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更新日:(2004/02/15)

[海外] パレスチナ/自爆攻撃

ここの生活は耐えられない

パレスチナ

西岸地区ジェニン難民キャンプの一三歳の少年モハメッド・バティは、早く死にたいと言う。「ここの生活は耐えられない。『作戦』をやれというなら、喜んでやります」と、七年生(中学一年)の少年は事も無げに言った。

「作戦」というのは、自爆(殉教)攻撃、または、やはり死ぬことが確実な銃による攻撃のことである。どちらの場合も、実行者は永遠のパラダイスに行けると考えられている。

自爆攻撃がモハメッド君の本音かどうかは分からないが、彼の発言は、自爆攻撃がパレスチナの子どもたちの心をつかんでいることをうかがわせる。

かつて急進派ムスリムだけのものであった自爆攻撃は、今やパレスチナ社会一般に広く根を張り、儀式を備えた一つのカルトになりつつある。この一年七ヵ月の間に、一般の世俗的パレスチナ人が六〇件もの自爆攻撃で自殺した。しかも、女性や一〇代の子どもたちが多い。自爆攻撃のニュースが伝えられると、通りでキャンディが配られ、女性たちが歓喜の悲鳴をあげる。銃とコーランの詩句を描いた旗を背景に、実行者が今生の別れの言葉を語るビデオが流される。彼・彼女のポスターが町中に貼られる。パレスチナ人は、爆弾攻撃は自らの独立国家を求めるための正当な武装闘争だと言う。イスラエルは、それは許されざるテロ行為だと言い、今月、テロリスト狩りと称して、この二〇年間で最大の軍事作戦を西岸地区で行った。

世論調査によると、パレスチナ人の七〇%以上が自爆(殉教)攻撃を支持している。「殉教者」がパレスチナ社会で受ける高い尊敬が、次世代の子どものメンタリティを形成している、と識者は語る。「殉教が私たちの子どもにとって、一つの憧れの星となった」と、ガザの心理学者ファドル・アブ・ヘインは言う。「もし普通の環境で普通の教育を受けておれば、自殺に価値を求めるようなことはしないだろう」

急進派は、自爆攻撃志願者はたくさんいて、長い候補者リストがある、と言う。選択にあたっては、イスラエルの道路、都市、目印になるようなものなどをよく知っている者が優先される。したがって、イスラエル内で働いた経験がある者が自爆攻撃者になることが多い。

ゼロ・アワーが近づくと、自爆(殉教)攻撃者は最後のお祈りをし、殉教に関する説教を聴く。そして家族や友人に別れを告げることなく出発する。爆弾を腰の周りに巻きつけ、自爆によってできるだけ多くの死傷者、できるだけ多くの破壊を引き起こせる場所を探す。満員バス、カフェ、屋外マーケットなどが標的になりやすい。


どっちみち死ぬのだから……

モスクのミナレット頂上に据え付けられたスピーカーから、自爆攻撃のニュースが流される。自然発生的に人々が集まってきて、実行者の家まで行進が行われる。家人は青少年センターや社交クラブなどに招かれて、多大な敬意と祝福(慰めではない)を受ける。瞬く間に実行者の顔写真入りのポスターが町中に貼られる。三月三一日にハイファのレストランで一五人の入植者を道連れに自爆したシャディ・トバシの場合はその典型であった。彼のポスターは、イスラエル軍に殺された子どもとエルサレムの岩のドームを背景に、ピストルとコーランを持って雄雄しく立っている姿だった。彼の親族が住んでいる家はジェニン難民キャンプのすぐ横にあるが、そこの外壁は落書きでいっぱいだった。「シャディ、君のことは決して忘れない」とか「シャディ、天国でゆっくりしたまえ」等々。

自爆(殉教)攻撃は、イスラエルを宗教の敵と見る世界中のムスリムの心をとらえた。ムスリム世界は、長い討議の末、イスラム教は自爆攻撃を認める、その実行者は殉教者であるというコンセンサスに、ほぼ達した。

二〇〇〇年九月以降少なくとも二〇件の自爆攻撃が、強硬派の牙城と言われるジェニン難民キャンプを含むジェニン地区出身者によって行われた。イスラエルは三週間にわたって人口一四〇〇〇人の貧困地区ジェニン難民キャンプを猛攻撃、パレスチナ人も激しく抵抗した。一三歳のモハメッド君も、戦車や武装車に爆薬を投げたと言っていた。難民キャンプの床屋に集まった大人たちも、そのことを誇らしげに話していた。

大人たちも、仕事も何もないもないので、自分も自爆攻撃者になることを夢想している。「どっちみち死ぬのだから、それが一番よい死に方だ。是非やりたい」と、失業労働者のラシディ・アル・ノルシ(二四歳)が語った。

「周囲を見てみろ。いったい生きるすべがどこにあるというのだ?こんな惨めな生活を続けるくらいなら、死んで殉教者として名を残す方がはるかによい」

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