[海外] イラク/「野心同盟」への反「ナクバ厄災」の闘いを!
──映画監督・足立正生
反テロ戦争」の正体
今イラクで起こっていることは、米国主導で行ってきた九・一一以降の「反テロ戦争」同盟の目的が何か?を再確認させた。それは、アフガニスタン攻撃と同じであり、今日のイラクに止まらず、明日は世界のどこにでも資源と市場の占有を求めて、その地で生きる人々の社会と生活を破壊し、占領していくという野心同盟の実態である。
このアフガニスタンやイラクで行われている米英主導の野心同盟の蛮行は、国や社会生活の破壊に止まらず、生きていく人間としての存在条件を否定するものでしかない。それは、この五〇年間パレスチナで繰り返されてきたことと同質・同レベルのものであり、これを拡大し続ける方向にある。
破壊と虐殺というパレスチナ人に降りかかり続けた「ナクバ(厄災)」が、今やアフガニスタンやイラクにまで拡大したと言えるし、それは、「反テロ戦争」の名で更に拡大されるだろう。
ブッシュが「大規模戦闘終結宣言」を発してから一年が経つが、今やイラク全土で占領軍と反占領を謳う武装との戦闘は拡大しつつあり、イラクへの占領戦争は長期化、激化し、決して終結に向かう情勢にはない。米英占領軍と暫定占領当局、そして米軍が頭数だけ揃えたイラク人の行政評議会は、平和の再現や国家機構の再建には全く着手できないでおり、国際世論も、米英両国が「ヴェトナム戦争の泥沼化」に突入しようとしていると、強盗同盟が破産に突入することを危惧する声すらあがり始めた。
イラク攻撃の理由であった核兵器開発や大量破壊兵器配備の事実が否定され、逆にイラクの占領そのものを目標にしていた「野心」だけが浮き彫りになっているからである。
占領軍VSレジスタンス
米英占領軍が、イラクの人々を刑務所内で虐待し続けていた実態の一部が、内部告発で暴露報道され始めた。国際的には、新たに人道上の大問題として「許せない」「信じられない」と抗議の嵐を巻き起こしている。
しかし、イラクの人々にとっては、許せない・信じられないと発信するレベルの問題ではない。空爆と砲撃で破壊され尽くした国土とそこで失われつつある生活を維持するために、生命と尊厳をかけて止めなければならない「厄災」である。
刑務所内の虐待は、米英軍が全土制圧を行い始めた頃から「サッダムの行方」と「大量破壊兵器の行方」を捜索するという口実で行われていた。無差別に数万人もの市民を路上や自宅から捕縛し連れ去り、虐待拷問が繰り返されてきた。一年前から釈放された人々が、「サッダム以上の米軍の悪虐非道さ」を訴え、虐殺されて投棄された者の遺体を探し求めて抗議していたにも関わらず、駐留米軍司令部とブレマー占領当局は、「そんな事実はない」と否定し続けてきたのである。この問題に関連して、アムネスティ・インターナショナルや国際赤十字は「昨年以来抗議し続けていた事柄が、ようやく明らかにされた」と声明し、国連人権委員会も実態調査の開始を宣言した。
ファルージャ=ジェニン
イラクの町ファルージャでは、米国の軍事会社が派遣した傭兵が虐殺されたことへの報復として、地域全体を包囲し、武装勢力の掃討を口実に住民の虐殺を続けた。殺戮されたものは七〇〇人を超え、負傷者は二〇〇〇人を超えた。医薬品と食料の搬入も許さず、モスクを空爆した。
ファルージャで行われたことは、パレスチナのジェニンで行われた住民皆殺しと同類の犯罪である。パレスチナでは、ここ三年間で一万人以上が殺害され、二万人以上が逮捕投獄されて拷問されている。今年に入ってイスラエルは遂に、占領に抵抗する者の精神的指導者すらミサイルで暗殺し始めた。
そして今、イラクの人々に全く同じ「厄災」をもたらしている米英首脳は、自分たちの犯罪を正当化するために、パレスチナ住民虐殺と破壊を支持すると表明した。つまり、米英首脳とイスラエルの占領者は、パレスチナ・アフガン・イラクへ「厄災」を浴びせていることを「反テロ戦争」の名の下に合理化し、軍事力で抑圧し尽くす同盟軍であることを宣言したのである。日本の自衛隊は、後方支援とはいえ、この「厄災」の一部として行動している。
イラクのパレスチナ化によって、アラブ全土が反米英・反イスラエルという反「厄災」の闘いとして、野心同盟に向かって開始される段階にきている。この野心同盟の蛮行を放置すれば、より膨大な人々の上に厄災が拡大して降り注ぐことになるからである。
私たちは、反「厄災」を闘う人々と共に、一歩でも前に出て、自衛隊の早期撤退を呼びかけ続け、新たな厄災をもたらす行為を止めさせなければならない。