572-9440 FAX (06) 6572-9441┃Mailto:people@jimmin.com
反貧困社会編集一言政治海外情報投書コラムサイトについてリンク過去記事
更新日:2004/05/31(月)

[コラム] 渡辺雄三自伝第12回

炭坑ゆえの条件下で盛んだった職場闘争

六月の定期大会を前にして、松橋書記長から「大会報告書に炭鉱合理化批判の草稿を書いてくれ」と頼まれました。文章を提出したところ、報告書に殆ど無修正のまま掲載されて、驚きました。

釧路の市街地から離れた炭鉱には、社宅が広がっており、労組の組織も職場だけでなく、社宅にも町内会として存在していました。ストに入ると町内会毎の集会や、隣組単位の小集会が開かれ、執行委員が手分けして参加していましたが、私もそこへよく連れていかれました。

即席で何を聞かれるか分からないので心配でしたが、出て見るとザックバランで、彼らと気軽に議論でき、私には大変勉強になりました。

当時、炭鉱労働運動というと、職場闘争で有名でしたが、これは炭鉱特有の労働条件によるもので、他の産業への波及には壁がありました。

一例を挙げると、地下深く存在する空洞の坑内は周辺から大変な地圧を受けており、この地圧を受けて、自然条件が時と共に千変万化します。

例えば、太平洋炭鉱では炭層と岩盤との間に、二〇〜三〇aの粘土層がありました。粘土は、周辺の水を吸収すると、見る見るうちに膨張し、坑道を塞いでしまいます。坑道が塞がれれば、人は逃げ出せなくなるし、空気も入らなくなります。大急ぎで膨れ上がる粘土層を取り除かなければなりません。

この緊急作業に対して、労働者側は職制に対して、特別な報酬を要求します。これが、職場闘争の一例です。

それゆえ、職場闘争は頻発し、労組事務所内は、「一番方」の鉱員が上がってくると、彼らの執行委員とのやり取りで、いつも騒然としていました。

六二年春闘で劣悪な労働条件の組夫現場を調査

私は「調査部」へ配属になりました。調査部長はTという、私よりも若い採炭夫でした。当時、彼が取り組んでいたのは、職種給の是正でした。

請負給から時間給へ移行したものの、急速な機械化・合理化で、採炭の直接部門と機械を扱う間接部門との境界が曖昧になり、間接部門の直接部門化が進んでいました。

それで、各職種の熟練度・危険度・難易度などを数値で評価し、それに基づいて既存の職種間格差を是正しよう、というものでした。

太平洋炭鉱の賃金形態は、全国に先駆けて請負給から時間給へ移行しましたが、請負給者の直接夫(採炭・掘進・仕繰という直接採炭作業に従事する職種)は、時間給に変わったとはいうものの、依然として直接夫優位の状況が残り、間接夫への不満がありました。

実現には、さまざまな紆余曲折がありましたが、組合側の主張には、会社側も一概に否定できない正当性があり、翌六一年の春闘で、ある程度要求が通りました。

彼が六二年春闘で取り上げた課題は、「組夫制度」でした。太平洋炭鉱で組夫を常時使っていたのは、最も危険が伴う、新規の採掘現場を作る仕事でした。

これは地層など自然条件が未知な領域なので、危険が多く、事故の発生率も高かったし、常時その仕事があるわけではないので、会社は本工を避け、組夫を使っていました。しかし、これを放置しておくと、本工の職場が低賃金・劣悪な労働条件下にある組夫に侵食される恐れがあり、会社との間で一線を引いておく必要がありました。

それで、調査部長と組夫現場の調査に入りました。本工と比べて、彼らの労働条件の劣悪さには驚きました。

休憩一時間の八時間労働とは、坑口から坑口までのことで、坑口から人車に乗って、下まで降り、そこからそれぞれの現場まで歩く時間は拘束時間の内でした。それで、本工の場合、一斉休憩が一時間あるので、実労働時間は五〜六時間でした。

本工の休憩所はビニールで密閉され、炭塵など埃が入らないようにしてあり、そこで食事を取り、一時間休憩していました。また、この時間は組合活動の時間でもあり、幹事会報告や職場の様ざまな問題が話し合われる場でもありました。

ところが、組夫現場に行ってみると、余りの違いに驚きました。昼飯の時間だというので、何処で飯を食うのかと思っていたら、発破を掛けた坑道にある炭車の横でした。粉塵が舞い上がる所なので、口の中がジャリジャリする中で食事をしていました。

また、特定の便所がないので、彼らは坑道の中で用を足しており、その横で食事を取っていたのです。(つづく)

続きは本紙 【月3回発行】 にて。購読方法はこちらです。
[HOME]>[コラム]


人民新聞社 本社 〒552-0023 大阪市港区港晴3-3-18 2F
TEL (06) 6572-9440 FAX (06) 6572-9441 Mailto:people@jimmin.com
Copyright Jimmin Shimbun. All Rights Reserved.