2000年 12月15日
通巻 1063号

 20世紀は「人を殺した人間は死刑になるべきか」という問いに答えないまま終わろうとしている。自分さえよかったらいい、家族さえ無事であったらいい、という意識が実は通り魔殺人を生み出している。

 人間が生命系の一員であること、植物に支えられる動物の一員であること、私は宇宙の塵だという、そんな「内なる確信」が生まれた時、初めて殺人はなくなるのだ。

 近代の人間は不安を持つことによって近代人であった。近代の不安を越える「内なる確信」が形成されていないことによって、命を実感できない少年犯罪が生み出されている。少年法の改正=厳罰化によっては少年の殺人事件はなくならない。次の世紀には、国家という普遍性のないシステムに死刑制度=殺人の合法化を許しておくわけにはいかない。

 世界を変革する唯ひとつの方法がある。それは「子どもの育て方を変えること」である。これは奉仕活動を義務化するということではない。18歳になったら1年間、農業に従事することを義務付けることでもない。

 生命力を発見することを通じて自発性が発揮できる場、生命の厳しさを通して自立した人間を育てる場、生命の多様性から他者を認める感性を育む場として、農業・農村が役割を果たす21世紀が始まる。国家を打倒する志は、少年を生かすことによって「資本の運動・民族の情念」を越えるのだと思う。 (I)

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