[海外] これが「解放軍」の実態だ!〜泥沼化するイラク占領/3/2サマワ北部ワルカ路上射殺事件
出稼ぎ労働者を銃撃、犯人の米兵にお咎めなし
サマワ市街地から国道八号線を北へ六qほど遡ったワルカ地区に、ハムザ・アルマイエという村がある。周囲に民家が点在するだけの農村で事件は起きた。
朝一一時頃だった。国道八号線を物資補給のために走る米軍のトレーラーの車列を追い越して、車列と並走したイラク人の運転する車が米兵に銃撃された。銃を撃った兵士たちは、「何で我々の横を走るんだ!」と怒鳴っていたという。
撃たれたイラク人男性は、ジャーセム・イドハム・メファセム(三五)とアハメド・アブドル・ハァレック(一八)の二人で、どちらも直後は重傷だったが、米兵たちは彼らを車から路上に引きずり出し、足で突付いたりしながらボディチェックをしていた。
その時、事態を気にして集まってくる近隣の住民ら約三〇〇〇人ほどが現場を取り囲んでいた。すぐに知らせを聞いたオランダ軍が現場に到着したが、彼らは米兵と一緒になって、住民やジャーナリストを近づけないように規制するだけで精一杯だった。
撃たれた男性のうちアハメドさんは、約二時間も炎天下の路上に放置されて苦しんだ挙句、米兵が近距離からライフルで彼の胸を撃ち抜いたという。そしてアハメドさんは絶命した。
撃たれた二人は、昨夜バスラから来てナジャフへ行く途中の出稼ぎ労働者だった。この時の米軍の車列は、トレーラー一二台とジープ二台で、米兵は約三〇人ほどの輸送警護隊。駆けつけたオランダ兵は、四台のジープに分乗した二〇人ほどの憲兵と将校。この時イラク警察は、現場周辺まで来ていたにもかかわらず、米兵の規制で近づけなかったようだ。
そして約二時間後、ようやくイラク警察は、撃たれて既に死亡したアハメドさんと、生存者のジャーセムさんをサマワ総合病院へ搬送した。イラク警察は、米軍輸送部隊が現場から離れる時に彼らの将校と下士官から調書をとったが、直接射殺した兵士らは、既に他の車両で現場を離れていたという。
ハムザ・アルマイエ所轄警察署では、その時の調書と証拠物件が保管されていた。アリ・ハクタッシャ・サシム署長は、「犠牲になった彼らには本当に気の毒だが、イラク民間車両が米軍車列を追い越してはいけないという占領軍のルールを知らなかったようだ。彼らがテロリストであるという証拠は見つからない。これはあくまで事故だ」などと射殺事件について述べた。
事件後に聴取した書類には、米軍部隊の将校と下士官の名前や、現場の簡単な見取り図が記入されていた。警察が回収した物証は、犠牲者の遺体から検出された弾丸と、犠牲者のIDカード、それと一五〜一七ヵ所の弾痕が運転していた車両から確認された。なお、遺体から検出された弾丸は『ダムダム弾』という、体内で弾が破散するきわめて殺傷能力の高い弾丸が使用されていた。
広がる占領への抵抗
こうした事件後も、サマワ周辺では警察車両が何者かに襲撃され、警官ら十数名が殺害されるなどの事件が発生している。また、バスラから自衛隊への物資を輸送中のトレーラーが国道で襲撃されて、ドライバーら数名が殺害され、トレーラー一台が荷物ごと奪われる事件も起きている。
つい最近では、ナジャフにおいてイスラエルのセキュリティ会社から派遣されたアメリカ人スタッフ数名がパルチザンに襲撃された。彼らは、焼き殺された挙句に遺体を損壊され、バラバラになった遺体の一部が街の電柱などに吊るされた。明らかにアメリカ軍だけでなく、イラク国内に展開するイスラエル関連企業をも標的にしたすべての占領状態に対する報復を示唆している。
米軍は、まるで蜂の巣を突付かれたように手当たり次第に住民のデモに弾圧を加えてきている。彼らは捉えどころのないパルチザンへの報復の代わりに、住民の占領反対のデモに対して虐殺も厭わない弾圧に踏み切っているのだ。
この反占領の波が、いずれサマワの自衛隊にも波及することは時間の問題と言えよう。自衛隊はこれまでは宿営地という『温室』のなかで穏呑としていればよかった。しかし、これからは宿営地設営・警備の『監督』だけではなく、道路工事などの『監視』や宿営地をめぐる地主交渉の『警備』などを含めて、幹部だけでなく陸士・陸曹も住民を直接的に占領支配する機会に直面することになる。
いつまでもサマワ住民の忍耐に依存できないことは明らかだ。