五輪招致失敗で「テクノポート大阪」計画
完全破綻

磯村市長は辞任し、地下鉄・北港テクノポート線
を即刻断念すべし(2)

2001年 7月15日
通巻 1082号

「911億円のムダ使い」・「『テクノポート計画』と大阪五輪」

◎大きな大きな「ツケ」

664億円のムダ  夢洲―舞洲連絡橋

 大阪市は、招致費用に53億3200万円使ったと公表している(ちなみに派手な招致活動が批判の的になった長野五輪の場合、総額25億円)。しかし、「五輪招致」を錦の御旗に支出された税金はこれにとどまらない。
 その最大のムダ遣いが「夢洲―舞洲連絡橋」だ。メイン会場予定地であった夢洲と選手村建設予定地の舞洲を結ぶ橋としてすでに昨年完成している「夢洲―舞洲連絡橋」は、世界初の「浮体式旋回可動橋」として、マスコミも大々的に紹介し、その完成を祝った。「浮体式旋回可動橋」なるものは、橋そのものが海上に浮いており、通常は両岸2基の海上橋脚部で係留固定されているが、船が航行するときには舞洲側をピンで固定し、夢洲側の浮体橋梁をタグボートで曳航して橋を90度旋回させるというもの。総工費664億円が使われた。
 しかし、この橋には道路が繋がっておらず、今後の使用は全くめどが立っていないのである。
 大阪市は10万人収容のオリンピックメインスタジアムは600億円でできるとしてるが、それよりもっとお金のかかった橋を無人の島にかけたのである。
 これら五輪招致関連のムダ使い、締めて911億円。

【解説】「テクノポート大阪」計画

 「テクノポート大阪」計画は、北港地区の舞洲・夢洲に南港地区の咲洲コスモスクエアを加えた3地区から構成される。先端技術開発機能、情報・通信機能、国際交易機能、文化スポーツ・レクリエーション機能、住居機能などを併せ持つ「新都心」として構想された。
 現在ワールドトレードセンター(WTC)やアジア太平洋トレードセンター(ATC)、大阪港トランスポートシステム(OTS)などが第三セクター方式で運営されているが、いずれも大赤字となり、市の財政を圧迫している。


地下鉄・北港テクノポート線

 「五輪開催に欠かせない都市基盤」とされ、すでに着工されているのが、北港テクノポート線=オリンピック地下鉄線だ。直接工事だけでも1870億円(大阪市港湾局)と試算されているが、これまでの地下鉄の建設実績と桜島との連絡線建設による追加費用などを考えあわせると、3800億円(「いらない連」による見積)にものぼる巨大事業だ。
 オリンピック地下鉄線は、コスモスクエア駅から新桜島駅まで大阪港の埋立地7.5キロを走る地下鉄線で、(株)大阪港トランスポートシステム(OTS )が営業する予定。(株)OTSは、大阪市が51%を出資する第3セクターの会社で、「南港テクノポート線」としてすでに大阪港―コスモスクエア―中ふ頭の3.7キロの区間で営業しているが、これが大赤字。建設費880億円のうちトンネル構造物など基礎部分(520億円)は市が建設し(株)OTSが無償で占有しているにもかかわらず、路線開業以来(株)OTSは毎年15億円(累積50億円)近くの赤字を出している。利用者が少ないからだ。
 一方オリンピック地下鉄線沿線である舞洲、夢洲は現在常住人口ゼロ。大阪市は、5000億円〜6000億円をかけて夢洲に5万人都市をつくるという大規模公共事業計画を持っており、オリンピック地下鉄線着工は、その第1弾といえる。大阪オリンピックを隠れ蓑にして進めてきた地下鉄建設だが、磯村市長は、未だに建設を諦めていない。

 

◎「出ケツ」止まらぬ大阪市財政

地下鉄線は、お先真っ暗
 
 大阪市は4兆7962億円の借金(2000年資料)を抱えて破産寸前である。この大部分は、企業会計。高速鉄道事業(地下鉄)、大阪港の埋立を行っている港営事業、下水道事業などが含まれているのだが、この借金は「大阪テクノポート計画」による無謀な開発によって加速され、今も出血が止まらない状態である。ここでは大阪湾岸地下鉄を運営する(株)OTSを見てみる。
 すでに営業している部分だけでも、(株)OTSは改善見通しのない赤字を抱えているが、オリンピック地下鉄線の経営見通しもお先真っ暗だ。最大の不安要因は、夢洲・舞洲に建設予定の住宅が売れるのかという問題だ。夢洲・舞洲はゴミの島。焼却灰を埋め立てており、ダイオキシンなどの猛毒物質を含む焼却灰が、工事によって大気中に飛散し、環境への影響が懸念されている。地価の下落が続く大阪で誰が、ゴミの島の上の住宅を購入するだろうか 実際、大阪市自身も、6万人の入居にはかなり時間がかかると認めており、その間地下鉄は、カラ運転に近い営業を続けねばならないのである。
 大阪市営地下鉄の路線別の経営収支で見ると、黒字は御堂筋線だけであり、他の路線は赤字である。沿線に人口の集積のある大阪市内陸部の地下鉄の収支ですらこの実状にある。人口密度の低い此花区と、埋立中で造成後も地下鉄を必要とするほどの人口の生じない夢洲・南港を結ぶ本線は、公共交通機関の整備の原則からも「採算の予測」からも、全く非常識と言うほかない。

 

 

◎「ケツ」を拭かない磯村市長

刻々と進む証拠隠滅


 「市役所見張り番」(代表・松浦米子さん)は、磯村市長以下51名の大阪市役所職員を詐欺・虚偽公文書作成、同行使で大阪地方検察庁に告発した。シドニーオリンピック視察に際し、ホテル代・旅費・チケット代を水増し請求したとの告発であった。市職員は、「ダフ屋から入場券を購入したために領収書を取れなかった」、また磯村市長は、「 関係者の接待などに使った」などとしているが、ここで明らかになった不正はまさに氷山の一角。招致費用=53億3200万円の内訳は、藪の中である。
 長野五輪では、大規模な証拠隠滅が行われた。招致活動に関わる記録書類を焼却するという荒技をやってのけた。大阪市では、すでにオリンピック誘致局の水増し不正支出が明らかになっている。長野五輪の2倍に当たる莫大な浪費について、市では「証拠の隠滅」の段階に入っていると考えていい。「証拠はつくらず、残さず、破り捨て」というのがこれまでのやり方。法的に保存が定められている文書でも1、2年の保管文書だと称して刻々と文書破棄が進められているのである。


インケツ磯村は辞職あるのみ

 「テクノポート計画」の隠れ蓑として進められた大阪五輪誘致は大失敗した。それでも磯村市長らは無人島に地下鉄を設置し、ダイオキシンのゴミの島=夢洲に住宅建設を進めようとしている。これは、一度やり始めたら止まらない役人の論理であり、「港湾族」を中心とする市の幹部とゼネコンなど財界の利己主義以外の何でもない。
 総額2兆2000億円の巨大開発は、破綻が目に見えている。そのケツを誰が拭かされるのかも明白だ。政治家は、結果責任を負うのが常識。オリンピック招致に失敗した磯村市長は、その一点で辞任に値する。その責任もとらず、性懲りもなく無謀な見果てぬ夢を追うインケツ市長は即刻辞任し、オリンピック地下鉄線工事をはじめとする公共工事は白紙に戻すべきである。


(おわり)

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