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更新日:(2004/02/15)

[社会] 国民年金第三号被保険者制度は性別役割分業推進制度だ──深見史

破綻が噂される国民年金制度だが、多くの人が不信感を抱き、不利を承知で未納者が増えているのには、それなりの理由があるだろう。

現在支払うべき月額一三三〇〇円が、六五歳になってもらえる五万〜六万円よりも負担が大きいと感じていること、その五万円余さえ本当にもらえるかどうかわからないこと、支給開始年齢は高くなり、保険料は増額を予定されていること、などなどの不安要因に加えて、不平等感も増大しているのではないか。最たるものは「第三号被保険者」だ。

「第三号被保険者」とは、一九八五年の国民年金法改正によって新たに作られた、いわゆる「サラリーマンの奥さん」優遇制度である。会社員・公務員の妻であり専業主婦である者は、家計補助労働に甘んじる限り国民年金の保険料を全額免除される。しかも、一般の免除制度のように支給金額が減額されることはない(夫が妻の分の保険料も払っているという誤解が一部にあるが、そうではない)。

第三号制度は、健康保険の被扶養者制度(保険料なしで保険給付を受ける制度)と連動して「年収一三〇万円」の壁を作り、女性の労働を低賃金補助労働に縛り付けるために大いに役立った。雇用機会均等法もなんのその、女性労働者の半数はパート・派遣等の非正規労働者であり、賃金は男の半分強でしかない状態が現在も続いているのだ。

一九八五年というのは、女性差別撤廃条約(「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」)を批准した年だ。世界的な女性解放の趨勢に媚びて条約を批准しながら、国内では性別役割分業を推進する第三号被保険者を創設したのは、家庭基盤充実政策という名の家庭内福祉推進、つまり社会保障制度の大幅縮小の流れに沿ったものだった。

国民年金制度の被保険者のうち第三号被保険者は、一一三三万人(一昨年度)。免除された保険料は年間で一兆八〇八二億六八〇〇万円になる。この数字は個々人にとって何を意味するか。

社会保険未加入の零細企業で四〇年間働いた女が、国民年金保険料を四〇年間払い続けると、六〇〇万円余支払うことになる。六五歳になってから支給される年金は八〇万円弱。八〇歳まで受け取るとすると、約一二〇〇万円だ。彼女が制度から受ける恩恵は差引六〇〇万円。彼女はそれに加えて、国民健康保険の保険料もずっと支払ってきたし、死ぬまで支払う。

かたや会社員の妻で四〇年間専業主婦をしてきた女は、年金保険料を一度も払わずに六五歳から年金を受け取ることができる。その金額は四〇年間働いてきた女と同じ八〇万円。彼女が制度から受ける恩恵は一二〇〇万円になる。また彼女は、健康保険の保険料を一円も払わなくても済んだ。

第三号は「奥さん」へのご褒美制度である。国家の基盤としての家族を強化し専業主婦を礼賛し、それによって女性労働を安価に抑え込むという、いともわかりやすい女性差別政策なのだ。

年金制度はその性格上、社会保障的な役割を持っている。改革すべき点は第三号を筆頭にいくらでもあるにもかかわらず、そこに手をつけようとしないのは、「第三号」存在がこの国の基盤としてまだ手放せないためだろう。女は結婚しろ!子どもを産め!家庭にいろ!そのほうが得だ!という、色褪せたようでまだまだ使える呪文として。

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