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更新日:(2004/02/15)

[政治] アメリカに平和の大統領を!

平和を創るトークショー

クシニッチ
アメリカ大統領候補・デニス・クシニッチ氏
クシニッチ氏は、アメリカがあらゆる軍縮条約に調印し、世界に平和をもたらすために、爆弾ではなく食料と医療援助を分配し、核兵器全廃に向け努力し、京都議定書に調印し、環境と人間の価値を守る平和構造を打ち立てようと言っており、そのために平和省の創設を提案している。
アメリカや先進国が潤って、結局は貧しい国にとって不利になるWTO(世界貿易機関)やNAFTA(北米自由貿易協定)をなくし、貿易は二国間協定で行い、労働者と環境を守る経済活動の重要性を説いている。もちろん脱原発で、遺伝子組み換えというアメリカの世界戦略にも、「ノー」。
彼を応援するため、ヨーロッパ、アメリカ、日本でグローバルキャンペーンが始まっている。

今日一月一九日はキング牧師の誕生日、そしてアイオワで民主党の大統領候補者を決める最初の予備選挙が行われる日。成田空港を一一月末に出発し、エルサルバドルへ飛び、ピースボートに乗って水先案内人として講演をし、ハワイで船を一二月一〇日に降りた。それから夫と二歳と三歳の子どもと共に、ハワイ、カリフォルニア、そしてここアイオワで「どのように平和を創れるか」というテーマでトークショーをしてきた。

私たちのショーはおよそ、時間半から二時間で、フルートとギター演奏と歌、トークとビデオを織り交ぜたもの。ビデオは劣化ウランの被害を伝えるもの、アメリカの外交政策が地球全体に与える影響について、マンガ『戦争中毒』映画版のプレビュー、アフガニスタンの実戦シーン、クシニッチのビデオなどを数分ずつ。会場には森住卓さんの「湾岸戦争の子どもたち」の写真パネルを展示しながら、各地を回っている。これまで数百人のアメリカ人が来てくれたが、劣化ウランの実害については、ほとんどの人が知らない。


クシニッチ氏に合流

ここアイオワに入ったのは一月一五日夜。この三日間は、クシニッチキャンペーンに先回りして各地を回り、クシニッチの演説を聞きに集まった聴衆が彼の到着を待つ合間に、短いスピーチと演奏をしてきた。「私がアメリカで一番素晴らしいと思うものの一つは、最高のピースソングがあること。アメリカは戦争ばかりしているから、必然的にこういう歌が生まれたのかしら」と言うと、会場中が爆笑する。そして、玄さん(夫)から教わった六〇年代のピースソングをフルートソロで奏でる。「花はどこへいった」や「Last Night I Had The Strangest Dream」を歌いはじめると、みんなが一緒に歌ってくれる。

知名度低いが根強い人気

現在、米大統領選の民主党指名選挙には八人が立候補している。リードしている四人(ケリー、エドワード、ゲプハート、ディーン)とクラーク(マイケル・ムーアが正式に支持を表明した)以外はテレビが報道しないので、クシニッチの知名度は低い。マスコミの世論調査ではクシニッチは三%ぐらいの支持率で、すでに選挙戦から脱落したかのような扱いだ。

ところが、Truth Outというメルマガの世論調査で、クシニッチはまたもやトップ。このサイトの著者はスコット・リッターの本『イラク戦争』を書いたウィリアム・ピットで、彼はどちらかというとディーンを積極的に取り上げていたので、この結果は以外だった。

1月15日のTruthOut大統領選 ネット投票最終結果

  • 1位 クシニッチ 44.5%
  • 2位 ディーン 32.4%
  • 3位 クラーク 14.6%
  • 4位 ケリー 3.6%
  • 5位 エドワード 2.4%
  • 6位 シャープトン 0.9%
  • 7位 ゲパード 0.7%
  • 8位 ブラウン 0.6%
  • 9位 リーバーマン 0.3%

投票総数: 23804

またアイオワのある喫茶店が行った「コーヒー豆投票」(お客さんにコーヒー豆一粒を支持する候補者のところに入れてもらい、その数を数える)では、クシニッチはディーンに次いで僅差で二位。だから、まだまだ結果はわからない。

今回の選挙では、民主党の登録者数がどの州でも二倍近くに増えている。「ブッシュ以外なら誰でも(Anyone but Bush)」というスローガンも多く目にする。新規登録者がどのような投票行動をするかは未知だ。アイオワ州は最初の選挙地なので全米のマスコミが注目しているが、ここで決定されるのは全体の二%の票に過ぎない。民主党の大統領候補者を決めるこの予備選は五〇州で順次行われ、七月にボストンで行われる党大会で最終的にブッシュ大統領の対抗馬が決定する。

ブッシュ以外なら誰でもいい

アイオワ後、注目されるのは一月二七日のニューハンプシャー、二月三日の「ミニ・スーパー・チューズデイ」の結果、そして三月二日の「スーパー・チューズデイ」の結果だ。このスーパーチューズデイまでに全票の六〇%が確定する。

私たちは一月一五日にアイオワ入りして、森住卓さんの「湾岸戦争のこどもたち」の写真パネルを展示しながら、『戦争中毒』『Prayer for America』『Children of the Gulf War』『The War Against the 3rd World』の本やビデオを抱え、カフェやレストラン、クシニッチの支持者の家などで、ミニ講演会とコンサートを続けている。外国人の寄付が禁止されているので、許されるのはメッセージを伝えるということだけだ。

クシニッチは二日前にアイオワ入りし、昨日の演説ではイラク戦争での米兵の死者数が五〇〇人を越えたこと、一体彼らは何のために死んだのか、石油と大企業の利益のためではないのか、ということを中心に訴えた。この戦争が違法で非道徳的で、米国の精神に反する、国連PKFを入れて米軍は撤退すべき、そしてイラクの石油は国連の管理下においた後、イラク人主導の政権ができたら委譲すべき、と発言すると、会場中の人が総立ちで拍手をした。こんなことを言っている候補者はクシニッチしかいない。

既成事実に弱いのはいずこも同じ?

「人気のある(ブッシュ)大統領の政策を批判するのは、自殺行為」というのが、残念ながら主流派のアメリカ人の考えだ。実際、世論調査では過半数がブッシュ支持。イラクの大量破壊兵器はいまだ発見されていないが、いつの間にか侵略の理由はサダム・フセイン追放にすり替わり、アメリカ国民はそれを受け入れたかのようだ。既成事実に弱いのは、日本もアメリカも変わらない。

ディーンやクラークは反戦候補として注目と支持を集めてきたが、彼らはイラク占領政策の継続と、軍事費の堅持、または増加を表明している。クシニッチ陣営は「ディーンやクラークの支持者たちは、まだクシニッチのことを知らないクシニッチ支持者」と見ている。実際、ディーンに失望した(言っていることと政策が違う)と言う人たちにあちこちで出会う。

マスメディアが伝えない米兵犠牲者

最後に、多くの人に見てほしいものが、平和のための退役軍人会(VFP)のアーリントン・ウェストというサイト。VFPのサンタ・バーバラ支部の一人が、イラク戦争での米兵戦死者がマスコミで詳細に報道されなくなったことに異議を表明し、海岸に墓標(十字架)を立て、弔うことを始めた。毎週日曜日、サンタバーバラの海岸に「アーリントン西墓地」が突如出現する。海に遊びに来た人たちが十字架が五〇〇本近く並ぶ光景を見て、驚く。ある人は祈りをささげ、ある人は涙を流す。花を買ってきて手向ける人もいる。

私が彼らと出会ったのは、サンタクルーズで一月一二日から一四日に行われた「ワン・ダンス・サミット」で、私たちは劣化ウランについてのワークショップを、VFPはイラク戦争についてのワークショップを行った。このサミットには、著名なマイケル・パレンティやシンシア・マッキニーなども基調講演を行い、彼らとも交流できた。

VFPの「アーリントン西墓地」のワークショップでは、「メディアが伝えないなら、私たちが伝えよう」と墓標の作り方まで丁寧に指導した。その日(一月一三日)までの死者数は四九七人。VFPのメンバーの一人が「この数がまもなく五〇〇を越えることは、時間の問題だ」と語っていたことが、ついに現実になった。そして彼はこう続けた。「もしイラク市民やイラク兵の犠牲者の墓を加えたら、サンタバーバラの海岸を埋め尽くすことだろう」と。

アメリカ人も驚く自衛隊派兵

イラク占領はうまくいっていない。米国への反発は日増しに増え、米軍と同盟軍に対する攻撃は激化している。占領が長引けば、それだけ双方の犠牲者が増えるだろう。何も解決されていないし、何も良くなっていない。自衛隊がすでにイラク入りしたことは、こちらの報道でも大きく伝えられており、アメリカ市民もそのことに驚きを隠さない。「本当に日本軍がイラクに行ったのか?」「日本には平和憲法があって、違法なんじゃないの?」と聞かれる。「日本政府は、日本国憲法よりもアメリカ政府の意向を大切にする。だから私たちは日本からここまで来て、クシニッチの応援をしているのだ」と答えると、みんなが私たちの一見奇異な行動に納得してくれる。

アイオワの予備選挙が終わったら、今度はカリフォルニアをまわる。

アイオワから愛をこめて

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