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「コンピューター監視法」成立 共謀罪への一里塚!

「犯罪の準備」に刑罰

ウイルス作成罪の問題点は、「作成」自体を犯罪としたことだ。ウイルスがばらまかれて損害が発生する前に、その計画や準備を犯罪としている。

ここでまず問題となるのは、ウイルス作成を警察権力がどうやって知ることができるのか?だ。つまり同法は、ウイルスを作成しているかどうかを警察当局が監視できる体制整備を含意している。さらに、それがグループ作業となれば、共謀罪に繋がっていく。

ウィキリークスは、@リーク情報を受け付け、A暗号化して転送し、B事実を確認し、C発表する、という組織的作業だ。ハッカーも、グループを作ることが多く、国家や企業の情報操作・秘匿に抗議するために、政府機関や企業のコンピューターシステムに侵入する、という社会的政治的目的をもったハッカーグループも多い。こうした国家に都合の悪い組織や行為を弾圧する根拠法となる。

誰もが反対し辛いような「児童ポルノ」やコンピュータウイルスの規制・摘発が突破口になって、コンピューター監視は強化されていく。

ウイルス作成罪の基本的考え方である「犯罪の相談や準備」に刑罰を科すことになったので、次には一般の犯罪にもこの論理が拡大されかねない。共謀罪である。ウイルス作成罪の成立は、共謀罪の必要性の根拠ともなる。実際、法務委員会では自民党の議員たちは、同法と共謀罪を切り離したことを、くり返し批判した。

恣意的運用範囲が広い

次に、「ウイルス」の定義が曖昧である。法相は、「バグ(プログラムの欠陥)があるソフトは全部ウイルス」と答弁して失笑を買ったが、バグがないソフトというものはない。つまり、PCに悪さをするソフトというのは、グレーゾーンが非常に広い。逆にいうと、それを決めるのは捜査当局であり、裁量の部分が大きいということだ。恣意的運用範囲が広い悪法だ。

さらに捜査当局は、プロバイダーに対して、通信履歴の保存を義務づけられるようになった。PC内の情報だけでなく、PCと繋がるネットワーク上の情報も、押収の対象としている。この対象範囲がどの程度の広がりをもつかは、ネットワーク技術進歩の方向性や速度に依るが、今私たちが考えている範囲を大きく越えることになるだろう。

現在は、クラウドコンピューティングが主流になりつつある。このシステムでは、各PCに記憶装置はないので、ガサイレをしてPCを押収しても、必要な情報は存在しない。つまり、ネット上に必要な情報があるので、そうした情報を押収できるようなしくみを準備している。

これまでのように令状による場所を特定した強制捜査の範囲限定は、インターネットの場合は無制限に拡大されることになるだろう。

「共謀罪」の狙いは挙国一致内閣への地盤づくり?!

いったん押収された情報は、捜査機関に蓄積されていくのだが、電子データは、大量の情報を簡単に収集・蓄積できる。このため、個人情報を守るのも困難になってきている。

インターネットは、イメージと異なり、実は匿名性が低い。インターネットを管理する機関=ICANは、米国の民間企業で、政府が直接管理しているわけではないが、メールの授受は、その経路が全て記録されているし、HPを閲覧すれば、どのPCからアクセスしたかはわかる仕組みになっている。学校や会社ならPCの特定だけでなく、操作した個人の特定もできる。

技術は進歩し続けている。盗聴法ができた時は、携帯電話の盗聴は技術的に不可能だと言われていた。しかし今や盗聴の対象は、100%近くが携帯電話である。つまり、今できないことでも、将来はできるようになると考えねばならない。

世界的に個人情報を蓄積しているのは、たぶんVISAとグーグルだろう。ユーザーの検索語を蓄積して、どういう情報を欲しがっているのかを判断し、広告を表示させるというビジネスを行っている。個人の頭の中までわかるような情報蓄積だ。

非公式な人間関係を表示させるサイト(スパイシー)もある。共謀関係をあぶり出すこともできるのである。フェイスブックもツイッターも、同様の危険を孕んでいる。

犯罪取締の階級性

「安心・安全の社会」を担保するためとして、警察=捜査当局がどんどん我々の日常生活に介入してきている。

犯罪予防のために先手を打って行っている職務質問をはじめとする強制的な警察権力の介入が日常化し、一般の人々も「安全・安心を担保するため」として受け入れてしまっている。こうした現実の中で、警察に対する「信頼」が作られている。

「安心・安全」が語られる際にやり玉に挙げられるのが、ひったくりなど路上での犯罪である。しかし、路上犯罪には階級性が孕まれている。路上犯罪は、主に貧しい人々の犯罪である。路上犯罪を取り締まることは、階級的な差別が含まれていると、犯罪学では認識されている。

例えば、100万円を得るためにある人はひったくりを試みるかもしれないが、私は大学の教師なので入試問題を誰かに100万円で売ることができるかもしれない。政治家なら、利権に入り込むことでもっと多くの金を手に入れるかもしれない。銀行の役員なら、コンピューターをちょっと操作するだけで、不正に数十倍の金を容易に手に入れるかもしれない。

許されざるものとして路上犯罪を焦点化する代わりに、社会的地位がある政治家や企業の犯罪に対しては寛容になる傾向が、階級社会にある。犯罪や「安心・安全」については、日本の中にある貧困や差別の問題とセットにしながら観ていくことが重要だ。

国会では、自民党が提案する法案を与党=民主党が丸飲みして通してしまうということが、しばしば起こっている。こうした中、コンピューター監視法と、近い将来、確実に出てくるだろう「共謀罪」は、自民党と民主党による挙国一致内閣への地盤づくりとなる可能性がある。

「共謀罪」の上程を阻止するためにも、インターネット監視法への批判を強めなければならない。

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