2003年9月25日
通巻 1156号
メキシコ・ユカタン半島の突端に出現したリゾート地カンクン。欧米資本による巨大ホテルが立ち並ぶホテルゾーンから橋一つ隔てた旧市街に世界各地から31万人のデモ隊が集結していた。WTOカンクン閣僚会議に対する抗議のデモ行進は、ギラギラと太陽が照りつける炎天下、旗、横断幕、楽器が入り混じって、もう一つの世界を主張する人々の熱気であふれ返っていた▼俯瞰すれば、これが現代世界の縮図なのかもしれない。近代的設備を整えたホテルゾーンに集まる各国指導部とそのとりまき連中。クーラーの良く効いた会議室で利害の調整に余念がない。橋には銃を構えた軍隊と戦艦が彼らの世界を防衛している。そのらち外の炎天下で声を上げる人々▼カンクンの閣僚会議は、ブラジル、中国を中心としたG21の予想外の強い抵抗で、欧米の妥協案が葬り去られる結果となった。日本の姿はどちらにも見えず。その本質が対米追随であることを露呈したのみ▼しかし、カンクンに集結した人々の想いは会議の行方とは別の次元にある。自分達の生活が、国家の利害で踏み潰され、押し殺され続けて来たという無念さ。自分達の生活は自分達でつくっていくという気概。人間は貨幣を食べて生きてはいけないという叫び▼デモ隊の誰れかれなしに、自分が収穫したオレンジを切って、黙々と手渡していたメキシコの年老いた農民の姿が、その全てを物語っていた。 (M)
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人民新聞社
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