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2015/5/8更新

いま欧州では

パレスチナ連帯運動 オーストリアとドイツに招待
ガザで重傷を負った人たちを治療

つぶされた「コンボイ計画」

ウィーン在住 近藤 悦子

昨夏の惨事

まず、昨年夏のガザ攻撃について、記憶を新たにする必要がある。そもそも、イスラエルには定期的にガザを攻撃する、いわゆる「芝刈り」という習慣がある。言い掛かりを付けて2年に1度、攻撃するのだ。特にハマスが政権を取った2006年以降の過酷きわまる封鎖で、ガザは窒息寸前であった。

しかし、ファタハとハマスの暫定統一政権が2014年6月に成立、これに苛立ったイスラエルは、報復として入植地への住宅建設を承認。6月11日には、ガザを空爆して2名殺害。一触即発の情勢となる。

その直後、西岸地区で、3名の入植者の高校生が行方不明となり、イスラエルは、西岸地区で400名以上を逮捕し、2000戸以上で家宅捜索、10名(子ども3名)を殺害。7月6日からは、ガザ空爆が始まり、8月26日の無期限停戦合意まで続いた。パレスチナ側の死者2200名以上、負傷者1万人以上である。

患者引き受けと物資搬入

この攻撃のさなか、夏期休暇を返上してガザの野戦病院に入った1人の若いオーストリア人医師がいる。彼は、帰欧後9月、「オーストリア・パレスチナ医師と薬剤師協会」など11の団体と共同で、ガザで重傷を負い手術もままならない患者を、オーストリアの病院で、無料で治療する計画を立ち上げた。合計20名の受け入れを目指した同計画では、ガザに医療品を送っていた「オーストリア・アラブ協会」が、ヴィザ発行手続きを担当し、無料で治療を提供する幾つかの病院も確保した。

11月には、ドイツの「ドイツ・パレスチナ医師・薬剤師会協会」など5団体も、賛同を表明。ドイツ側は60名の受け入れを目指すこととなった。

これと平行して、エジプト経由で援助物資を運送するコンボイ計画も立ち上った。エジプトを経由するにはエジプト政府の認可が必要である。このため著名な政治家・学者・文化人に賛同を求めたが、全員拒否した。これには理由がある。例えば大学教授。いかにガザ爆撃の犯罪性を承知していようとも、発起人になったら最後、ユダヤ系学者の圧力で教授会で孤立、締め出し、キャリア断念は必至となる。「正義に命は賭けられない」というわけだ。

ユダヤ系が有力なショービジネス界で活動する芸術家も同様だ。緑の党は、オーストリアのユダヤ人コミュニティが後援しているので問題外だし、社民党は、第2次大戦後、元ナチス党員を改悛させて党員として受け入れた歴史がある。ユダヤ人社会から反セム主義と名指しされれば、政治生命は絶たれる。コンボイ計画は、立ち往生してしまった。

広がる人々のネットワーク

クリスマス。エジプト軍部クーデター以来、ムバラク時代よりも過酷な封鎖が続いているラファの検問所が、やっと開いた。エジプトは、今やイスラエルの同盟国だ。800戸の家々を破壊して検問所付近に無人地帯を作り、イスラエルと共同でガザ封じ込め政策を行っており、人と物資の通行を徹底阻止し、病人や怪我人も例外としない。

やっと開いた検問所を通り、6名の重傷者がカイロ経由の飛行機でウィーンに到着した。酷寒の中欧に、素足にサンダルを履き、なかには目、耳、唇、内臓、四肢が損なわれ、手術やリハビリに1年以上かかる人、ミサイルで片足を引きちぎられた時に、2人の兄弟も同時に失った人もいた。家族の付き添いもなく、言葉も通じず、空港内の救急要員に付き添われ、彼らは生まれて初めてガザ以外の地を踏んだ。

不安と困難は至る所にある。話せる言葉はアラビア語だけ。ドイツ圏の主力食品=豚肉は食べられない。1日5回は無理としても、礼拝はどうする?ウィーンの国立病院内にモスクはあるが、他にはない。ウィーン内の2病院とリンツ郊外の病院には、アラブ系の医師や看護師がいるが、首都から200q離れたシュタイヤーの病院にはアラビア語の通じる人はいないし、アラブ人コミュニティもない。完全看護とは言え、言葉の壁、文化の壁が幾重にも立ちはだかった。

唯一の生命線は携帯電話である。幸いウィーンには、大きなアラブ人社会があったので、通訳の24時間分担表を作って対応した。また、アンケート用紙に自由になる時間や曜日を書いてもらい、提供できる能力も登録してもらった。アラビア語のできる人、郷土料理を作れる人、洗濯できる人、何もできないけど、お見舞いに行ってニコニコして手を握れる人…。

集団懲罰を容認する世界

彼らがウィーンに来て3カ月が経った。3月28日には、報告会を兼ねたカンパ会が行われた。新たに来る患者と交代でガザに帰る人もいるのだ。民族舞踊ダプカも登場して、賑やかな壮行会となった。多額の渡航費などの捻出に、舞踏団やバザーも活動している。家族が待つガザは、懐かしい故郷だが、同時に恐ろしい環境の故郷でもある。薬も電気もない生活に戻るのである。封鎖は過酷さを増し、漁師が軍艦からの砲撃で殺されてもいる。イスラエルとの戦闘は、いつもながら単に「それが、いつ始まるか」だけの問題である。

2度のインティファーダ(第1次・1100余名、第2次・約3000名の死者、いずれも何年間もの間に)や、熾烈を極めた2006年のヒズボッラとの戦いですら、死者は1000人台だった。わずか50日間で2300余名の死者という昨夏のガザ攻撃が、いかに徹底的で容赦のない殲滅作戦だったか。

しかし、彼らは降参しなかった。命のほかに失う物がなかったのだ。封鎖による人間の誇りの剥奪、惨めなゆっくりとした死か、今すぐの死か。ガザは、イスラエルだけを敵にしたのではなかった。世界中が敵であり、アラブ諸国も沈黙を通した。ガザの人たちは、世界中の人間の沈黙と無関心と闘い、傷ついた。怪我人、病人すら閉じ込めた檻のようなガザ。この封鎖の1日も早い陥落を望む。

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