更新日:(2004/02/15)
[コラム] 養老孟司『バカの壁』を読んで
今年の正月、養老孟司氏の『バカの壁』を読んだ。題名からしてもっと軽い本を予測していたが、ものの見方・考え方について鋭い洞察を含んだ本だと、読んですぐに気づいた。多くの点で示唆に富んでいたが、私なりの解釈で印象に残っているのは(手元に本がないので正確ではないかもしれないが)身体性の疎外と、「個性を伸ばせ」ということの欺瞞という2点
刺激のインプット・アウトプットが身体を通過しない。私の甥っ子たちは目の前が海だというのに夏休みになっても泳ごうとしない。子供のときから身体的経験が乏しくなっている。刺激が乏しければ自ずと感情の起伏も乏しくなるというもの。無気力、無感動もうなずける。養老氏いわく、都市というのは、意識の産物らしい。頭で描いた設計図によってつくられていく。圧倒的多数の人間が都市で生活し、脳の中でインプットとアウトプットを無限にめぐらせる。実態のない世界になっていくのも無理はない
養老氏は、「個性」というのは身体に備わっているものだという。わざわざ「個性を伸ばせ」とまわりからとやかくいう類のものではないらしい。むしろ「相手(その個性)を理解すること」が大切だという
この本を通じて、身体を通して感じ、考えることの重要性を改めて感じさせられた。身体に根ざして考えていればおエライさんたちの誤魔化しにも騙されることはないかもしれない。(S)
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