人民新聞オンライン

タイトル 人民新聞ロゴ 最新版 1部150円 購読料半年間3,000円 郵便振替口座 00950-4-88555┃購読申込・問合せはこちらまで┃人民新聞社┃TEL (06) 6572-9440 FAX (06) 6572-9441┃Mailto:people★jimmin.com (★をアットマークに)
HOME社会原発問題反貧困編集一言政治海外情報投書コラムサイトについてリンク過去記事

アラブ民主化の影で傭兵会社設立

本紙でも 悪名高い私兵組織会社「ブラックウォーター・ワールドワイド」を取り上げたことがあり、その実態を描いたDVD『イラク・フォー・セール』も販売している。そのブラックウォーターの設立者エリック・プリンスは、それを売却して(現在Xeサービスという名前で営業)、アラブ首長国連邦にリフレックス・レスポンセス(「反射反応」の意、R2という別名でも通っている)という新会社を設立した。アラブ首長国連邦から5億2千9百万jの契約を受け、コロンビア、南アフリカ、その他の国から傭兵を集め、800人の隊員から成る傭兵隊を作った。ムスリムは同胞ムスリム殺害を躊躇するとして、隊員に入れない。同軍隊は首長国連邦内外で「特別任務作戦」を行い、石油パイプラインや高層ビルをテロ攻撃から守り、イエメンやバーレーンで生じたような民衆蜂起を鎮圧する仕事を行う。会社幹部米人が作戦指導するが、米国の法律では、米国民が国務省の許可書なしで外国人を軍事演習指導することを禁止しているので、この傭兵会社は違法の疑いがある。いわゆるITAR(アイター)ライセンスなしで外国で武器を扱っていることを追求する議員もいる。

「デモクラシー・ナウ!」のエイミー・グッドマンは、これに関して、ジェレミー・スキャヒル(『ブラックウォーター…世界最強の傭兵会社の誕生』の著者)とサミール・ムスカーチ(ヒューマン・ウオッチ活動家)にインタビューした。以下はそのまとめである。 (編集部 脇浜)


「ブラックウォーター」がUAE(アラブ首長国連邦)で「殺し屋稼業」開業

ジェレミー・スキャヒル…プリンスは、UAE(アラブ首長国連邦)の皇太子と商談して同国内に傭兵会社を作った。イラクのブラックウォーターはコロンビア人を多数雇っていたので、そのパイプを活用した。

しかし、ブラックウォーターは人種差別的で、ブルガリア人などの白人傭兵よりも、コロンビア人の給料(日給34j)は少なかった。それに不平を言うと、ブラックウォーターは、パスポートを返さずにコロンビア人をバグダッドの街へ放り出した。怒ったコロンビア人は、傭兵募集係を殺害した。そういういきさつがあり、UAEの新会社は、コロンビア人傭兵の日給を150jにした。同社の主要目的は、「UAE国内の治安維持」である。

UAE経済は、フィリピン、パキスタン、バングラディシュからの移民労働者に依存している。彼らはキャンプ生活で、労働条件も生活条件も最悪である。UAE政府は移民労働者の不満の爆発を恐れているが、もしその時に国軍で鎮圧すると国際社会の非難を招くので、エリック・プリンスの会社を使うのである。

もう一つ、「イランの脅威」がある。2001年、プリンスは、「イランがシーア派反乱を煽っている」と演説した。バーレーンは、民主化を求める民衆反乱を「イランの策動」という口実で弾圧した。米国も、秘かに「イランの工作に対抗する」として、軍隊を送り込んでいる。UAEとプリンスの会社との契約の一部は、「対イラン対策」でもある。

湾岸は、「グローバル戦争ゲーム」の地で、アフガンやイラクの戦争で金儲けする会社の本社がどんどん設立されている。ドバイやアブダビには、米国軍事産業の建物がどっしり構えている。だから、プリンスがUAEに目をつけたのは当然である。彼に協力する元FBIエージェントがいる。彼は、ブラックウォーターが殺人や拷問などで告発された時、「パラヴァント」というダミー会社を作って、アフガンの警察と軍隊を訓練する契約を得た人物である。

しかし、上院軍事委員会が、実際はブラックウォーターのダミー会社であることを調査した。この元FBIが、プリンスの新会社で30万jの給料で働いている。

サミール・ムスカーチ…UAEの人権状況は、最近ますます悪化している。我々の仲間を含め、5人の人権活動家が逮捕された。

また、昔からある民間組織、法曹協会と教員協会が解散させられた。これは、選挙権の拡大と自由を求める民衆に応えて、両協会が政治改革を求めた請願への報復である。

労働者虐待を請け負う傭兵会社

UAEは、前々から労働者を虐待してきたが、今や傭兵会社がそれを請負で行っている。現在、建設労働者75万人、家事労働者もほぼ同数いるが、彼らは、例えば、UAEの法律では違法となる就職斡旋料を取られている。UAEへ働きにくるために何千jも払ったので、借金を返すために働いている。しかも、低賃金で、労働環境は劣悪である。54・4度の灼熱の中で重労働をやらされる。

彼らは、少し不満を表明しただけでも、すぐに弾圧される。1月には賃上げでストライキをしようとしたバングラディシュ人労働者が逮捕され、追放処分となった。組合などはない。そんなものを作ろうとしたら、外国人労働者は国外追放だ。

国民は官庁に申請できるが、政治色が少しでもあれば、却下されるばかりか、弾圧される。最近の民主化運動にしても、基本的な改善を求める穏健なものだったにもかかわらず、厳しく弾圧された。UAEでは、他のアラブ諸国のような大衆運動は不可能だ。しかし、だからこそ、UAE改革の必要性が高いのだ。

地元紙はほとんど国営で、大事なことはまったく報道しない。本当のことは外国紙に頼る他はない。UAEには米政府の出先機関の他、ニューヨーク大学、グッゲンハイム財団関係の学術機関、ソルボンヌ大学などがあるので、我々は人権擁護で明確な態度をとるように呼びかけた。

しかし、彼らはUAE政府から何百万jも受け取っており、何もしようとしない。ソルボンヌ大学の経済学講師で、湾岸諸国の民主化の必要性を口にしたナセル・ビン・ガイスが逮捕・拘留された。我々はソルボンヌ大学に動きを要請したが、彼らは「大学当局とは関係ない」という立場をとった。グッゲンハイムは、中国当局が芸術家を逮捕した時はそれなりの抗議をしたのに、UAEの民主化運動弾圧や人権抑圧については何も言わない。

ジェレミー・スキャヒル…考えられる可能性として、米国や欧州の国々から見て、UAEと民営傭兵会社の契約関係をリビアへも適用できることだ。やがて、反乱勢力政府か米国に都合がよい勢力との契約が成立して、傭兵による特別作戦部隊がリビアに現れるかもしれない。

エリック・プリンスは、ブラックウォーターの5人の幹部が様々な罪で告発された直後に、UAEへ拠点を移した。UAEと米国には、犯罪者引渡条約がない。彼は安全地帯に身を置いて、米国政府に、「俺の後を追いかけてきたら、何もかもぶちまけるぞ」と脅しをかける意味で、自分がやってきた作戦の一部をリークしているのだ。UAEの皇太子はオバマ大統領と会談した翌日に、エリック・プリンスと悪巧みを相談した。傭兵問題について、ブッシュ時代とオバマ時代ではあまり変化がない、ということだ。

[HOME]>[ 社会 ]

人民新聞社 本社 〒552-0023 大阪市港区港晴3-3-18 2F
TEL (06) 6572-9440 FAX (06) 6572-9441 Mailto:people★jimmin.com (★をアットマークに)
Copyright Jimmin Shimbun. All Rights Reserved.