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2015/1/12更新

世代間ギャップ─親世代より不利

社会運動による変革に希望
会社員にとっての「雨傘革命」

現地でお世話になった香港中文大学の小出先生の元教え子であるホー・ウィンヤン・ジェシカさん(24歳)。「政治にあまり関心なんてなかった」と話す彼女は、大学卒業後、営業アシスタントとして働いている。@催涙弾が撃たれたオキュパイ現場での体験、A社会問題についてどう考えているか、聞いた。(ラボルテ)

催涙弾発射に怒り

──「雨傘革命」に関わったいきさつは?

ジェシカ…学生たちの普通選挙を求める運動が9月26日から始まっていましたが、学生たちが暴力をふるわれているのをテレビで知り、「現場を見よう」と考えたんです。

まず、9月28日の大規模行動に友人たちと行きました。たくさんの人が集まっていましたが、警察車輌を阻止しているのだと知りました。知らないおじさんが、「ここをブロックすれば、武器を積んだ警察車輌や新手の警察隊が入って来れない。ブロックして、学生たちを応援しよう」って説明してくれました。

この騒動の間に、警察が催涙スプレーを市民に向けて使用し始めていたのです。夕方6時、警察が急に黒旗を振り始めました。「何かな?」と思った直後、催涙弾を発射しました。皆は中環の方向に走って逃げました。

その場から逃れて休憩し、催涙弾を受けた人の手当をしました。一緒にきていた友人が、「学連の学生たちはまだ捕まっているし、あの場に戻ろう」と提案し、現場に戻ることにしました。

──どうして逃げなかったのですか?

ジェシカ…「人数が多く、安心感があった」のがひとつの理由です。数千人の人が、辺り一面を埋め尽くしていました。「独りじゃないんだ」って。「逃げたら、今回の運動が負けたことになってしまう」と思い、「留まろう!」と決めました。

私たちは、@前線で闘っている人の救援、A前線の人に向けて、防護用の傘をバケツリレー式に受け渡しをやりました。

前線の人は催涙スプレーで目をやられていますから、順次後方で目の手当てを受けていました。現場にいた立法会議員(香港の国会)が、「もう一度催涙弾が打ち込まれたら、中環方向に逃げてください。風向きも考えると、その方向が安全です」と呼びかけました。すると、再び催涙弾が使用されました。2回目だったからか、皆、落ち着いた雰囲気で中環の方向に逃げ、人民解放軍の庁舎前まで行きました。

夜9時になると、「重武装の暴動鎮圧部隊が、警察本部から出動する」という噂が流れました。現場に来れなかった人たちもSNSで警察発表の情報を収集し、拡散したりして、動向を注視していました。私の携帯電話にも、友人経由でそうした情報が送られてきました。

──その後の行動は?

ジェシカ…帰宅したのは、夜10時です。最寄りの地下鉄は封鎖されていたから、隣駅のワンチャイまで歩いて帰りました。

帰ることにしたのは、大勢の人が続々と応援に集まっていたし、救援物資もたくさん運び込まれていたからです。帰る人の数より応援に向かっていた人のほうが圧倒的に多かったので、「バトンタッチしよう」と思いました。

お金より「生き甲斐」

──以前に参加した社会運動はありますか?

ジェシカ…7月1日の返還記念日(香港特別行政府設立記念日)のデモに参加しました。私は政治に詳しくないのですが、デモは、「自分の言いたいことを言う」っていうスタイルのデモかな。環境問題などのさまざまなスローガンが掲げられている中で、「普通選挙」が大きく取り上げられていたので、それで参加しました。

初めて参加したのは、2年前の愛国教育反対デモ。まだ学生の頃で放課後に参加しました。「将来、私の子どもがこんな教育を受けたら嫌だな」という一心でした。

──「普通選挙」そのものに求めることは?

ジェシカ…民主的な香港になってほしい。政治や制度のせいで、私たちの世代が不利益を被っている、と実感しています。

家賃や物価がとても高い一方で、私たちの世代の給料は安い。給料があまり上がらない一方で、家賃と物価が上がり続けています。所得が上がるどころか、家賃や物価の上昇によって、実質所得が減少しているのです。最低賃金も30香港j(450円)なんです。

──ジェシカさんの月給は?また、住まいは借家暮らしですか?

ジェシカ…1万2250香港j(=18万8200円)です。会社に就職して2年目ですが、初任給は1万1500香港j。1年間で750香港jしか上がりませんでした。これでも良い方なのです。

大卒者の平均初任給は、1万香港j。ちなみに、大学進学率は3割です。大学を出ていない人は、8000香港jが平均です。

私は友人とルームシェアしていますが、家賃が8000香港j。古い物件なので、安い方です。

──世代間ギャップはありますか?また、周囲の友人はどうですか。

ジェシカ…親の世代は、「お金」を第一に考えます。「早く仕事を見つけて、早く家を見つけたら楽だよ」と私たちの世代に教えているし、そうしています。

でも私たちの世代は、自己実現したいことや趣味がある。仕事や経済的なことだけで人生を送りたくないんです。ちなみに、香港で一番の経済的価値は「家を買うこと」です。地価高騰の影響で、「家を買って、値上がりしたところで高く売る」ことを多くの人が考えています。

私を含めて、若い世代はいろんな国の人と交流して、海外経験も豊かです。また、香港を愛しているからこそ、いろんなことを考えて、良くしていきたいって考えます。

ちなみに、私の両親は上海から来ました。親の世代の多くは、中国本土から香港に移住した人が多くて、中国共産党を恐れています。海外の状況も知らないのに、「香港は上海より良い方だ」と考えている。「今ある平和を壊さないほうがいい」って。

中国共産党は強いから「何を言っても無駄」だと保守的な一方、私たちの世代は社会運動による変革に希望をもっています。

本土とのギャップ

──自分を「香港人」と「中国人」のどちらだと考えていますか?

ジェシカ…香港人です。違いがたくさんあるから。中国文化は共通している一方で、北京語と広東語という言葉や、受験制度、見るテレビ、パスポートも違う。

中国大陸出身の人と話していると、外国の人と話してる感じがします。それは香港の人が中国大陸に行っても、同じように思うのではないでしょうか。

──中国本土からの香港への観光客について。

ジェシカ…多すぎると思います。特に「運び屋」の問題。生活品を買い占めていて、地下鉄で多くの荷物を運んだりして、迷惑だと率直に思います。マナーも良くなくて、大声で喋ったりするし、人通りの多い道の真ん中に荷物を置いたりします。たぶん、中国本土ではそういうマナーがないのかな。

──これからの香港社会の進む道について。

ジェシカ…多様性のある社会にしたい。いまの香港社会は、金融と不動産のことだけに集中し過ぎているから。環境政策も積極的に取り組んでほしい。民主的な香港社会になってほしい、と思います。

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