2000年 9月25日
通巻 1055号
オリンピック開会まじかのオーストラリアで農場まわりをした。この時、メルボルンで太平洋の経済人が一同に会するフォーラムが開かれていた。街頭ではフォーラムに反対するデモが組織され、警官隊との衝突が繰り返されていた。テレビ中継はもっぱらこのニュースに集中しており、ビルゲイツが演説している画面に向かって「このウソつき!」とつぶやいていたオーストラリア人の言葉が印象に残っていた。
オーストラリアの農村では、EUへの畜産物輸出が制限を受け、その上州政府による保護政策が撤廃され、弱い州の牧場が次々と倒産に追い込まれている。
もともと牛はオーストラリア大陸にいなかった動物で、ここ100年くらいでヨーロッパから導入されてきた。したがってこの大陸の風土には適合しておらず、牛糞を分解するバクテリアも非常に少ない。この結果、牧場開発が生態系攪乱の大きな要素になっている。
こうした事態を批判する人々も確実に存在しており、「パーマカルチャル」の理念を共通のキーワードとしながら、反グローバルスタンダードの政治運動に連なっている。
オリンピックの開会式で政府が見せた「民族の和解」−アボリジニの聖火点灯−という演出は、150ヵ国からの移民複合国家である彼らの困難と限界を逆に見せつけた。環境と民族と政治の方程式は、ここでも難解だ。 (I)
[back]
このページは更新終了しております。最新版は新ページに移動済みです。