[政治] 人家なき建設予定地に13億円の地元対策費?
猪名川(大阪・京都・兵庫)上流ゴミ処理施設建設/見え隠れするウラ世界
地権者の絶対条件
「人家のないところに、なぜ一三億円もの地元対策費が必要なのか!」。二月二〇日、川西市役所内で行われた猪名川上流広域ゴミ処理施設組合定例議会で、大谷真智子議員(川西市選出)は、当局に詰め寄った。
大谷議員が示した資料によると、川西市・猪名川町・豊能町・能勢町合同で建設するゴミ処理施設建設に関連し、周辺整備事業として総建設費の五%が当てられる予定になっているという。その額なんと一三億円。ところが三三万uにわたる事業区域内周辺には、一庫ダム建設時に集落全体が水没したため、集団移転し、人家はない。
一庫ダムが下流域六〇万人の水源となっているため、ゴミ処理施設建設によって直接健康被害を受ける可能性は、むしろ下流域住民であり、反対運動も川西市民が中心となっている。
造成区域内の地主は四名で、残存緑地内の地主二四名を加えても、三〇名たらずの地主に、ほとんど価値のない山林買収のために土地買収費(約一一億円)とは別に、一三億円の地元対策費と聞かされれば、誰だって首を傾げるだろう。
「地元対策費」とは、原発や軍事基地・ゴミ処理施設など、いわゆる「迷惑施設」建設への地元の同意を取り付けるために支払われる、いわば「迷惑料」だ。これまでは、使途を問わない資金として提供されてきた例も多かったのだが、これらが厳しい社会批判にさらされ、「土地所有者等の意向に添う公共的施策の実施」として支出されることが多くなっている。
今回の場合も、国崎自治会から公民館の建て替えや道路補修など七項目が要望されており、施設組合側は、「これは地権者の絶対条件だ」として応じることを明言している。
飛び地もついでに買収
施設組合は、事業区域から一キロほど離れた落合地区三五〇〇〇uの土地も買収するとしてている。この飛び地は、水没後移住した元住民らが作る自治会が所有する共有地で、ゴミ処理施設建設上は全く必要のない土地である。要するに「事業区域と一緒にこの土地も買ってくれないと、事業地域内の土地は売らない」という地主・国崎自治会からの要望を丸飲みしたのである。
この土地、何に使うかもはっきりしていない。管理者側は、当初廃熱利用施設(温浴施設など)建設を予定していたが、一般市民も参加する「フォローアップ委員会」でも強い異論が出され、当初の案を撤回した、という経緯もある。現在、施設組合側は「ビニールハウスでも…」と何とも歯切れの悪い答弁となっている。この土地の購入については、定例議会の中でも多くの疑問が出され、今後も紆余曲折が予想されている。
さらに、土地購入価格についても、山林=三三〇〇円/u(平地である栗山は=八二〇〇円/u)となっているが、この周辺の整備された水田でも三三〇〇円/uでは買い手がいない、という現状だ。手間ひまかけた農地よりも高い、山林買収価格が適正なものなのか?ゴミ処理施設建設に反対している市民グループは、住民監査の構えを見せており、ここでも疑問符が突きつけられている。
環境省、ヒアリング中止
こうした中、環境省は建設に関わる補助金支出のためのヒアリングを中止した。理由は、「地元の合意がとれていないから」というもの。国も二の足を踏んでいるわけだ。しかし施設組合には、ゴミ処理施設をどうしても作らねばならない理由がある。一九九八年能勢町のゴミ処理施設から大量のダイオキシンが発生している問題が指摘され、焼却炉の施工者である三井造船は、厳しい社会的批判を浴び、ゴミ焼却炉は解体された。
しかし、ゴミは減るわけでもなく、現在は大阪府下の自治体の焼却施設に引き取ってもらっている。当然こうした状況は今後も継続できるわけもなく、早急にゴミ処理施設を建設しなければならないのだ。
今回の予定地取得が、万が一にも「失敗」という事態になれば、建設はまたもや数年延ばさねばならず、施設組合としては、何が何でも地権者の合意を取り付けねばならないという事情があるのだ。その意味では、今回の過剰とも言える地主対策は、ゴミを出し続ける都市と、大量生産大量消費社会が生み出した矛盾といえる。
倒産──資産隠しの「大阪日々グループ」が地主に
関西ウラ世界の錬金術
造成区域内地主四人の内の一人が、「潟{ンアール」という法人である。この地主を調べてみるとおもしろいことがわかった。ボンアール社は、建設予定地決定直後の二〇〇〇年九月、一〇四二億円の負債を抱えて倒産したケイジーシィ鰍ゥら、この土地を取得している。ちなみに同年八月に「猪名川上流広域ゴミ処理施設組合」が設立されている。
しかも、ボンアール社とケイジーシィ鰍ヘ、同じく大阪日々新聞の系列グループ企業である。ディリー社元社長(=元大阪日々新聞の社長)は、倒産の際に資産隠しで告発されるという、いわく付きの企業だ。この時期の一致・企業関係に意味があるか否かは、読者の判断に任せよう。
ゴミ処理施設建設となれば、土地の売買は売り手市場。このゴミ処理施設は能勢のダイオキシン問題もあって、行政としても緊急性と必要性が高い。買い手はどうしても買わねばならないのである。当然地主は、「買収価格は、ゴネればゴネるほどつり上がる」と考えても不思議はない。
もう一点指摘したいことがある。事業対象面積が二〇〇一年段階では約一〇fだったが、二〇〇三年の準備書面では、三倍以上の三三・八fとなっているのである。事業面積が三倍に増えた理由は、「残存緑地」として二七・四fを新たに購入することにしたためである。この残存緑地内に潟{ンアールは約一一〇〇〇uの土地を所有しており、オモテの買収資金だけでも四〇〇〇万円が膨らんだことになる。
「オモテの買収資金」と書いた。今わかっているだけでの話だ。公共施設建設に関わる土地買収には、様々な利権が絡み合い、有象無象がうごめく闇の部分が必ずといっていいほど存在する。こうした背景の中で、上記の一三億円の「周辺対策費」は、いったいどういう趣旨で、どういう名目で支出されるのか?編集部は、今後も調査を続ける。