書評 |
『BLUE GOLD ──独占される水資源』(モード・バーロウ 著(市民フォーラム2001 訳)現代企画室・900円+税) |
2001年 10月15日
通巻 1090号
近年、日本のどこかで渇水騒ぎが起こるのが恒例になったかの感がある。反対に、ヒートアイランド現象にともなう都市の集中豪雨も(「排水」一辺倒になりがちの「治水」行政がそれに拍車をかけている)また然りである。カルキ臭やらトリハロメタンなど、水質の問題や、長良川河口堰問題などに表される公共事業の名の下での環境破壊、ハイテク工場による地下水の大量消費など、水体系にまつわる問題点が次々と明らかになってきているのではなかろうか。 世界に目を向けてみれば、水不足や、衛生的な水が手に入りにくいだとか、一部の富裕層に水資源が独占され、「水はカネのある方へ流れる」と言われる状況にある。さらには、こういった水にまつわる状況の悪さをビジネス・チャンスととらえ、コカ・コーラなどの国際資本が、世界各地の飲料水「市場」(水は既に立派な商品なのだ)を席巻しようと世界各地を飛び回っている姿を、先日のNHKスペシャル『ウォーター・ビジネス』でご覧になった読者もおられると思う。また、この春(日本で)成立した改正水道法の「改正」点である「水道事業の民間委託の拡大」も、国際資本からの要望に応えるものだという話を聞いたことがある。 水―人間にとって必要不可欠であり、また同時に身近な存在でもある水。山から海に至るまで大きな生態系を形作り、我々の文化・歴史にも少なからぬ影響を与えてきた水。それが、今グローバリズムの波に翻弄されようとしているのだが…。 《本書では、水の私有化の現状を報告し、社会の不平等、病気、食料不安、環境破壊といった広い分野への影響を分析し、この問題に対する政府、市民によるアクションを呼びかける。また、世界中の政府や地域社会が行動を起こす際に必要となる共通の価値観として、水を保護する十箇条を提案する。》
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人民新聞社
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