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2015/1/22更新

移住労働者の日曜日

貧困・劣悪な労働条件の中支え合って生き抜く人々

雨傘革命の目的である「普通選挙」から外れながらも、民主主義・人権を訴える視点からは欠かせない存在である移住者の人々。どのように香港社会を生き、雨傘革命についてどう考えているのか。移住者に焦点を当てた現地での一日をベースに報告する。(編集部・ラボルテ)

※ ※ ※

移住者支援NGOで働いている友人に、「日曜日に連れていきたいところがある」と誘われた。待ち合わせは、「中環」(セントラル)という香港の金融街だ。最大の占拠地域、金鐘(アドミラルティ)から歩いて20分ほどである。

「どうしてこんなところに?」なんて考えながら中環駅を出ると、目の前に広がっていた光景は、路上を「占拠」している無数のフィリピン出身の人々だった。その光景は、地下鉄の構内から歩道の奥向こうまで広がっている。場所はオフィス街の一等地。ご飯を持ち寄って食べていたり、歌やダンスをしていたり、クリスマス前ということもあるのか、フリーマーケットのような形で、路上にたくさんの雑貨やバック、おもちゃが売られていた。友人と待ち合わせしている公園にも、その光景が広がっている。数千人はいるだろう。

香港に働きに来ているフィリピン人は16万人。インドネシア人もほぼ同数の16万人が働きに来ていて、この2つの出身国だけでも合計32万人以上の人が香港で働いている(香港の労働人口は372万人)。また、繁華街の夜市に使うテント設営などの現場仕事で、パキスタンなど南アジア地域から来ている人を数多く見た。

友人がこう話してくれた。

「日曜日のこの場所は、香港に住むフィリピン人にとって束の間の休息なんだよ。こうして集まり始めたのは、9年ぐらい前からかな。主に家事労働者で住み込みで働くフィリピンの人たちにとって、自宅は職場だから、家にいると心が休まらない。平均月収は月7万円。故郷の親族にお金を送金しているから、お金のかかるショッピングモールで長く過ごす訳にもいかない。自宅やどこかの建物に居ることができないフィリピンの人々にとって、唯一の憩いのひとときなんじゃないかな」。

ちなみに、インドネシア出身の人たちは、主に銅鑼湾(コーズウェイベイ)の路上を占拠しているらしい。

暴力と貧困の中で

友人の移住者支援NGOスタッフがチラシを配っていたり、人権侵害についてアジテーションをしている姿も見受けられた。『ウォールストリートジャーナル』によれば、「家事労働者の58%が雇い主からの言葉の暴力を経験している。37%が1日16時間も働かされ、18%が平手打ちや蹴りといった身体的暴力を、6%がレイプ、身体への接触、言葉によるセクハラといった性的暴力を受けていた。バスルーム、洗濯機やキッチンカウンターの上で寝ていると報告した家事労働者もいた」という事例が報告されている。

家事労働に従事する移住労働者には、1時間当たり30香港j(=約450円)の最低賃金は適用されない。また、故郷に残してきた家族に関して苦悩を抱えている労働者も多い。移住労働者の1人は、「娘が薬物依存に陥った。そこをマフィアに付けこまれて、死んでしまった。貧困のせいだ」と語った。

一帯を歩いていると、路上で移住労働者によるセクシャル・マイノリティ支援団体が問題の共有・議論をしていた。また、路上でのお誕生日パーティに飛び込み参加でご飯をごちそうになり、別の公園では移住者による野外コンサートが行われていた。さまざまな逆境の中にあっても、楽しむ工夫をこらし笑顔で生き抜こうとする姿があった。

「雨傘革命」については、どう考えているのか。当事者であり移住者支援の活動家にその場で聞いてみたところ、「直接的には何も答えることはできない。普通選挙は香港市民の問題であり、私たち移住労働者は関係ないのだから。ただ、普通選挙が実現すれば、間接的であれ、私たちに良い影響を及ぼすかもしれない。民主派に期待したい」と語ってくれた。

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