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更新日:2004/04/19(月)

[情報]車を走らせる燃料を自分で作る!夢のようなホントの話 〜手作りバイオディーゼル燃料
──NGO ジャーニー・トゥ・フォーエバー 共同代表 ひらがみどり

編集部より

「えっ、こんなんで燃料が作れるん?」  天ぷら油から軽油代替燃料のバイオディーゼルができると知っている人でも、それを素人が家庭で手づくりできることを知っている人は少ない。お手製のプロセッサは、拾ってきたオイル缶に電気ドリルと電熱器、温度計を差し込んだもの。古い民家の片隅で廃食用油から「こんなん」で手づくりしたバイオディーゼル燃料は、アメリカやヨーロッパ諸国の品質基準に達し、ディーゼル車やトラックを元気に走らせている。

インターネットを活用、オープンソースに開発した技術

台車に据え付けたお手製の燃料製造器で手づくりバイオディーゼル燃料を紹介しているアメリカのマイク・ペリー

「僕たちは家の台所をにわか工房にしたて、近所のマクドナルドからもらってきたドロドロの廃食用油六〇リットルからバイオディーゼル燃料を作ってみた。食べるわけじゃないって説明したら、マクドナルドの店長はよろこんで廃油を贈呈してくれたよ。インターネットでしっかり調べていたから大丈夫だとは思ったけれど、バイオディーゼルがどんな燃料か、まずは自分たちで作って使って確かめなくちゃと思ってね。化学ド素人の僕たちが作ることができるのなら、誰だって作れるはずだ。

できたバイオディーゼル燃料を昨晩ミドリのディーゼル・ランドローバーのタンクに流し込んで稼働してみたら、ブルルルルルルーン! 本当に動いたよ! バラの花束の香りが辺りに立ちこめ、夢心地だった。まあ、フライドポテトの花束だよ、とにかく。ビッグマックの残骸を台所のコンロに乗せたバケツの中でかき混ぜて、クリーンなディーゼル燃料を作ってこの大きなランドローバーを走らせるなんて、うれしくっておかしくって、二人で大笑いしていた」byキース・アディソン

これは私たちがインターネット上にただ一ページ紹介されていた原始的な作り方をもとに、一九九九年に初めてバイオディーゼル燃料を手づくりしてみた時の様子だ。数百万円の燃料製造機を販売している企業はあったが、同じ燃料をだれもが身近な道具を用いて手づくりできる方法はほとんど知られていなかった。

そこで私たちは「バイオ燃料メーリングリスト」を開設し、みんながみんなのバイオ燃料づくりにアイデアを出し合い、情報と経験を共有して協力するためのディスカッションの場を提供してきた。このメーリングリストには二〇〇四年二月現在、世界中から草の根バイオディーゼラーや専門家、学術者、企業家たち二,〇〇〇人以上が参加している。

商業的にバイオディーゼル燃料を生産している人もいるが、それも小規模な工房や協同組合が多く、メーリングリストでは主に特別な知識も設備も持たない一般市民がバイオ燃料を手づくりできる方法を一緒に開発してきた。こうして開発した作り方をまとめてサイトに掲載。それを見た人たちがさらに燃料づくりに挑戦し、世界中で草の根バイオディーゼル燃料づくりを繰り広げてきた。

メーリングリストでは約三万七千通のメッセージが行き交い、活発な議論はバイオディーゼル燃料の作り方に留まらず、燃料製造器の作り方、品質を高めるためにはどうすればよいか、また燃料製造過程でできるグリセリンなどの副産物を活用する方法も多数開発され、洗浄用の水を再利用や浄化する方法なども開発された。

その結果、今では基本的なバイオディーゼル燃料の作り方、アメリカのマイク・ペリー氏の作り方、スロベニアのアレックス・カック氏の二段階製法、その他の関連情報を多数サイトで紹介している。

プロジェクトはネット上だけに留まっていない。タイから参加した大学教授にリスト参加者が協力し、パーム油から作られたバイオディーゼル燃料でタイの電車を走らせることに成功したり、バハマの高校ではリスト参加者が一緒にデザインしたプロセッサで島中のディーゼル・エンジンを稼働しようとしたり、世界各地でプロジェクトを実現している。

食卓塩より毒性がないバイオディーゼル燃料

オイル缶に電気ドリル。このプロセッサで高品質燃料を製造している。燃料作りに必要な機能を満たせば、機械は必要ない

バイオディーゼルとは、植物性・動物性油脂にメタノールと水酸化ナトリウムなどを使い「エステル交換」という化学反応を起こした燃料だ。基本的には、@メタノールと水酸化ナトリウムを混ぜる、A油を暖める、B油にナトリウムメトキサイドを加え攪拌する、C数時間静置し沈んだグリセリンを取り除くという工程で作られる。

バイオディーゼルは不燃炭化水素、一酸化炭素、浮遊粒子状物質の排出を減少し、二酸化硫黄は排出しない。大気中の二酸化炭素の量に対して中立なため地球温暖化防止にも効果がある。何より「砂糖より生物分解されやすく、食卓塩より毒性がない」と言われるほど、排ガスも燃料自体も環境と健康への害が軽油に比べてぐっと少ない。

しかもディーゼル・エンジンなら改造する必要もなく、既存の車や発電機、農機具、船などをそのまま使えるのが強みだ。どんなに排ガスが無害なエコ・カーでも、今世界中で稼働しているディーゼル車を全部取り替えるだけの車を生産するためには厖大なエネルギーと環境負荷が必要だ。世界では毎日一〇万台の新車が製造されているが、近代的な乗用車を製造するために必要なエネルギー量はその車が一生の間に消費するエネルギー量の二〜三倍だと言われている。

さらにバイオディーゼルはほとんどの植物性・動物性油脂から作ることができ、新しい油脂のみならず、垂れ流すと環境を汚染してしまう廃食用油からも作ることができる。また身近な道具で手づくりできるため、自分で育て、自分で作ることができる燃料として国や地域のエネルギー的自立を促進することができる。

ドイツにはバイオディーゼル燃料の給油所が一五〇〇ヵ所以上あり、値段は軽油より安いほどだ。農業国フランスはバイオディーゼル燃料の大生産国で、すべての軽油にバイオディーゼル燃料が二〜五%加えられている。新しいEU規制はこの軽油へのバイオディーゼル添加を欧州全体で義務づける予定だ。アメリカでも手づくり派に加え、バイオディーゼル燃料供給会社も急増している。日本でも京都市が一九九七年から約二〇〇台のゴミ回収車を走行させるなどいくつかの取り組みはある。

手づくりだからこそ品質と安全を追求

自動車やトラックを動かす燃料を手づくりするなんて危ないと懸念する声はよく聞かれる。立派な機械と設備で企業が製造した既製品こそ高品質との思いこみは強い。さらに企業は、自らの利益を守るためにもまことしやかな噂を流す。

しかし業界からの圧力があるからこそ、バイオディーゼル燃料を手づくりする個人や小規模生産者は品質と安全を追求してきた。その結果「ジャーニー・トゥ・フォーエバー」の手づくりバイオディーゼル燃料がアメリカやヨーロッパ諸国の品質基準をクリアしたとの報告が次々に入っている。

バハマ・エリューセラ岬にあるアイランド高校の職員ジャック・ケンワージーは二〇〇二年一一月にまったくの初心者として「ジャーニー・トゥ・フォーエバー」のバイオ燃料メーリングリストに参加した。リスト参加者はジャックがバイオディーゼル燃料の作り方を基礎の基礎から学ぶのを手助けし、ジャックがバハマで直面した問題を一緒に解決し、アイランド高校向けのプロセッサもみんなでデザインしてあげた。バイオ燃料メーリングリストに参加して九ヶ月後にジャックは次のメッセージを投稿している。

「やあ、みんな! 僕が作ったバイオディーゼルがASTMテスト(米国ASTMD―六七五一ディーゼル基準)に合格したよ! しかも全カテゴリー合格だった。バハマみたいな辺境でも僕みたいな素人でも、超一流の燃料を手づくりできることの証明がまた一つ増えた。みんな本当にありがとう。ジャックより」

スロベニアのアレックス・カックは、自分で開発した「二段階 酸―アルカリ『Foolproof』方式」で自家製バイオディーゼル燃料を作り、欧州における品質基準として定評あるドイツのDIN五一六〇六試験に二回合格し、オーストリアのONORM試験にも合格した。試験用に何も準備しないで、アレックスが自分の車のために作っているいつも通りの燃料にもかかわらず。

アメリカでは企業が市販したバイオディーゼル燃料が粗悪な燃料だと発覚し、リコールされた事例がいくつもある。また日本でも機械で作ったバイオディーゼル燃料にアルカリ分が残っていたとか、インジェクションが詰まったとかいう話も風の噂で聞いている。「大きいことはいいことだ」「企業の製品は安心だ」との思いこみは見直す時期にきていると思う。

一人から手づくりできるエネルギー源

日本にはディーゼル車が何台あって、それをまかなう軽油が何リットル必要で、それだけのバイオディーゼル燃料の原料を栽培するには農地が何ヘクタール必要で…「ああ、とてもまかなえないからバイオディーゼル燃料は役に立たない」と否定する声が聞こえてくる。また自分一人がバイオディーゼル燃料を使ったからといって、温暖化も大気汚染も緩和しないという冷めた声も聞こえてくる。

だけど私たちがウェブサイトで公開している作り方を参照し、手づくりバイオディーゼルで燃料を自給している世界中のバイオディーゼラーたちの数は万に近い。この人たちだけで今まで減らした二酸化炭素の量は、日本が今やっきになって減らそうとしている六%の量を軽く超えているといっても言い過ぎではないだろう。

多様な原料から作ることができるのもバイオディーゼルの強み。当分の間は地元で捨てられている廃油から作った燃料で自分の愛車一台は走らせることができるだろう。バイオディーゼル燃料の製造が広まって廃油が足りなくなったら、一〇〇万ヘクタールもある休耕地の活用を考えることも可能だろう。今は無駄にされている油の原料が他にもあるかもしれない。

ならば、まずは自分から始めよう。大企業でなくても、燃料を作ることが可能なのだから。

バイオディーゼル燃料の作り方

「バイオ燃料」を参照

プロフィール

手づくり企画「ジャーニー・トゥ・フォーエバー」

南アフリカ出身の第三世界ジャーナリスト、キース・アディソンをリーダーに、日本人平賀緑と香港にて一九九七年に発足。食糧・環境・開発問題に総合的に取り組むNGOとして、地域の自立を促進する適正技術を情報提供しネットワーキングしている。ウェッブサイトによる情報提供とメーリングリストを活用したオープンソースな技術開発を進めながら、兵庫県・市島町のプロジェクト本部では土づくりや有機農などの小さな農場を築き、手づくりバイオディーゼル燃料のセミナーやワークショップを開催している。詳しくはサイトを参照

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