2001年 10月15日
通巻 1090号

 マルクス主義理論の翻訳や内外の社会主義思想研究で知られる石堂清倫さんが9月1日に亡くなった。97才であった。今年7月に出版された「20世紀の意味」(平凡社)を読んでこれは石堂さんの遺書だなと思ったが、本当にそうなった。20世紀の社会主義運動を総括し21世紀の未来を展望した会心の著作である。

 深くは読み切れていないが、ソ連型社会主義の崩壊後、マルクス主義理論の再生作業として、石堂さんはこの10年間に結実した成果の一つに田畑稔氏の「マルクスとアソシエーション」を取り上げている。新しい革命理論として「階級矛盾の非暴力的解決」「国際関係の道徳的・論理的規範による非暴力解決」の展望がひらけたとする新思考である。

 今の同時多発テロとアメリカのアフガン空爆の現実とは矛盾するようだが、冷静に考えればこれら暴力的解決になんら未来の展望はないのだ。国際関係も世界経済も戦争という暴力的手段では何も解決できない時代になったのだ。

 石堂さんはグローバリゼーションに対抗しうる民衆の抵抗形態として、地域を基盤にした国民的規模の「知的道徳的改革」を提唱している。民衆の次元から考える新しいアソシエーションの形成というわけだ。21世紀に希望を託した遺書である。            (F)

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人民新聞社

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