更新日:2004/04/19(月)
[コラム] 史上最年少の芥川賞受賞
若者の心境・心情を全く掴めないのはある意味で感性の頽廃であるが、若者に阿り諛う方向への無節操な傾斜は理性の惨死であろう。
巷間は史上最年少の芥川賞受賞に沸いている。19、20歳女性のアベック受賞である。受賞作掲載誌は異例の3増刷を行った。単行本・雑誌合わせて、2人の3作品を優に3百万人が読んだ計算だ。「客」は「おじさん」と「若者」が主、という面白い現象が見られるが、この2作と前回の「文芸賞」受賞者17歳の男子高校生の作品を併せ読めば、何が見えてくるか?
「居心地が悪く」「生き辛い」閉塞感が蔓延する現代社会の中で、必死に足掻いている若者たちの息遣いが伝わってくる作品群である。とりわけ驚嘆すべきは、激変しつつある彼らの感性が、素直さ赤裸々さに支えられ、見事に文章表現に反映されている点である。才能だけでは成し得ない修練を感じさせられる。
このセンセーションのさなかを、オウムの麻原に死刑判決が宣告され、酒鬼薔薇が成人して社会復帰の緒に就いた。オウムも14歳少年も、現代社会の「息苦しさ」を訴えていたバブルの落とし児であった。今回受賞作群もその線上にある。
彼らには気負いも斜めに構えたところもない。舌をピアスで穿たれ、背中を蹴られたのは「おじさん」達なのだ。(編集部)
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