書評

釜ヶ崎赤軍兵士 若宮 正則物語 』

(高幣 真公・著/彩流社/四六版/233ページ/1800円+税)

2001年3月5日

 通巻1070号

 彼の本領は理論や運動ではなかった。それは一見奇異に見える彼の誠実、純粋な行動であった。その例を挙げればきりがないが、警視庁機動隊舎への単独の爆弾投擲、釜ヶ崎でのラーメン屋営業、土田・日赤・ピース缶爆弾事件での真犯人証言、さらにペルー山岳への旅行などである。
 筆者は彼のこうした行動に当時の新左翼に欠けていた楽天生や奔放さを感じる。新左翼は体制を批判して反乱を試みたが、どうしてもエリートによる上からの革命という限界を感じる。それは内ゲバに端的に現れたと思う。新左翼は根本的に労働者階級への不動の信頼を持たなかったと思う。若宮の紆余曲折に富んだ人生は、労働者階級への揺るがぬ信頼を基底にしていた。
 筆者は彼の人生に新左翼の光明を見出したいと思って本書を書いた。この伝記に自分たちの青春の墓碑銘のような思いを託した。
(「あとがき」より)

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人民新聞社

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