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2015/4/29更新

川内原発、いよいよ決戦局面─313q「塩の行進」
九州電力に再稼働のボタンを押させない

再稼働阻止全国ネットワーク   「川内の家」  岩下  雅裕

川内原発(鹿児島県)再稼働が佳境を迎えている。高浜原発(関西電力)の運転を禁じる仮処分決定(福井地裁・4月14日)に続き、鹿児島地裁は、運転差し止めを求めた住民の仮処分の申し立てを却下(4月22日)。再稼働をめぐる司法の判断は、2分している。

これを受けて再稼働阻止を訴える人々は、「主敵は九州電力」と見定めて、様々な抗議行動を計画している。川内の家・岩下雅裕さんに現地の様子と今後の行動計画を寄稿してもらった。2面・「原子力規制委公開ヒアリング」と併せて読むと、再稼働のデタラメさがよくわかる。(編集部)

※ ※ ※

川内原発はいま、規制委員会の使用前検査が本格化している。九電は「7月初旬にも再稼動」と皮算用している。まさに決戦局面だ。昨年の4月初め、薩摩川内市に「川内の家」を開設してから、一年がたった。そのころ九電は、「夏にも再稼動」という勢いだった。思えば疾風怒濤の一年であった。

簡単に振り返れば、@規制書案とパブコメに対応する「大宣伝」、A薩摩川内市と県の再稼働「同意」への反対行動の期間があった。そして、鹿児島の「3・11実行委」は昨年12月、Bこれからは「主敵は九電」と名指しし、再稼働を現地・現場で阻止する段階、と規定した。

「同意」阻止できなかった鹿児島―川内の闘い

「川内の家」の主な活動に即し、流れをたどってみよう。

一つは、到着してすぐ週刊『川内の家ニュース』を発行した。これを使って、住民への語りかけ、話し込みが目的であった。基本そのものだが、川内の「内」にこもりがちな運動構造への危惧が背景にあった。

二つは、同じく4月、井戸川克隆さんを招き、薩摩川内市といちき串木野市で避難問題をクローズアップした。これは、10月の県主催の「再稼働説明会」反対行動に、少しは貢献できたかもしれない。

三つは、7〜8月、「3・11実」のパブコメ期間中の「大宣伝」方針に即応し、「辻説法」プロジェクトを立ち上げたことだ。2週間にわたり8市を巡回、「福島の女たち」の木幡さんと黒田さんは炎天下、65カ所で辻立ちしてくれた。

四つは、9月の「再稼働していいの?『52円』の住民投票」運動の立ちあげである。8月、山之口自治会が再稼働反対の陳情を市議会に提出したことが発端だ。最終的には4自治会が合流、「新しい人」「新しい運動」を顕在化させた。後に木原壯林さん、木幡さんを招いたのべ4回の講演会・座談会には、計80人の住民が参加した。

こうして、Aの再稼動「同意」反対行動に向かった。薩摩川内市議会での大抗議行動。県庁では玄関わきにテントを建設、まる一週間、庁内を縦横に動き回った。しかし、国―県―市が一体となった早期「同意」の動きを覆せなかったのは残念だ。伊藤知事は最近、「県議選で再稼働を争点化させないため、迅速な『同意』を目指した」と、得意げに回顧した。

「主敵は九電」─現地・現場で闘うとは?

Bの「主敵は九電」、現地・現場で阻止する段階というのは、この流れを挽回する渾身の行動となる。「3・11実行委」は、まず緊急署名運動を呼びかけた。「30`圏の全ての自治体において、九電はみずから住民説明会を開け」という内容だ。

実は九電は、原発建設依頼、一度も直接に、広範な住民に説明責任を果たしたことがない。原発推進という「国策」のかげに隠れ続けてきたのだ。行ってきたのは、一方的な広報活動の他、推進派が牛耳る自治会への「説明会」。有力者などへの「訪問活動」だけだ。戸別訪問はこの1年弱で1万3千余人にのぼるが、県民の1%に満たない。つまり、再稼働推進のオルグ、推進派の組織固めでしかない。

説明会要求署名運動の趣旨は、「原発が安全だというなら、直接、広範な住民に説明してみろ」ということだ。署名は1カ月半で、10万筆を突破した。他方、各議会に出した同趣旨の陳情には、3月中で6つの自治体が採択・特別決議で応えてくれた。

署名を持参した3月2日の九電本店交渉は、5時間に及んだ。とはいえ、原発は危険、避難は不可能という従来の文脈では、九電の確信犯的な再稼働の方針を突き崩せなかった。「社長みずから署名を受け取れ」と繰り返したが、交渉に当たった広報担当者は拒否、退席を許してしまった。

まさに九電の会社としての社会的責任を問い詰めることなしには、またそれを具体化する本店での戦術なしには、突破できないことが判ったのである。まさに、九電の再稼働という会社方針、その強い意志そのものを撤回させなければならない。第2ラウンドは、5月27日3時からと決まった。

九電行動を盛り上げる313`のデモの提案

「本店での戦術」とは次の行動を含む。まず、@批判の筋道を立てるべく、あらかじめ公開質問状を出すこと。また、A3月2日に散見された本店内外の行動の連携不足、店内での行動の不徹底は改善が必要だろう。参加した方々には、「やりきった」という気持ちで帰っていただかねばならない。

それとは別に、B「九電本店に向かう戦術」が必要である。例えば、鹿児島市から博多の九電本店に至るリレーデモだ。かつてガンジーは390`の「塩の行進」を行い、インド独立に向かう全国的な市民的不服従運動の端緒を開いた。私が提案したいのは、鹿児島―熊本―佐賀―福岡の4県を貫く、3号線沿い313`のコース。5月27日の九電交渉がゴールである。おそらく11泊12日の「行脚」となろう。沿道で各地の脱・反原発団体、多くの住民の皆さんと交流・討論し、九電に矛先を向ける行動を拡大することが主眼だ。

九電交渉のほか、6月7日の福岡・3万人集会―デモの準備が進行中である。「3・11実行委」も、もちろん全九州や全国の仲間たちとともに参加する。言ってみれば、6・7は報道を介した間接的な九電への影響力の行使、5・27は社長を引っ張り出しての直接的な働きかけ、という差異があるかもしれない。その両者の有機的な結びつきが、再稼働まで数カ月という局面で重要になっている。

再稼働「Xデー」に向かうため何が必要なのか

さて、再稼働「Xデー」において、私たちはどのように行動し、それをどう準備すべきなのだろうか。

3月末、「オキュパイ大飯の乱」というVTRを観る会を行った。12年の大飯原発再稼働にあたり、野田内閣は閣僚を派遣。それを阻止すべく、若者たちが原発の外側からバリケードを構築した。ドラムが途切れることなく叩かれ、700人による封鎖、占拠、阻止行動は33時間も維持された。

観賞のあと出た意見は多様である。「長時間の行動には音楽のリズムが必須」、「川内原発周辺で『ピクニック』をやって地の利を探ろう」、「同年、普天間基地でも複数のゲート封鎖行動があった」、「何回も、いろんな場所でVTR上映会をやるべきだ」―等々である。

実際これを契機に、ある労働NPOは、総会で再稼働反対の決議を上げ、上映会を行うことを決めてくれた。まだまだ、やるべきことは多い。

昨年6月の鹿児島・天文館集会だったと思う。「3・11実」の事務局長は、「ここに集まった人の中に卑怯者はいませんよね」と問いかけた。一瞬の沈黙があり、そして満場の「オー!」という声が応えたことを覚えている。彼はもう一言、問いかけるべきだったかもしれない。「嘘つきはいませんよね」―と。「再稼働阻止」と唱える限り、本気で、全力で、川内原発再稼働を阻む準備をしなければならない。

「非協力」つらぬく現地・現場での闘いの概念

《再稼働阻止》という概念は、極めて単純なように思える。

川内原発も一つの「有機体」であるとすれば、ヒト・モノ・エネルギーが供給されなければ機能が停止する。

3月のVTR上映会で議論されたのは、市民的抵抗―非暴力直接行動という概念であった。これは先述の、@間接的な影響力の行使、A直接的な影響力の行使の、ほか、B非協力、そしてC非暴力直接行動の、4ランクに分節できるという。

たとえば、これまでの原発ゲート前行動は、集会をもち、申入れ書を九電に渡したが、ヒト・モノの出入りには「協力」するものであった。すなわち、第2ランクの行動である。その定着した行動の上で、さらに何を実行する意志とつながりを鹿児島―全国の枠で形成できるか、がこれからの課題であろう。

私たちに残された時間は、まだ数カ月ある。福井地裁の高浜原発再稼働を否とする決定は、大いに励ましとなった。4月22日には、鹿児島地裁で差し止め仮処分の申し立てが却下されてしまった。私たちにできることは、反対世論をさらに拡げ、準備を怠らず、最後は現地・現場で抵抗しぬくことである。

川内が再稼働の一番バッターに指名されたことは、鹿児島の社会と運動が「なめられた」と受け止めざるをえない。私たちは、川内で先ず再稼働を止め、全国の人々、そして各原発現地の方々への責任を果たしたいと思う。

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