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2015/4/7更新

時評短評私の直言

解雇し放題の規制緩和
「金銭解雇」導入ではなく企業の解雇権を制限すべき

フリーター全般労組・山口 素明

政府の規制改革会議は、3月25日に「『労使双方が納得する雇用終了の在り方』に関する意見」をまとめた。「意見」は、解雇問題の解決について「解決までの期間や解決金がまちまちで、紛争解決の予測可能性が低い」と総括し、労働者の「選択肢の多様化」を図るべきだ、と言う。

この知らせを聞いて、私はある組合員の解雇事件を思い出した。自動車販売会社の従業員だった彼の仕事は、納車や下取りのために関東一円を走り回ることだった。早朝6時に家を出て、週6日ときには7日、携帯メールで入る会社からの指示に従い、顧客の車の下取りに向かうのである。5〜6カ所の取引先をめぐり、最後の車を指定された営業所に落とすころには21時を回る。そこから自宅までの道のりを、一分でも長く眠りたいと時速130`で飛ばして彼は帰っていた。

その彼が解雇されたのは7月。前日夜に急遽入れられた営業ミーティングに休日をつぶされ、気分がふさぎ、無断欠勤した2日目のことだ。早朝、ガンガンと叩く音に応じて戸を開けると、「部長」が立っていた。「キーと携帯を持って表に出ろ」と言われるままに従うと、すでに彼が社用で使っていた車の後輪タイヤは取り外されレッカー車につながれていた。「部長」は彼からキーと携帯を奪うと、「クビだからもう来るな」と言い残して去った。

あろうことか、その後会社は7月の給与すら支払わず、彼は困窮に直面した。彼はアルバイトを探し、半年近くにわたって個人で社長への面会と給与の支払い、解雇の取り消しを求めたが、会社はそのいずれにも応じなかった。その後、彼は私たちの組合と出会い、未払い賃金の支払いと解雇の撤回を求めて会社と交渉をしたのだが、結局、生活問題から半年相当の解決金の受け取りで和解退職を選択せざるを得なかった。

およそ一年にわたって紛争が長引いたのは、紛争解決のための「多様な選択肢」が彼になかったからだろうか。また、彼のようなケースは特殊なものだろうか。

いずれも違う。規制改革会議は、頭から間違っている。「紛争解決の予測可能性が低い」のは、何より企業側の解雇権の濫用が野放しにされているためだ。どんなに理不尽な理由でも、解雇権はとにかく一方的に行使される。司法はあくまでも事後的に救済を行うものだから、不当解雇に対抗するためには、まず生活を犠牲にしなければならない。さらに、とりわけ非正規労働者には、労働審判や地位確認訴訟に踏み切る費用を負担する資力がない。弁護士の着手金だけで30万円。これを負担できないのは通常のことだ。

「意見」はさらに、裁判を通じて「解雇無効」となった時は職場復帰となるが、「その判断は企業に任されているため、必ず実現できるとは限らない」と言う。これこそが「紛争解決の予測可能性が低い」理由ではないか。解雇権は労働者の関わらないところで一方的に行使され、救済手段は事後的に費用のかかる形でしか与えられず、さらに救済そのものも不当解雇した企業側の判断次第というのであれば、労働者にとって予測可能性が低いのは当たり前だ。

ほんとうに「予測可能性」を高めるのであれば、やることは明確であろう。解雇権を全般的に制限することだ。解雇の合理性・妥当性の事前審査、事後の救済手続きへの労働組合の参与、そして「解雇無効」の判断については復職を絶対の条件とすること、などがそれにあたる。辞めるのはいつだってできるのである。

「金銭解決の選択肢を付与する」ことは、解雇権濫用を助長するだけだ。

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