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2015/1/12更新

労組活動家が語る「雨傘革命」

若者の未来を奪う格差社会への批判

雨傘革命に参加し、ユニクロやマクドナルドで組合活動を行うなど、さまざまな労働問題に取り組む香港の労働組合連合体・HKCTUの副委員長を務めるシゥ・キット・アレックス・クウォクさん(45)にインタビューした。

クウォクさんは、若い頃ニューヨークで働いていたが、香港に戻り、労働運動に参加。水難救命士として働いていた時には、待遇改善を求めてストライキを打ったこともある。このストには香港全土で働く300名以上の組合員が参加したという。

金鐘(アドミラルティ)占拠中は、占拠地での泊り込み・占拠地自主管理を貫いたクウォクさんに、雨傘革命への関わり、評価などについて聞いた。(ラボルテ)

* * *

──労働組合・工党(労働党)として雨傘革命に参加した理由は?

クウォク…香港政府は、住民ではなく不動産開発企業に奉仕しています。いま、香港では、公営住宅への入居倍率が高くて、なかなか入ることができません。一方で、一般の住宅は、投機の対象にされて、とても高額になっています。公営住宅を含む公共部門や社会部門が市場化され、利潤を生み出す源泉と見なされているのです。公営住宅は、賃貸としてではなく、ローンによる買い取りが推進されています。政府は、廉価で環境の整った公営賃貸住宅の供給に力を入れていません。

@トング・ファング(房)…狭い部屋に複数名が居住できるよう、部屋に置かれた二段ベッドや三段ベッドを、檻ないしゲージのようなもので仕切って作った住居の総称。檻の中のベッドが生活空間の全てであり、極めて不衛生で違法物件。私が活動現場で話した現地の保守系メディアも、「人権侵害」と断言していた。

Aバンカンフォン(板間房)…住居用に貸し出されているビル・マンションのフロアに対し、本来よりも多くの人の居住を可能にするため細かく個室化した違法物件の総称。ベッドと僅かな家具を置くと、部屋がいっぱいになってしまう。また、個人用のシャワーとトイレがあるものの、ロッカーほどのスペースである。「住まいの貧困」を象徴する言葉。

B貧困・格差…香港政府は、こうした主張を恐れている。梁行政長官は、「香港市民が立候補者を自由に指名できるようになれば、平均月収1800米j(約19万2600円)以下の住民が選挙プロセスを支配する恐れがある」と発言した。

C自由の広場…インタビュー中、中年の香港人が何か抗議をし、それに同じく泊り込みを行っている労組員が応対して、説明していた。そういうことが毎晩オキュパイ広場で繰り返されているという。まさに「自由の広場」だと実感した。また、クウォクさんは、さまざまな占拠地内のトラブルや暴力に走ろうとする人々に対して、制止を促す独自の警備チームを組織していた。無線機で仲間と連絡を取り合っている光景も、印象的だった。

DSNS…ブログやツイッター・フェイスブックなどの社会的ネットワークサービス。

その結果として、公営住宅への入居待ちが7〜8年という状況を生み出しています。トング・ファング(※注@)やバンカンフォン(※注A)といった住まいの貧困、人権侵害だと断言できる状況で住まざるえない香港住民が多い一方で、空き家がたくさんある、という矛盾があります。

香港全体に言えることですが、家屋が「居住」のためでなく、「投機」の対象となっているのです。香港は極めて大きな格差社会であり、雨傘運動はそれへの批判だと理解しています。

──今回の占拠に加わったいきさつは?

クウォク…私は、《警察やごろつきから若い人々を守ること》を自分の任務だと考えて、毎日泊り込みを行っています。泊り込みを始めてから、自宅に戻って睡眠を取ったことは一度もありません。

毎晩、さまざまな問題がこのテントに持ち込まれてきます。とても繊細な問題から、「なんでこんなトラブルに対応しないといけないんだ?」と思えるようなくだらないことまで。「自由な広場なのだから管理するな」と、いわれのないケチまでつけられます。しんどいし、ストレスがたまることは確かですが、終わるまで自分の任務を全うします。ちなみに、先日はトラブルに巻き込まれて逮捕され、保釈中の身です(このインタビュー直後にも彼は路上占拠の首謀者として逮捕された)。

「普通選挙」は解答ではなく社会変革の一つの手段

──普通選挙によって変えるべき社会問題とは何ですか?

クウォク…学生は、「民主的な選挙」という形で問題提起をしていますが、社会問題、貧困や格差に対する訴え(※注B)を大きく含んでいます。学生の演説の中にも、「普通選挙が実現すれば、社会問題は解決できる」との言葉がありました。若い人々が社会意識をもってこの幹線道路を「自由の広場」に変えたことが大切で、ここから種々の取り組みが生まれてくるでしょう。

──日本では「普通選挙」が実現していますが、多くの社会的問題が未解決のままで、人々の政治的関心は低い状況です。普通選挙の価値とは何でしょうか?

クウォク…香港の政治は、例えれば「とてもアンフェアなゲーム」となっています。普通選挙そのものが解決にならないことは、ニューヨークの滞在経験からも理解していますし、普通選挙そのものに大きな期待はしていません。

これはあくまでも社会問題解決のための一歩であり、本当の民主主義への出発点でしかありません。公平な普通選挙は「ゲームのルール」に過ぎません。

例えば労働者には「団体交渉権」が法的に認められていません。この問題をどういう形で解決するのかは、民衆個々人がデザインを持ち合ってきて、幅広く討論しながら決めていくべきだ、と考えています。

──金鐘の占拠者の中には、「資本や富裕層への批判」より、中国本土からきた人間そのものの否定(レイシズム)やポピュリズムに走る社会運動グループが見受けられました。このグループをどう考えていますか?

クウォク…私自身は賛成しません。しかし、このオキュパイは「自由の広場」(※注C)であり、彼らの存在や参加を排除はしません。オキュパイのテントは2800あるんですよ。ここには、さまざまな考えを持った人々が参加しているのです。ここでの原則である「平和的な運動」を守り通していきます。

──これからどのように運動を進めていきますか?

クウォク…香港人は基本的に保守的です。ゼネストのような急進的な抗議運動を組織するのは、厳しいでしょう。民衆の権利意識を向上させる「教育」運動が必要です。議員を活用した方法もあれば、SNS(※注D)や地域の組織活動、街頭情宣などさまざまなソフトな手段を通じて、意識の変革を促していきます。

クウォクさんが所属する「香港職工会連盟」(HKCTU)は、親中央政府系の労働組合連合体(組合員38万人)に次いで、香港で第2位(組合員12万6千人)の組織を誇っている。対議会では民主派政党・工党(労働党)との繋がりが深く、インタビューにあったテーマに加えて、最低賃金引上げ、団交権の法的確立の要求などを課題としている。

また、団交権が認められない香港において個別企業に目標を獲得する手段として積極的にストや企業前デモを行うといった、活動的な労働組合だ。加えて、移住労働者との連帯を積極的に図っている。労働環境として劣悪なケースに置かれることが多く、ビザでの課題や社会保障サービスから排除される立場に置かれているからだ。

僕が現地でお世話になった同世代の友人も、HKCTUで専従として働き、香港籍労働者のみならず移住労働者との連帯をしばしば口にしていた。彼(女)らの活動に敬意を表したい。(ラボルテ)

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