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更新日:2004/05/02(日)

[政治] 地方分権/「骨太」ならぬ「骨抜き」方針
──兵庫県会議員 いなむら和美

骨太方針の実態

「地方分権」に賛成か反対か?こう問われれば、多くの人が「賛成」と答えるでしょう。でもちょっと待って下さい。現在「地方分権」の美名の下に進められようとしている「三位一体改革」の中身を知ったら、逆に多くの人が憤りを感じるに違いありません。

「三位一体改革」とは、@国庫補助負担金の削減を財源にして、A国から地方への税源移譲を行い、B地方交付税を縮小させるというものです。国からの依存財源を縮小し、地方自治体の自主性と自立性を高めるものとして期待されましたが、果たしてその実態が、いわゆる「骨太の方針二〇〇三」以降、明らかになってきました。

「国庫補助金の廃止」とは、国が地方に対するコントロールを手放すことです。既存ストックの改築より、新築に補助金が出る、不必要に広い道路や大型のゴミ焼却炉を作らないと補助金が出ない──という現場の事情を無視した補助金制度を見直し、税源を移譲して、地方の判断で事業を選択できるようにするのが、本来期待されていた方向でした。

支出圧縮を一方的に地方に迫る「税源移譲」なるもの

ところが!実際に一般財源化されたのは、まず義務教育国庫補助負担金。共済長期と公務災害の負担金や退職手当・児童手当の負担金です。続いて、公立保育所の運営費、介護保険事務費交付金、軽費老人ホーム事務費補助金、在宅福祉事業費補助金など。

要するに地方に渡されたのは、退職金などこれから支出がかさむ一方の事業や、市民サービスに密着していて、事業費を削る余地がほとんどないものなのです。

また、削られた国庫補助金分の財源は当然、地方に移譲される必要がありますが、二〇〇四年度は、結局具体的な税源移譲案がまとまらず、暫定的に「所得譲与税」などの形で、所得税の一部を地方にまわすことになりました。

これがまた問題で、例えば公立保育園の運営費。これまでは実際にかかっている費用の一定割合が補助金として手当てされていたのに、「所得譲与税」は人口割で金額が決まることになりました。私立の保育所は、業界団体の運動によって対象外となったため、公立保育に力を入れていた自治体や、そもそも保育園の数が多い自治体ほど、予算編成にあたって大打撃を受けることになりました。

ただでさえ、「地方財政計画」で地方交付税の総額が縮小されている上に、算定方法次第で金額が調整されてしまうという状態のなかで、「三位一体改革」は、市民サービスを手厚く実施していた地方自治体の予算編成に深刻な危機をもたらしています。無駄を生み出している投資的事業の補助金ではなく、市民サービスに影響が大きい事業を地方に手渡し、しかも財源は目減りさせて、支出の圧縮努力を地方に一方的に迫っているというのが、今の「三位一体改革」の実態です。

議員年金見直しは後回しで国民年金削減を議論する議員

国が税収の二倍の予算を組んでいる、つまり家計の半分を借金で賄っている現状からすれば、地方でも財政圧縮が迫られるのは当然でしょう。しかし、市民生活にとって、削れない事業ばかりが対象では話になりません。市民サービスよりも先に、見直しが迫られている投資的事業の補助金から廃止させてこその財政健全化です。当初の「三位一体改革」の目的は、完全に骨抜きにされています。

補助金を手放したがらない一方で、地方交付税総額を平気で縮小する官僚、議員年金の見直しは後回しにして国民の年金削減を平気で議論する議員…。市民が地方を突き上げ、地方が国を突き上げなければ、「地方分権」の後に待っているのは、一方的な福祉削減ということになりかねません。市民の視点が欠落した「三位一体改革」を許せば、そのツケは確実に市民にまわってくる、ということを是非知っていただきたいと思います。

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