2000年 8月15日
通巻 1051号

 先日オーストラリアから種子保存に取り組むNGOの人がやってきた。14年に及ぶ活動のなかで、すでに太平洋地域の在来種5000種以上の保存を行ってきたという。保存方法は貯蔵だけでなく、一番重要なのはその土地に根づいた種を、その土地の人々が作り続けることだという。オーストラリアでは、これを園芸家といわれる人々が担っている。農業経営を取り巻くこれら数千人もの園芸家層の分厚さによって、在来種保存の運動は成長してきた。

 今世界の種は危機にさらされている。生命操作技術とDNAを解読すれば特許という経済システムのなかで、各国各企業は競って遺伝子組み替え種子の開発を行っている。日本でも、中央競馬界のアガリを資金にして、稲の遺伝子組み替えが進行している。

 スイスの大学で開発されたベータカロチンと鉄分を多く含んだ稲は、発展途上国の栄養不足の子ども達に向けて作られたという。第3世界から植物遺伝子を略奪し、栄養不良の子ども達を作り出している側が、それでまた一儲けという魂胆である。

 日本の遺伝子組み替え稲もまた、アジア市場をにらんでいる。こうしたバイテク技術格差は、さらに富の不均衡を生み出すだけでなく、環境と生命系にとっての脅威を生み出している。

 日本のガーデニングブームは、オーストラリア発のアジア種子保存運動に何を学ぶか、考えてみるのもいい。     (I)

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