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2015/9/8更新

戦争法案の強行採決許すな!
全国300カ所以上で抗議行動

8月30日、全国300カ所以上で安保法案の廃案を求める集会・デモが行われた。参加者は、国会前・12万人、大阪・2万5000人など、いずれも目標を超える人数で、同法案反対の民意を見せつけた。この日の抗議行動には、学生や若者による「SEALDs」、主婦らによる「安保関連法案に反対するママの会」、中高年を中心とした「MIDDLEs」、60・70代主体の「OLDs」などが共に声を上げた。東京・大阪・愛媛から、集会の様子を報告してもらった。あわせて、中国在住の田中弘美さんから、このデモに対する中国の若者たちの感想を紹介してもらったので、囲みで紹介する。(編集部)

※ ※ ※

「扇町公園にこれほどの人が集まったのを見るのは初めて」―大阪集会参加者の共通した感想だ。参加者は公園からあふれ、最寄り駅であるJR「天満」や地下鉄「扇町」も、人の波で身動きできない状態となった。集会では、呼びかけ人となった大学教授や国会議員らの廃案を求めるスピーチが続いた。

これほどの抗議が集まったのは、強行採決への危機感と同時に、国会審議のなかで明らかになってきた安倍政権のウソと法案の危険性ゆえだ。多くの憲法学者・弁護士連合会・歴代内閣法制局長官OBたちが、「憲法違反」を指摘し「立憲主義を否定する暴挙」としているとおり、法的には完全に破綻している。

法案の成立を許せば、自衛隊が海外で殺し殺される戦地に赴くだけでなく、敵国を作ることになる。「国内の原発や基地が攻撃目標とされ、海外で活躍するNGOやジャーナリストがテロの対象とされる可能性も高まる」(社民党・又市征治氏)。また世界のあちこちでテロを誘発し、次の世代までも危険にさらすことになる。

中国から@

平和は夢じゃないと信じています

戦争法案に反対する日本のデモや行動について、どの国の人も、平和を願う心は同じだと感動しました。私は、中学生の頃に、「火垂るの墓」というジブリのアニメを見て、主人公たちの運命に同情して涙が止まりませんでした。それ以前は、抗日戦争ドラマの影響で、「日本人は鬼だ」と誤解していましたが、初めて日本人も私たちと同じ普通の人で、戦争で大変苦難を経験したとわかりました。

今回の日本のデモについてミニブログ(SNS)を調べてみると、中国人の日本人に対する態度は大分友好的になりました。コメント欄は「日本の普通の人々も平和を望んでいるね」とか、「日本国民は政府と違う。もう一緒にはしません。日本政府は嫌いだが、日本文化は好きです」「中国人と日本人が一緒に平和のために頑張っている姿。不思議で感激します」など、ほとんどが積極的友好的な言葉です。

私は、安倍が「冒天下之不(多くの反対を押しきり、敢えて天下の大悪を犯す)」、今はどうやって政権の座から降ろさせるかも分かりません。でも、日本と中国国民たちの努力があれば、平和は夢じゃないと信じています。(周さん・大学生)

さらに、共産党の井上哲士参議は、自衛隊の軍事行動について歯止めがなくなることを指摘した。同参議の質問で、自衛隊の兵站活動には、非人道的兵器であるクラスター爆弾・劣化ウラン弾・毒ガス兵器から核兵器まで運べることが、審議の過程で明らかになってきた。

同党が暴露した自衛隊統合幕僚幹部の内部資料では、米軍との軍軍間調整機関や交戦規定や平和維持活動の拡大も記されていたことも明らかになっている。先の戦争では軍部の独走が日本を戦争に引きずり込んだが、今回の「安保法案」でも、同じ構図が見て取れる。

「戦地に行くのは自衛隊だけではない」と指摘したのは、全日本港湾労組の山元一英さんだ。自衛隊や政府から戦争協力要請があれば、民間企業労働者や医療関係者も戦争に巻き込まれる。また、法案が成立し、自衛隊員への応募が減ってきた時に備えて、自衛隊はインターンシップ制度も検討している。同制度は、民間企業新入社員教育として2年間自衛隊へ入隊させるというもので、企業への補助金や公共事業受注を餌とした経済的徴兵制と言って過言ではない。

安保法案は、審議が進むほど全国で反対の声が増している。その意味で政治的にも破綻している。憲法違反の法律をいくら議論しても合憲になるわけがない。廃案しかないのである。

「私はこの集会に、国民としてではなく一人の市民として参加している」と話し始めた劉さん(阪大・国際公共政策科)は、「安倍政権の排外主義が、私の生活を脅かすようになってきている。安保法制が成立すれば、弱い立場の人が真っ先に犠牲になる」としたうえで、「安保法案について、被害を受けるだけでなく、加害者になるかもしれないという意識で、安保法案と立ち向かっていきたい」と発言。大きな拍手を浴びた。

参加者らは「戦争アカン!」と書かれたプラカードを掲げ、市内を3つのコースに分かれてデモ行進した。

揺れる創価学会・公明党

「公明党は『支援者の理解が進んでいない』と言いますが、私たちは法案を理解したうえで反対の声をあげているのです」―創価学会員として反対運動を続ける米本有子さんのアピールだ。

創価学会内での反安保法案の動きは拡大しており、8月11日には創価大と創価女子短大の教員・卒業生らが、安保法案に反対する「有志の会」を設立。山口那津男公明党代表は、26日のBS番組で「(安保法案について)私たちの説明が支持者に届いていない。反省しないといけない」と現状を率直に認めた。共同通信の世論調査でも公明党支持層の94%が「説明不十分」としており、安保法案への不信や危惧は大きい。1600人超が署名した。声明は戦時中に弾圧を受けて獄死した牧口常三郎・初代会長に触れ、「いかなる圧迫にも屈せず、民衆のために声をあげること。これこそが創価教育の魂」などとしている。

また、安保法制反対論を掲げる憲法学者・木村草太が創価学会系雑誌『第三文明』に登場し、東京や大阪のデモでは創価学会の三色旗に「ファシズム反対」などの文字を書いたプラカードを掲げて歩く人が出てきている。また、フェイスブックなどのネット上でも、「創価学会員だけど自民党が大嫌いな人、団結しましょう」との公開グループが作られた。

米本さんは、創価大学卒業生有志による憲法セミナーを紹介し、「沈黙による自民党への同意は、平和主義と反核の信念に基づいて闘い続けてきた牧口・戸田両先生の受けられた苦難に対する不正義。日本の平和憲法の解釈変更を沈黙をもって支持することなどあり得ない」と語気を強めた。目先の短期的政治的利益に惑わされている公明党幹部への痛烈な批判だ。(編集部山田)

東京@ 「人々の塊」の中で蠢く巨大な虚無感

笠井 慎次

国会議事堂前駅を出て、私は警察の誘導通りに延々と迂回を続けていた。途中、灰色の空から雨粒が落ち始めた。予想されていたことだが、気が滅入る。8月30日の14時半過ぎだった。14時に開始予定だったデモは、既に人々の熱気に満ち溢れていた。

国会正面から真っ直ぐに延びた車道には、まさしく「群衆」と呼べる無数のデモ参加者たちが立ち並び、私が7月17日に参加した国会前のデモとは比べものにならない、見事な「人々の塊」が作られていた。私は人混みというものが大の苦手だが、この時ばかりは、「人々の塊」に何ともいえない気分の高まりを感じた。

雨に打たれながらも、参加者たちのコールが続く。それとともに、多くの楽器の音が鳴り響く。太鼓、笛、鈴、中には鳴子、サックスを鳴らしている者もいた。私は「デモとは、結局はただのお祭りではないのか」「民主主義もまた、お祭りの一つに過ぎないのではないか」という妄想に囚われることがある。

その一番の要因が、このコールだろうと私は思う。「デモ」というものの形式上、避けることができないことは、私にも理解できる。しかし、私は己の妄想を取り払うことができない。

私はいつも通り、デモコールの中で、「人々の塊」の中で、内で蠢き始める巨大な虚無に耐える他ないのだ。デモに参加するたびに、私の気分は酷く落ち込み、憂鬱になる。「政治」という集団社会の問題と接するたびに、私はなぜか、強烈な孤独を感じてしまう。

ふと思う。私は、極々一般的な日本に住む若者である。「特殊」とか「特別」からはひどく離れている存在だ。そして、そのような存在は私だけではない。私と同世代である多くの人間が、私と同じ存在である、といっても過言ではないのだ。

彼らの内にもまた、気味悪く蠢く巨大な虚無が眠っているのだろうか。集団社会に参加するがゆえに生じる孤独が、彼らにもあるのだろうか。私は尋ねてみたい。それこそが、いわゆる「政治への無関心」の正体ではないか、と私は考えるのだ。

東京A 抗議行動への配慮と社会への考察を

編集部 脇浜 義明

年金生活者にはこたえる運賃を費やして、国会前抗議行動に参加した。私と同じ高齢者、中高年者、子どもを持つ女性など、多くの人々が圧倒的に多かったのが第一印象だ。一般庶民が、安倍の戦争法案に危機感を感じて参加したというのは、本当だと実感した。民衆のうねりの一部を構成できたことを喜び、抗議集会企画者に感謝する。

しかし、人、人、人で、集会企画者の配慮が足りなかったことは、今後の運動のためにも指摘したい。

中国からA

侵略史への認識を

日本の民衆の側には平和を求める声がある一方、政界は右翼が主流です。衆議院で多くの人々の反対にもかかわらず、「安保法案」を強行採決しました。現在、参議院で審議中で、12万人規模の安保法案反対デモが起こりましたが、法制化されてしまうのではないでしょうか。

日本は民主主義国家で、異なる意見を表明することが認められます。日本民衆の大部分は、「日本の再軍事化」に反対しています。しかし、表明しているのは高齢の方が多く、若者は侵略史への認識が足りないと思います。それは、今後の中日・韓日関係に、弊害をもたらすでしょう。(パンさん・研究者)

地下鉄から出た途端に、満員電車のような過密状態だった。警察が出口を制限したためだが、押し合いでのろのろと進む。警察のロープやバスで制限され、必死に呼吸しながら半歩進んでは止まり、また半歩進むという有様だ。その間、スピーカーから、演説会場の若者の声と、政治的に利用したがる野党政治家の演説を聞かされた。「大阪からの女性」と紹介された若い声が、「一時的な暴力で発散するのでなく、民主主義的に整然と抗議を続けましょう」とスピーカーから流れ、私も含め、群衆は不快感を表した。誰も暴力的な行動などしていない。必死に会場へ向かってのろのろ歩んでいる人々に、楽な場所から説教をする無神経さに、ブーイングが出た。

私は、警察車輌の指令官らしい警官に、「明石の花火大会事故を知っているだろう。行動制限していたら、死者が出るぞ。死者が出たらお前らの責任だぞ」と抗議した。もし誰かが倒れたら、将棋倒しで圧死する人が出ただろう。

警察が参加者の動きを制限し、一定の場所に押し込む戦略を取ったことが原因だ。しかし、集会主催者はそれを予測して、当局と交渉し、道路や場所などの占有許可と、警察の警備を制限する処置をとるべきだった。整然とした抗議が目的なら、参加者が整然と行動できる余裕を作るべきである。

苦情はそれぐらいにし、民衆に安倍への不満と怒りを表す機会を与えてくれたことには感謝する。

もう一つ、若者が仕切って、年寄りが群衆として行動するパターンは、よいことだと思った。そのために、私が指摘した「配慮」だけでなく、どういう社会を作りたいかという重要な問題を、若者たちが考えることを期待する。

愛媛 「国民」の言葉が使われない抗議行動

鵜戸口 利明(映画大学学生)

「民主主義ってなんだろうなと思っています。これで本当にいいのかな?って少しでも疑問に思う方、みんなで一緒にここに立って声を出していきませんか?」

これは、学生らしき男性の呼びかけである。今や全国各地で「安保法案」の抗議運動が果敢に伸展している。「8・30全国100万人大行動」が行われた。愛媛県松山市の報告をしたい。

 「坊っちゃん広場(高島屋前)」で、社民党が演説した後、午後2時から集会が始まった。集まったのは、「愛媛県職労」「NTT労組退職者の会」「部落解放同盟」「仏教徒有志」などである。主催者発表によると、約300人が参加。松山市ではなかなかの人数だそうだ。 いろんな人たちがスピーチを行った。その中の一人を紹介する。

「永田町にいる安倍さ〜ん!国会議員の先生!今の日本は、この日本国憲法で守られてるんです。もう一辺勉強し直せ〜!バッカヤロー!!」

中国からB

希望と不安

日本の皆さん、頑張っていますね。皆さんが、地元で、あるいは国会前に集まって平和への願いを掲げたことに希望が湧きます。政府は民衆の心の声を聞かずに、自分の意思を通したら、倒されるに決まっています。みんなが一緒になれば、なんでも乗り越えられます。自分の声を出す勇気、中国人も持ってほしいです。(施さん・大学生)

私は、感謝、不安、怒りの気持ちで、国会デモのニュースを読みました。感謝は、日本で平和を支持している人が多いこと。不安は、この安保法案で、戦争を起こせる可能性が高くなること。特に、日本の隣国中国に対して。怒りは、安倍氏は自分の政治理想を実現するために、ここまでやってしまったということです。このままでは、安倍氏が軍事国家を作るのでは?と考えています。(雷さん・会社員)

ある女性の発言である。この女性には、8・30の前々日ぐらいに高島屋前で出逢った。誰も見向きしない中、独りで坂口安吾の『戦争論』を朗読していたのに感銘を受けた。曰く、「やらずにはいられなかった」という。集会では、憲法9条と99条を読み上げた。

ちょうど1時間で集会は終わり、次は4時半頃から大街道の愛媛銀行前で、愛媛大生ら若者を主体として抗議行動が行われた。

坊っちゃん広場で行われた集会が、運動家たちの励ましあい、モチベーションを確かめあう内輪なものだったのに比べて、ここでは、外に向けられていた。少ない人数で、土地柄の現れた穏やかな口調で、都会的な熱狂はないものの、ほとんどの人が素通りしていくなかで、たまに声援を送ってくれる人が現れると、元気づけられた。

スピーチやコールを聞いていて気づいたことがある。坊っちゃん広場における年輩主体の集会では、やたら「国民」という言葉が出てくるのと対照的に、大街道の若者の中からは、恐らく一度も国民という言葉が使われなかった。これは、東京の抗議行動とのギャップであった。

コールで締めくくろう。

「戦争法案絶対いけん!」「戦争なんて、よ〜やらんわい!」「集団的自衛権はいらん!」「民主主義ってなんだ?」

東京B] 「集まること」の次の行動を

遙矢当

この日、東京は、秋雨のような細かい雨が降りました。国会議事堂に向けて三々五々「9条」のフリップを抱えるデモの参加者たちが集まります。13時半に地下鉄で国会議事堂前に降り立つと、カラフルな幟が沿道を囲みます。待ちに待った「9条」「非戦」「安倍政権」に対する思いをぶつけるその日だからです。

安倍首相は官邸には不在で、5q離れた自宅で過ごしました。この12万人の声を聞くかどうかは、一政治家としての彼の「良心」の問題です。

印象としては、11年の「脱原発」をはるかに超えた規模でした。今回のデモは、国家としてのアイデンティティを問うものであることを思い知りました。それだけ関心が高く、危機感が人々を揺り動かしたのでしょう。

沿道から伝わる切迫感とともに、見たことがないような人の数ゆえ、知り合いを探し出そうという気持ちも湧きませんでした。参加者に話しかけようとも思いましたが、参加者の「気持ち」「想い」に圧され、叶いませんでした。

集まった人たちの「想い」は、これからどこを目指せばよいのでしょう。移動中にツイッターで、こんなメンションが私宛に飛んできました―「デモから廃案までの戦略やプロセスが全然見えないので、誰か説得力のある説明をしてほしいものです。日本人は『がんばれば神風が吹く』みたいな根性主義にすがりつきやすい国民性があるので、それが目的やその実現のための戦略を見えなくさせてると思いますよ」(@conisshow)―。

ここに、今回のデモの本質があるのかもしれません。確かに、デモそのものが「目的」になってしまうのであれば、それは体制側=安倍政権の体の良いガス抜きに成り下がってしまうのは事実です。

「集まること」は確かにできました。私たちは次の行動が求められているし、起こす必要があります。私は、あらためて「集まるだけでは満足していない」意思を明日から示していきます。

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