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2014/11/23更新

イスラエルに暮らして

イスラエル在住 ガリコ・恵美子

イスラエル兵の自殺/パレスチナ人への殺害・リンチで精神障がい発症

イスラエル兵の自殺は以前から多かった。20年前、私の友人の弟も兵役中に地中海に面した崖に立ち、銃でこめかみを撃ち抜いた。

2012年の軍の公式発表によると、「91年から93年までで39名/年、00年から02年までは33名/年、09年から11年は23名/年。ここ10年間で237名の兵士が自殺しているという。通常このような統計は一般公開されない。しかし、15日間に平均1名の兵士が自殺していることを、ブログで暴露したイスラエル人がいた。彼は早速、当局に呼び出され、兵士の自殺を追及して軍機密を漏らさないようにと忠告を受けている。

少し古い記録になるが、『もしアメリカ人がこれを知ったら』サイトによれば平均して年間37名が自殺している。04年は2名の兵士が練習中に銃の操作間違いで亡くなり、3名が侵攻中にパレスチナ人に殺害され、5名が軍の装甲車の事故で亡くなり、18名が普通車の事故で亡くなっているが、同時期に行われたパレスチナでの軍侵攻中に40名の兵士が自殺している。また、この夏にガザへ侵攻した陸軍エリート部隊員3名が、停戦と同時に次々と自殺した。2人はガザ撤退と同時にガザ境界線を越えた地点で自らに向けて引き金を引いた。もうひとりは単身でイスラエルへ移民し兵役に就いていた。ガザ攻撃に赴いた後、2日間行方不明になって軍服姿で死体が発見された。死体の横には彼の銃があった。このニュースを見てガザの男性は言った。「普通の神経をしていれば、あんな残酷なことをしたあとで生きていくことができないのは当然だ」。

自殺する兵士はガザ侵攻に直接関わった者だけではない。今年7月末、イスラエル北部で予備役に招集された男性は、基地到着後に自らの銃で自殺している。ガザ侵攻中は軍医療部に100名以上の兵士が精神障がいを訴えている。また、電話で受けた相談は1000件に及ぶ。軍医療機関の報告によるとセラピーを受けた兵士の80%は、戦闘部隊へ戻ったという。軍精神科の主治医は、戦闘継続が可能になるように対応し、戦闘から外すことは精神状態を悪化する可能性があるとしている。また軍の統計によると、463名の兵士が戦闘員復帰不可の認定要請を提出し、93名にPTSD(※注@)が認められた。

兵士は自衛だと信じて、ガザ侵攻も西岸地区侵攻も行う。しかし、実態は老人や子どもたちを殴ったり殺したり、拉致したり、眠っているパレスチナ人の民家の窓へ催涙弾を投げ込んだり、新ユダヤ人住宅地・農地にするためにパレスチナ人の家屋を壊して土地や農地を破壊していく。この罪悪感に悩み自殺に至るという例が多いようだ。

パレスチナ人の「テロ」

10月22日、パレスチナ人が運転する車が東エルサレムにある入植地近くの路面電車の駅で入植者めがけて暴走し、生後3カ月のユダヤ人の幼児が亡くなり、けが人が多数出た。職場の同僚が、「今、テロがあった」と携帯電話で車が駅に乗り上げているニュースを私に見せた。「アラブ人の考えていることはわからない。過激だ」と言い放ったが、職場のパレスチナ人たちは黙ったままだった。

24日、私は金曜礼拝の様子を見に行った。朝から付近は軍により閉鎖され、50歳以下の男性は旧市街へ入ることが許されず、彼等は門横で一斉に路上礼拝を行っていた。この週はヨルダンのイスラム教指導者団体が来ていたが、彼等も旧市街外の路上で礼拝した。同日、昼の路上礼拝が終了した後、ダマスカス門外で文句を言った少年が、警察に地面に押し倒された。縛られる瞬間を写真に撮った私に気づいた警察官は後ろを振り向き、私に殴りかかろうとした。逃げると「こっちへ来い。買女!」と怒鳴られた。この件について、法律に詳しいイスラエル人に聞いたところ、「公共の場で起こっていることを撮影することは違法ではない。警察が暴力を振るうことは違法であるが、警察官が来いといえば行かなければならない」のだそうだ。少年に暴行を加えていた警察に、私は殴られても仕方なかったというわけだ。(左上写真下参照)

アル・アクサ寺院を完全封鎖/神殿の丘を軍靴で冒すイスラエル軍

シオニストであるユダ・グリックは神殿の丘の2分割案を強行する企みで軍を連れてイスラム教の聖地へ侵入し続け、世界中のイスラム教徒の反感を募らせている。

ナブルスのフワラで、ユダヤ人がパレスチナの児童をひき逃げした29日、東エルサレム在住のパレスチナ人=モアッタズがユダ・グリックを銃撃して重傷を負わせた。するとイスラエル政府は即時に同時にアル・アクサを完全閉鎖した。67年以来はじめてのことである。これに対し、アッバス議長は『宣戦布告しているのも同然』だとイスラエルに忠告した。パレスチナ自治政府スポークスマンはこう加えた。

 「エルサレムでのパレスチナ人による暴力の責任は、イスラエルにある。アクサ寺院の完全閉鎖はこれをさらに煽っている」。

モアッタズは、翌朝警察に射殺された。家族の話では、彼は毎日働き詰めのおとなしい青年で無実だという。グリック射撃の犯人とされ軍に

殺された青年は、ユダヤ人街の市場で働いていた。私の職場の人たちは、「日常生活の場である市場にテロリストがいたなんて恐ろしい」と口をそろえて言っていた。

11月3日、イスラエル軍は東エルサレム各地で攻撃し、20名の身柄を拘束した。5日、再びイスラエル北部に住むアラブ人が、電車を待つ人々に車で突っ込み死者2名とけが人数名をだした。犯人はその場で射殺されたが、即座に、300名の兵士が神殿の丘へ侵攻。土足のままアクサ寺院へ侵入した。67年以来、初めてのことである。軍は東エルサレム各町村へ侵攻した。抵抗する地元の少年たちによる投石で激しい衝突が夜中まで続いた結果、パレスチナ人19名が負傷。西に住む私のアパートでも夜中遅くまで、軍侵攻による発砲音が連続して聞こえていた。

同日ベツレヘム付近でパレスチナ人が3名のイスラエル兵にけがを負わせたが、軍が犯人の住む地域を攻撃した。

7日の金曜礼拝時、35歳以下の男性に対する外出規制および道路封鎖が行われた。民家の窓へ糞尿を撒き散らし、催涙弾を発砲し、深夜まで軍は各パレスチナ町村で攻撃を続けた。明け方にはナザレで軍が侵入し、連行されかけた従兄弟をかばおうとした22歳の男性が兵士に殺害された。

パレスチナとイスラエルのニュースの両方を知っていれば、追いかけごっこに見えるだろう。しかし、パレスチナ人が犠牲者の場合は、イスラエルのニュースにならない。

パレスチナの怒りの原因を知る由もなく、「パレスチナ人はテロリストだ」という思いを強める。

イスラエル社会モラルの崩壊

イスラエル社会で暴力は強く取り締まられている。家庭や学校で暴力を振るう親や教師は刑務所行きだ。暴力はいけないことを幼稚園からしっかり習う。しかし、兵役に行くと、丸腰のパレスチナ人を相手に暴力をふるえと命令を受けたり、殺す必要のないものを殺害したりリンチに合わせたりした後で、罪に問われないと、それまで培ってきたモラルや価値観に矛盾を感じるのは当然のことである。

ギドン・レヴィがハ・アーレツ新聞(10月23日)でこんな記事を出した。『アパルトヘイトの首都・エルサレムは夜明けを待っている』―パレスチナ人の大規模逮捕、入植者による暴力、政府がらみの土地・家屋の略奪、追放、軍の夜間侵攻の続く東エルサレムで起こった車両乗り入れ事件に驚くパレスチナ人はいない―。

右派のイスラエル人からは、「裏切り者」などと呼ばれ嫌われているギドンであるが、彼のレポートは的を得ている。兵士の自殺が増加していることも含め、パレスチナ人の怒りは全うである。

これを正面から受け止めることを、いまイスラエル政府も国民も問われている。

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