[社会] 不当配転と戦う組合員を不当逮捕
6月のビラ張り弾圧に続いて争議中の組合員宅へ突然の家宅捜索
「今、警察が家に来てる!どうしよう?」昨年一一月二〇日、孔官堂分会長Aさんから電話が入った。長引く闘争の中、前夜の団交での会社の対応は、相変わらず不誠実なものであったが、次回は「社長の出席を確約する」との文書を取り付けることができ、「とりあえず一歩前進した」と彼女と喜び合い、上機嫌で大阪・梅田の駅で別れた翌朝のことだ。
広瀬書記長と相談し、「令状がある以上、捜索は避けられない。容疑・名前・押収物を確認する」ことを伝え、「事務所も一応対策をしておこう」と、本部事務所に向かった。六月には組合員がビラ張りの現行犯で逮捕され、箕面事務所に捜索が入ったばかりである。「いったい、うちの組合をどうする気やねん!」と思いながら事務所に到着。すると、すでに一〇名ほどのおまわりによるガサ入れが始まっていた。
上司の不正告発への嫌がらせで不当配転
お線香製造卸販売の老舗、轄E官堂闘争の発端は、事務職で採用されたAさんが食堂へ不当に配転され、食堂閉鎖後に工場へ再び配転されたことによる。この配転は、上司による業者との不正取引を通告したことへの口封じの為の嫌がらせであり、全て自分の意のままに決める、戦前の使用人感覚そのままの増田社長の独断によるものだった。このような社長の胸先三寸の人事異動が「老舗・孔官堂」では日常茶飯時に行われており、食堂への配転=退職勧奨の意味合いがあることも、社員の誰もが知っていた。そのためか、配転先の食堂では従業員同士のいじめや嫌がらせが横行し、それを苦にした社内での服毒自殺未遂があったことも、会社はこの間の話し合いの中で認めている。
その後は、社長の放漫経営による経営悪化に伴い、食堂を廃止。Aさんは工場へ再配転させられた。その当時の孔官堂の工場労働者は、ことごとく事務職員と差別されており、食堂で使用する食器を分ける、制服を支給しない、暖房をつけない、などの事が行なわれていた。しかし、会社に意見しようものなら、嫌がらせをされ、辞めざるを得なくなり去って行った仲間を目の当たりにし、労働者は長年我慢を強いられてきた。
このように、世間でもその名をよく知られた「仙年香」「松竹梅」など孔官堂商品は、「虐げられた労働者」の手により作られていたのだが、この前時代的な個人商店的な経営は、決して老舗・孔官堂の昔からの体質ではなく、現在の三代目「アホぼん」社長・増田久弥に代替わりしてから行われるようになったようである。事実、会社前での情宣活動の折に声を掛けてくれる近所のお年寄りや、古くから取引のある卸業者から「先代の社長は人格者やったのに、今の社長になってから孔官堂はあかんようになった」と聞かされたのは一度や二度ではない。その「アホぼん社長」が自分の言いなりになる取り巻きだけを周囲に侍らせ、経営を思うままにし、結果的には本社工場を閉鎖するほどの経営悪化に陥らせている。そして、この孔官堂の経営体質は、責任を明確にせず不誠実な団交を繰り返す会社の対応そのものだ。
組合弾圧に反撃するぞ! 皆さんからのご支援をお願いします
この日の捜索は、「芳薫堂ビルに侵入し、ポストにビラ入れをした」とする建造物不法侵入容疑で、Aさん宅、北合同本部事務所、高槻事務所にも及んだ。本部事務所では、借家人である一村さんが、「北合同領域以外の捜索は令状範囲外である」と抗議をし、最低範囲の捜索で済ますことができた。高槻事務所では、小沢府議事務所との境界を確認した上での捜索ではあったが、フロッピーと毎週発行のニュースの送付一覧を押収された。Aさん宅では、自宅全てが捜索され、関係文書の入ったファイルをはじめ、手帳、電話帳に至るまで押収した上、本人を令状逮捕とするという暴挙が行なわれた。一報には耳を疑った。「警察は彼女が何をして、今後何をする可能性があると思ってるんや!」
即刻、西警察に急行し「軽微な容疑で、主婦でもある女性を逮捕するとは何事だ!」と抗議行動を行った。その後、Aさんは府警本部に移送され、その日は一泊することとなった。逮捕当日は中北弁護士が、二日目には稲垣委員長が接見に行ったが、なぜか委員長の接見後にバタバタと釈放の手続きが始まり、夕方には本人は自力で高槻事務所に戻ってきた。比較的元気な様子の本人から、捜査の様子を聞いた後、その日の拡大執行委員会では、今回の弾圧に関して、徹底的に抗議運動を展開していくことを確認した。
さっそく次の日、小沢府議同行で公安委員会への苦情申し立てを行なう。「誠実に対応する」とのことであったが、後日、「今回の逮捕は手続きを経たもので問題なし」との回答があった。同時に大阪府警に抗議文を持参したが、こちらは受け取りを拒否された。また、孔官堂前での情宣の継続の他、逮捕容疑の舞台である西区土佐堀通りに面した芳薫堂ビル前では、「このビルに入っただけで逮捕された!」との街宣とビラまきを続けているが、道行く人の反応は良好である。先日は人権擁護委員会へ人権救済の申し立てに出掛けたが、当番の人権擁護委員は「自分では手に負えない」と判断し、法務局職員に交代。内容を説明したところ、「警察には『一般市民に誤解を与えるようなことはするな』と度々言っている。新聞記事にまでなっていることも考慮し、府警監察官室によく調査をさせ、人権侵害があれば勧告を行なう。時間を欲しい」とのこと。ぜひとも公正な判断を期待している。また、法律相談枠に空きがあるとの勧めで、当番弁護士に捜索〜逮捕へのいきさつを話すと、「この内容から判断すると、不当逮捕は間違いない。拘留の理由も必要性もない。警察のやり方は時代錯誤も甚だしく、組合に対する弾圧であると思う。国賠訴訟を検討すべき」と力強いアドバイスをもらった。今後は、新聞への投稿、マスコミへの働きかけを進める予定にしている。
当の孔官堂との交渉だが、逮捕後初の年末の団体交渉は、孔官堂の用意した会場の隣室を、近くの海老江派出所が使用している、という偶然とは考えにくい状況の中、出席者は相変わらず安井取締役と、書記役に徹する淡路工場長のみであった。議案に関してはいつも通り責任があいまいな回答を繰り返し、「不毛である」と判断し交渉打ち切り。現在は地労委への斡旋申請の準備を進めている。
また、家宅捜索を受けた各々の国賠訴訟の準備をし、大川弁護士の呼びかけにより、弁護団も結成されたが、打ち合わせの中で、「提訴により本人への再捜査、再逮捕の可能性が大いにある」とのアドバイスで、断念せざるを得ない状況である。提訴に伴い他の労働組合や、言論の自由を侵されたという観点から、市民団体への賛同署名の呼びかけ準備をしていたが、提訴断念の中では論点がボケるため、執行部では他の方法での問題提起を模索している。
今回を含め、昨年からの一連の大阪府警による弾圧を、組合は決して放置することはできない。目的は組合つぶしであることは間違いない。こんなことで北合同は屈しない。大きく世間を巻き込んで、弾圧に対する闘争を展開していくことを執行部の一員として約束する。皆さんからの支援をよろしくお願いしたい。
連絡先
▼北大阪合同労働組合・本部/大阪府豊中市岡上の町二─ 五─二八 田口ビル二F/電話〇六─六八四六─八三〇二