2000年 5月25日
通巻 1044号

 新農基法の成立にともない「食糧自給率目標」が政府より示された。現在の40%を10年先には45%に引き上げるという。このような手法は歴史上初めてのことであるらしい。国境障壁を限りなく下げていくというWTOの仕組みに依存しつつ、農産物の輸入量を削減していくという政策は、はなはだ困難だ、という印象はまぬがれない。

 例えば韓国のミニトマト、キュウリ、パプリカなどの輸入が急増している。通貨危機のさなかに生まれた金大中政権は、外貨獲得が至上命令であるにしても、円に対するウォンレートの下がっていることが農産物輸出に拍車をかけている主要な要因であることは明らかである。

 このような世界にあっては、日本の経済があと10年間下降し続け、韓国が上昇し続ければ円の相対的な地位が下がり、その結果自給率は上がるという単純な話になっている。為替相場によって自給率などはたやすく変化する仕組みの中で、日韓両国の農民が振り回されることになる。

 シアトルのWTO閣僚会議がNGOの抗議行動の中で決裂したことは、地域で生活する人々の勝利だった。WTO体制によって農業・環境・人権が脅威にさらされるというNGOの共通理解は、国家を超えて地域が連携する流れを作り出している。自給の思想は「環境と平和」という21世紀のテーマに沿って主張されるべきものだ。 (I)

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