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更新日:2004/05/02(日)

[コラム] 渡辺雄三自伝第九回

五五年、木曽開田村で農村調査、独特の封建的地主性が残存

五四年、「寮に警察が捜査が入る」との事前情報を入手しながら、何の対策も取らなかったミスで、私は細胞キャップを辞任しました。

五五年夏、党本部で学生対策部の会議が召集され、出席したところ、木曽の御嶽山の麓の開田村での農村調査でした。ここは、長野県で一番山奥の村で、東大社会科学研究所の若手研究者も参加しており、メンバーも充実していました。

私は、「これは五二年綱領の半封建説を正当化するための調査ではないか」と思いましたが、日本農村社会の暗黒部を見せられ、強烈な印象を受けました。開田村は「馬小作」といって、地主から親馬を借り、子馬を育てて返すという、農地解放後も独特の封建的地主制が残存していた村でした。

農家の聞き取り調査のため個別訪問を始めたところ、何処の家にも、入り口の座敷の奥に鉄格子の入った座敷牢があり、そこに障害者が閉じ込められていました。これを村民は訪問者に隠す風もなく、私達と対面したのには、こちらの方が驚きました。

農村の婚姻関係は、全て地主は地主、百姓は百姓、小作人は小作人と、階層別の関係で成立しており、それぞれの階層を縦断する縦の関係は、戦前御法度でした。だが、村役人筋や地主となると、村の範囲を越えて広い血縁関係の成立が可能ですが、特に小作人となると、婚姻関係が自ずと狭くなります。

それで、親戚同士の結婚を繰り返している間に、障害者が生まれるようになりました。この農村社会の階層性が、木曽の山奥の集落ゆえに、このような悲惨な障害者差別を生み、開田村に残存していた、と私は考えています。

党の路線転換とともに非合法 時代のマイナス面が噴出

後でHと一緒に仕事をするようになって、色々話しているうちに、彼は私の同級生の家に下宿していたのではないかと思い、聞いて見たところ、「そうだ」との答えが返ってきました。私の同級生Nは仏文科の女性で、兄が私より二年上で党員でした。

当時、各細胞には「テク」という党機関の非合法活動を支援している特殊な部門があり、彼らは学内の活動を一切免除され、上級機関に所属していました。彼らの了承を得なければ、例え細胞員の家であろうとも、細胞会議に使うことができませんでした。

テクに「Nの家を会議に使わせてくれ」と打診したところ、「ノー」の返事が返ってきたことを思い出したのです。思い返して見ると、私たちは狭い枠の中で暮らしていました。

朝鮮戦争が終わり、党の路線転換とともに、非合法時代のマイナスの面が一斉に噴出し、その対応に追われるようになりました。

私達の細胞からも、「山村工作隊」の同志を何人か送り出しましたが、六全協後、彼らが帰ってきました。その内の一人の廃人同然の姿を見て、私は自らの罪の深さに慄きました。

五四年初め頃から、コミンフォルムの機関紙が迷走を始めました。平和共存と民族自決(内政不干渉)といずれを優先すべきか、相反する二つの主張が同時に載り、紙面から目的意識性が喪失し始めました。

これは、今から考えれば「中ソ論争」の始まりでしたが、私達のレベルでは当時知る由もなく、何が何だか分からない状況になりました。(つづく)

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