2003年 3月5日
通巻 1137号
キューバが自給国家への実験を進めている。ソ連の崩壊と支援の途絶、アメリカの経済封鎖と続いた90年代初頭、近代農業と国際分業体制からの転換を図り、食糧とエネルギーをどうやって確保するかが緊急の課題となった。
ミミズ堆肥センターを各地に建設、微生物肥料の開発によって窒素源を確保。天敵防除を復活させ、土着菌を利用したバイオ農薬・天然殺虫剤の生産を始める。トラクターに代わって牛耕を復活させ、牛耕用のカルチベーターづくりのために鍛冶屋を再開させる。大規模国営農場を解体し協同自給農場とし、単作から輪作・混作へと転換。首都ハバナ220万人の都市住民は自給運動を起こし、野菜の100%自給と30%の食糧自給を達成。とりあえずは餓死者を出さずに危機を乗り越えた。さらに種子保存のネットワークを立ち上げ、在来種の確保・拡大に取り組んでいる。
農業大臣の収入が農民の3分の1であるという政治倫理が前提としてあり、アメリカが危機を増幅させたことが、自給の原動力になっている。アメリカがソ連崩壊に合わせてマクドナルドとケンタッキーを緊急援助すれば、カストロ体制は崩壊したという冗談もあながち外れてはいないようだ。日本の有機農業が始まって30年を越えるが、いまだ1%の生産量に満たない現状からみると、学ぶべきことは多い。
(I)
[ 「ぷりずむ」へ戻る ]
人民新聞社
このページは更新終了しております。最新版は新ページに移動済みです。