長年にわたって日中友好運動を闘い、本紙にも様々な面で協力をいだだいた故・坂井雅一さん(1999年病没・享年78歳)の追悼・遺稿集「人生似幻化」が出版された。
本書は友人や遺族・親族の思い出からなる追悼集と、坂井さんが残した文章を編集した遺稿集からなっており、遺稿集は更に「豊中市議補欠選挙の記録」「日中友好のたたかい」「自治会の活動」の3部構成になっている。
「豊中市議補欠選挙の記録」は1974年5月、各政党の談合で日本共産党の候補に一本化されていた豊中市議補欠選挙に、これを批判して急遽立候補、当選して全国的にも話題になった小沢福子さん(現大阪府会議員)の選挙戦のルポルタージュである。ルポといっても、坂井さんは小沢さんを担ぎ出した当事者だったから、立候補に至るまでの裏話や経過から、当時の総評や部落解放同盟の活動家が続々と結集、一気に盛り上がっていく選挙戦の様子、危機感を持った日共が国政選挙並に幹部を投入して繰り広げた醜悪な「過激派キャンペーン」などが余すところなく活写された真迫のドキュメンタリーであり、今読んでも当時の興奮と熱気がよく伝わってくる。
「日中友好のたたかい」は、「日中友好」がライフワークだった坂井さんが、時々の情勢の変化や大阪日中の変質について書いた文書を年代順に編集したものであり、本紙への寄稿も4編含まれている。日中友好協会(正当)の中央本部役員や大阪府日中友好協会の理事などを歴任したものの、青年時代に患った重度の肺結核の後遺症で過度の運動ができなかったこともあり、坂井さんは在野の活動家としての立場を一生貫き、その立場から「夜郎自大の広言」や「排他的な馴れ合い」を批判、「大衆性」と「民主主義」を希求し続けた。本項が日中友好運動の歴史についての貴重な証言集となっているのは、そうした坂井さんの透徹した立場・視点に依っているのであり、更にそれは「自治会の活動」にも継続して見事に貫かれている。
ぜひ一読を!
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▼創生社発行/四六版・293ページ/3000円/申込は、人民新聞社まで。
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