五輪招致失敗で「テクノポート大阪」計画
完全破綻

磯村市長は辞任し、地下鉄・北港テクノポート線
を即刻断念すべし

2001年 7月5日
通巻 1081号

住宅ローンを抱え、子どもの大学進学も控えてるのに、
「競馬で大穴」を狙ったお父ちゃん=磯村市長


◎びりっケツ

 7月14日、エル大坂で、「無謀な招致活動の責任を追及する―大阪オリンピック落選決定記念集会」(大阪オリンピックいらない連主催)が行われた。大阪市は、9年半にわたり48億円を使って招致活動を続けてきたが、118票中わずか6票という惨敗に終わった。北京が立候補を表明した時点(1998年)で予想されていた結果だが、地下鉄・北港テクノポート線建設・予想される証拠隠滅策動など残された課題も多い。
 大阪オリンピックに対し「名誉ある辞退を」と訴えつづけてきた「いらない連」(小西和人代表・釣りサンデー会長)の分析と、残された課題についてまとめてみた。


◎大阪の株は大暴落

 磯村市長は、敗因を「知名度が低く、不利だった」と語っている。とんでもない話だ。米国と並ぶ「経済大国ニッポン」第2の大都市・ OSAKAの知名度が低いわけはない。現実を直視できない子供じみた弁解である。それでも磯村市長は、「大阪の知名度向上には貢献した」などとほざいたが、わずか6票というのは、大阪の国際的評価を大きく下げたのみである。
 敗因を整理すると―

◎財政破綻

 敗因の決定打となったのは、財政問題である。大阪市はバブル崩壊後も、大規模競技施設や関連の都市基盤整備に積極路線を歩んだ。
 大阪湾の人工島に新都心を生み出すという「テクノポート大阪」計画は、1988年に策定されたが、バブル崩壊後も変更されることなく、人工島は五輪の主会場予定地となり、住宅は選手村に、地下鉄計画は五輪開催に欠かせない都市基盤と叫ばれるようになった。大阪五輪招致は、巨大開発継続の隠れ蓑とされたのである。これらの無謀な開発計画のため、現在大阪市には、起債残高(借金)が5兆2700億円ある。
  IOC評価委員が大阪を訪れた際、「いらない連」との会談で初めてこの点がIOCに明らかにされた。「大阪市は、起債公募自治体の財政評価で最低のEランク」との指摘に、評価委員代表は、「もう少し説明してくれ」と身を乗り出したという。大阪市は、この点を全くIOCに伝えてなかったのである。
  IOCは、評価項目として「五輪の遺産」をあげているが、大阪市が五輪を開催すれば、8万人収容の競技場・室内プールや地下鉄など市民に残される遺産は市の大きな財政負担となり、全体としてマイナスの遺産を残すとの評価を下している。金にまみれたサマランチらの国際オリンピック委員会にとって大阪は、甘い汁を吸える開催地ではないと判断されたのである。

【解説】「テクノポート大阪」計画

 「テクノポート大阪」計画は、北港地区の舞洲・夢洲に南港地区の咲洲コスモスクエアを加えた3地区から構成される。先端技術開発機能、情報・通信機能、国際交易機能、文化スポーツ・レクリエーション機能、住居機能などを併せ持つ「新都心」として構想された。
 現在ワールドトレードセンター(WTC)やアジア太平洋トレードセンター(ATC)、大阪港トランスポートシステム(OTS)などが第三セクター方式で運営されているが、いずれも大赤字となり、市の財政を圧迫している。


◎自家用車・タクシーはストップ

 大阪市で五輪が開催された場合、交通問題はどうなるのか?長野では、五輪開催中、五輪関係車両優先のため、一般自家用車・タクシーは通行禁止となった。五輪関係車両に道路は占有され、社員が通勤できないため休業した会社が続出したという。大阪で開催された場合、交通渋滞は、さらに深刻となる。1998年APECの大阪開催の際も大阪市内は大混乱したが、五輪となればこの比ではない。
 しかも大阪市は、交通問題に関し大阪府警と一切のシュミレーション研究を行わず、IOCに交通計画書を提出した。大阪市が本気で開催を考えるのならば、真っ先に考えねばならない問題であった。長野五輪では、全国の警察が動員されて交通規制にあたった。大阪開催となればなおさらである。にもかかわらず大阪市は、一切府警との相談なしに交通計画を提出しているのである。


◎大企業主導の招致運動

 大阪市は、IOCに「8割の市民が賛成している」とのアンケート調査報告を示した。しかし、IOCが独自の世論調査を行った結果は、賛成52%。北京92%など他都市に比べ格段に低い結果であった。施設建設で儲けるゼネコン、観光客で儲ける空港・鉄道会社、そしてホテル業界など大企業が大阪市のケツをたたいて招致運動に血道を上げた。マスコミも付和雷同した。しかしいくら煽っても市民は動かなかったのである。
 そもそも8万枚といわれる開会式チケットは、各国のVIP入場者とメディア向けに3万枚、スポンサー関連で約2万枚、海外一般向け1万枚、国内他府県一般向け1万枚程で、府下・市内一般向けには1万枚ほどしか販売されない。ほとんどの普通の市民は、最も人気のある開会式を経験することができないのである。市民の娯楽は多様化している。東京五輪の時のような市民の盛り上がりはもうないと考えるべきだろう。


◎ゴミの島に五輪は浮かばない

 今や五輪運動は、環境への配慮を欠かせない。
 日本では、PCBなどの猛毒物質が含まれていても、ゴミの上に5メートルの土を盛れば大丈夫というのが埋め立ての「常識」とされている。しかし、世界では、それをコンクリートで被覆してもコンクリートが60年しかもたない、という厳しい基準で「ゴミ」を見ている。
 愛知万博では、森を潰して住宅地にするという計画が国際万博協会から厳しいクレームを付けられ、アッという間に計画変更となった。大阪五輪メイン会場予定地であった舞洲は、未だにメタンガス排出用のパイプが林立し、ダイオキシンに劣らないほどの環境ホルモン物質が埋まっている。日本の「常識」は世界の非常識なのであり、ゴミを埋め立てた人口島での五輪開催は、そもそも無理だったのである。
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 磯村市長は、再立候補にまだ含みを持たせる発言を繰り返している。しかし、財政問題にせよ、交通問題にせよ、指摘された問題が近未来に解決する見通しは全くない。さらに、アジアにオリンピックが来るのはすくなくとも2020年以降である。それまでには、大阪市が唯一の「ウリ」としていた既存施設は、老朽化している。大阪の再立候補は、永遠に「見果てぬ夢」だったのである。

        (つづく)

※次回、「911億円のムダ使い」・「『テクノポート計画』と大阪五輪

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