[政治] 有事立法警察版=警察法一部改正案が施行
警察も海外(イラク)進出、情報収集活動で、自衛隊を側面支援
「警察が海外で情報収集等の活動を展開する体制を作り、自衛隊の外国における活動をバックアップするための組織整備」―こんなトンでもない法律が、何の議論もないまま両院を通過し、三月三一日より施行された。
今回の警察法改正は、「有事」において警察の役割を拡大しようとする「有事警察法」に他ならない。具体的には、「警察庁の任務」の中に「国外において日本国民の生命・身体および財産並びに日本国の重大な利益を害し、または害するおそれのある事案」に対処することが追加された。つまり、警察の海外進出を可能としたのだ。
「警察の海外進出」の代表例が、警備局に新設される情報機関である「外事情報部」。長官官房国際部を改組し、ここに「国際テロ対策課」がおかれ、さらにその中に「国際テロ特別機動展開部隊」までもが新設された。
つまり、「国際テロ対策」という大義名分のもと、海外での情報収集を可能とするばかりか、対テロ実働部隊まで新設というのだから、自衛隊との一体化と併せて、警察権力の大幅強化が画期的に進むことは間違いない。
イラク派遣を想定
この改正法案の付則には、「この法律は、公布の日から施行する」と書かれている。つまり、衆議院で何の議論もなく通過したこの法案は、参議院内閣委員会→本会議という手続きも終わり、三月三一日即日施行された。イラク派遣が想定されているのである。
ここで、先の「国際テロ特別機動展開部隊」の新設にスポットが当てられねばならない。「情報収集については、自衛隊法には特段の権限規定はなく、イラク特措法にも情報収集の権限規定は存在していない。したがって、派遣されたイラク国内で予定されている自衛隊の活動に必要な情報収集活動も自衛隊が直接に行うことは困難である。それらを補完するものとして、警察が海外で情報収集等の活動を展開する体制を作り、自衛隊の外国における活動をバックアップするための組織整備が、今回の「国際テロ特別機動展開部隊設置のねらい」(日弁連・警察法改正案に対する意見書より)なのである。
自衛隊の海外活動のために警察が情報収集!という悪夢が現実化した。
「国益擁護」が警察の目的に登場
改正案では、「犯罪の取り締まりのための電子情報処理組織」を、国家公安委員会と警察庁に追加し、「情報技術の解析」を重要な任務としている。「情報技術の解析」とは、その情報を取り扱う主体を問わず、これを解読・分析することであり、情報衛星から得られる画像情報の分析や、盗聴技術の向上もその内容に含むものである。
つまり、「国益に反する」と見なされる個人や団体の取り扱う情報のすべてが、解析の対象とされうることであり、警察が、CIA化していくのである。
情報解析を重要な任務に
戦前の警察のあり方に対する反省から、民主国家における警察の役割は、個人の権利と自由の保護とされてきた。ところが、改正案では、この枠組みを大きく越えて、個人ではなく「日本国民」あるいは「日本国の重大な利益」といった用語が初めて用いられ、「国益擁護」が警察の目的に滑り込んできた。この変化は重大である。
かつて日本は、「国益」の名の下に、個人の権利と自由の侵害が歯止めなく進み、ついに戦争へと突き進んでいった。日本の警察は、ナショナリズムの煽動のもと政治警察への道を歩み始めたのである。(編集部)