人民新聞オンライン

タイトル 人民新聞ロゴ 1部150円 購読料半年間3,000円 ┃郵便振替口座 00950-4-88555/ゆうちょ銀行〇九九店 当座 0088555┃購読申込・問合せ取り扱い書店┃人民新聞社┃TEL (06) 6572-9440 FAX (06) 6572-9441┃Mailto: people★jimmin.com(★をアットマークに)twitter
HOME社会原発問題反貧困編集一言政治海外情報投書コラムサイトについてリンク過去記事

2015/11/1更新

イスラエルに暮らして

“右派政権に立ち向かい、第4次インティファーダと共に歩もう”デモ
パレスチナ人への流血の弾圧の中で平和と連帯を諦めない人たち

イスラエル在住 ガリコ 美恵子

10月17日午後8時半、西エルサレムの馬広場に集合した共に歩もう<fモ隊は2千人を超えた。和平交渉を諦めたくない国民が、ハイファやテル・アヴィヴから大型バスで次々に到着し、プラカードを掲げ、掛け声にあわせて、エルサレム市民と共にヒレル通りを猫広場まで行進した。

プラカードの文句は多様だった。「インティファーダを起こす政府は家へ帰れ」「エルサレムは差別に黙っていない」「現状を変えることは可能だ」「占領やめろ」「右派政権では安全を獲得できない」「差別をやめろ」「話しあおう」「アラブとユダヤは敵として生きることを拒否する」「差別されるアラブ人と共に闘う」「恐怖と憎しみに打ち勝とう」…。

猫広場の舞台に立った司会者(ヘブライ大学の女子学生)が、パレスチナ人による暴力多発の理由を説明した。「神殿の丘へのイスラム教徒の入場制限、パレスチナ町村の道路閉鎖、ますます激化する家屋撤去に伴う追放。暴力はいけないことだ、しかし、占領下に置かれたパレスチナ人の辛抱が限界に達し、暴力として炸裂している。ここまで追い詰めたナタニヤフ右派政権が、紛争の種を作った。全ては占領に原因がある」と指摘した。

最初に演説をしたのは、アラブ人とユダヤ人の子どもたちが共に学ぶ学校〈ハンド・イン・ハンド〉の保護者二人だった。一人はユダヤ女性で、「宗教の違いによって差別することは間違いです。これからも子どもたちがともに仲良く勉強することができますように」との願いを話した。もう一人はシルワン村在住のパレスチナ男性で、「東エルサレムの住民に対する閉鎖、監視体制のために、私の子どもたちは不安な気持ちで毎日通学しています。通学途中、警察や兵士にいいがかりをつけられて逮捕されたり撃たれるのではないかと怯えています。アラブ人もユダヤ人と同じ『人』です。対等に扱われなければいけません。東エルサレムの子どもたちの暴力を力で抑える代わりに、ユダヤ人地区だけに配当されている教育資金を私たちにも組み、生徒数に合わせて学校を増やし、放課後のクラブ活動を実施してほしい」と話し、大きな歓声と拍手が上がった。

次の演説は、肌の色の濃い大学教授だった。「私はアラブ国出身のユダヤ人です。母国語はアラビア語です。今日のデモはアラブとユダヤが共に歩む≠ニいう趣旨ですが、私の中にはアラブとユダヤが共存しています」と切り出し、これも大拍手を受けた。

次の女性はこう話した。「私の父は、ヨルダン渓谷の入植地に住んでいました。父は予備役中に、パレスチナ人に殺害されました。暴力に至るまで憎しみを抱かねばならぬ、差別社会に私は問題があると考えています」―彼女の目は潤んでいた。

続いてパレスチナ女性、「パレスチナ人の行っている暴力、軍や警察の暴力も含めて、暴力は許されるものではありません。今、お互いに憎しみあって生きていますが、これは間違いです。憎しみと恐怖が暴力を呼んでいます。私たちはこれに打ち勝たねばなりません」─大きな拍手を受ける彼女の手も、震えていた。

最後は、旧市街に住むパレスチナ人男性歌手が歌うアラビア語のラップで締めくくられた。午後11時前、司会者がこう言って、デモは終了となった。「皆さん、今後もこのデモを続けていきます。次はテル・アヴィヴとハイファで行います。皆で、今の現状に立ち向かいましょう」。

挑発しておいて、抵抗受けると軍事的制圧

9月、イスラエル政府は、午前7時半〜11時と午後1時半〜2時半に、聖地・神殿の丘へユダヤ教徒が入ることを認める一方で、イスラム教徒の入場時間を午前11時〜のみと、大幅に短縮した。これに加え、ユダヤ新年、断食日、スコート(7晩8日)などのユダヤ教の祭日には、ユダヤ教徒が神殿の丘へ入ることを理由に、イスラム教徒の入場を禁じ、ユダヤ教徒の入場を優先した。これに対し、パレスチナ議長・アブ・マゼン、トルコ、サウジ、イラン、ヨルダンなどの中近東イスラム国家から、抗議・警告の声が発せられたが、イスラエル政府は無視した。

ユダヤ教徒が入場する際には、完全武装の兵士が大勢で同行する。その威嚇力は、近くにいるだけで息を呑み、誰もの顔がこわばるほどだ。礼拝にきているイスラム教徒は、完全武装軍と共に神殿の丘へ入場するユダヤ宗教右派たちに抗議の声『アラー・フ・アクバル(神は偉大なり)』を合唱する。

パレスチナ人が腹いせに一つでも石を投げれば、軍は即座に催涙弾やゴム弾の連射を行う。アクサ・モスクのドアは破られ、モスク内が煙と灰だらけになり、神殿の丘へと続く門は閉められっぱなしで、危険人物と見られる者は、路上で尋問され、時には撃たれる。

ところが、一般イスラエル人が見るニュースでは、「パレスチナ人がナイフでユダヤ人を襲い、殺害した」など、被害者意識をそそるものばかりだ。このため、このような事態が発生している本当の理由を知らない息子は、「予備兵に呼ばれれば行く」と意気込んでいる。政府は、危険事態だから軍事に金をかけることが必要だと国民に納得させ、軍事産業はまたひともうけすることができる。

10月1日、ユダヤ宗教右派らが兵士をつれてエルサレム旧市街の神殿の丘へ侵入し、イスラム教徒との間に激しい衝突が起こった。翌日金曜は、各地でイスラエル軍の暴行により多数の死者がでた。3日には、旧市街の多くの店が自主的に扉を閉め、パレスチナ自治政府議長が沈黙するなか、人民による自主的抵抗、第4次インティファーダが始まった。連日、各地でパレスチナ人によるユダヤ宗教右派や兵士に対する攻撃が起こり、軍はパレスチナの各町村を封鎖して、住民を抑圧・攻撃している。

10月20日までに、少年10名を含む46名のパレスチナ人が殺害され、数千人が怪我を負い、パレスチナの救急隊および救急車が合計136回も攻撃を受けた。怪我人の3分の1は未成年だ。

[注]神殿の丘入場に関する新法律案

2012年8月9日に発表されたが、保留となっていた。ユダヤ新年、断食日、スコートとユダヤ祭日が連続する今年9月から、この法案が施行された。

ユダヤ人の“神殿の丘”入場時間─金曜日およびイスラム教徒の祭日以外は週日午前8時から11時まで。および14時から18時と、21時から23時。また、ユダヤ新年、断食日、スコート、過ぎ越しの祭り、シャブオーット、ティシャ・べ・アブは、ユダヤ人に開放される。

上に伴い、イスラム教徒の“神殿の丘”入場時間を制限、4時から7時までおよび11時から14時までと、18時から21時までとする。イスラム教徒の祭日ライラ・アル・カデル、イード・エル・フィタール、イード・アル・アドハ、アシュラ、モハメッド誕生日、ライラ・アル・モラージはイスラム教徒に開放される。

注@…今までは、ユダヤ人は入場が禁止されており、イスラム教徒は、午前4時から夜11時までいつでも入場が許されていた。

注A…第3次インティファーダは、2006年レバノン侵攻時、イスラエル軍が西岸地区およびガザも同時侵攻し、民衆が抵抗運動を行った際のこととも、2014年のガザ侵攻の際の西岸地区や東エルサレムでの抵抗運動のこととも言われている。

一方、イスラエル側は、9人がパレスチナ人にナイフなどで殺害された。肌の色が濃いためにアラブ人だとみなされて、ユダヤ人にナイフで刺されたユダヤ人や、銃撃犯人と見られたアフリカ難民が警備員に撃たれた事件も起きている。

東エルサレムが1967年にイスラエル占領下になって以降も、旧市街にある神殿の丘はヨルダンのイスラム教指導者の管理下に置かれており、イスラム教徒以外が神殿の丘へ入る際は、モロッコ門から規定時間内のみとされてきた。モロッコ門の入り口には、ユダヤ宗教指導者が書いた「ユダヤ教徒が神殿の丘へ入ることは固く禁じられている」との標識が掲げられている。

数カ月前にも、ユダヤ人が西岸地区でパレスチナの民家に放火し、重度の火傷を負った少年以外、全家族が焼死した事件が起きている。先月には、検問所で男性兵士に身体検査をされることを拒み、女性兵士に検査されることを希望した20歳のパレスチナ女性がその場で射殺されたが、情報操作により、ほとんどのイスラエル人は知らない。

今朝も、シルワン村の一家が、イスラエル軍に追い出され、ユダヤ入植者の手に渡され、村には外出禁止令が布告された。国際法違反を承知でユダヤ人宗教右派をパレスチナ人地区に住まわせ、パレスチナ人との衝突を招かせたり、パレスチナ人の怒りを買うことをしておいて、「不審人物を撃ち殺してよい」と軍令を出したりするなど、イスラエル政府が言う「安全のため」の政策は、緊張を高めるばかりだ。

  HOME社会原発問題反貧困編集一言政治海外情報投書コラムサイトについてリンク過去記事

人民新聞社 本社 〒552-0023 大阪市港区港晴3-3-18 2F
TEL (06) 6572-9440 FAX (06) 6572-9441 Mailto:people★jimmin.com(★をアットマークに)
Copyright Jimmin Shimbun. All Rights Reserved.