人民新聞オンライン

タイトル 人民新聞ロゴ 1部150円 購読料半年間3,000円 ┃郵便振替口座 00950-4-88555/ゆうちょ銀行〇九九店 当座 0088555┃購読申込・問合せ取り扱い書店┃人民新聞社┃TEL (06) 6572-9440 FAX (06) 6572-9441┃Mailto: people★jimmin.com(★をアットマークに)twitter
HOME社会原発問題反貧困編集一言政治海外情報投書コラムサイトについてリンク過去記事

2014/11/7更新

安部政権

テロ新法=テロ組織を指定し資産凍結を制度化
盗聴法改悪・共謀罪新設への入口
民衆の目・耳・口をふさぐ非常事態法体制

テロ新法(テロリスト指定・資産凍結法)が、国会に提案された(10月10日)。国連安保理決議を踏まえて、テロリストの資産を凍結するとされているが、日本政府が独自にテロリストを指定し、事実上、経済・社会生活を奪ってしまうような深刻な制度が用意されている。「テロ行為」の基準も曖昧で、反基地運動や反原発運動の直接行動が「テロ行為」とされる危険性もある。

カンパ禁止法の改悪も提案されている。同法の最大の問題は、募金をした人も『テロ協力者』とされることだが、改悪の第1は、提供対象体の拡大。「資金」に加えて「土地、建物、物品、役務その他の利益」を加えている。アジトを提供する行為のほか、あるゆる利益の提供が対象となる。

2点目は、「テロ企画者」に対して資金等を提供する者=「一次協力者」への「二次協力者の行為」も処罰対象としている点だ。処罰範囲は大幅に拡大される。

法律が恣意的に適用される日本において、テロ行為=「公衆等脅迫目的の犯罪」という曖昧な定義の上に、予備罪に対する幇助の幇助というような遠い行為を処罰することになれば、市民運動などに恣意的に適用されるおそれがある。テロ新法について永嶋靖久弁護士に聞いた。(文責=編集部・山田)

曖昧な定義で未遂も適用?

編集部:国連安保理が指定する「テロリスト」を自動的に指定するだけなら、国際条約上しょうがないというのが、大方の受け止め方ですが…。

永嶋弁護士:テロ新法の3条=「公告」では、アル・カイーダ、タリバンなどが指定されることになります(安保理決議1267号)。国連安保理制裁委員会がテロリストのリストを作っており、このリストにのっていれば自動的に対象とする条文だからです。

4条=「指定」は、安保理決議1373号によるテロ組織を指定することになっていますが、国連がリストを作っているわけではないので、日本政府が独自に指定することになります。政府や大手メディアは、「国連安保理が指定するリスト」のみというような、間違った説明をしていますが、実際は、日本政府が曖昧な基準で、どこまでも指定対象範囲を広げる可能性があります。

条文では、指定されるのは、外国為替法で外国送金が規制されることとなる者のうち、まず、「テロ行為」を「行おうとし、または助けた者で、将来またそのおそれがある者」が含まれます。未遂であっても、支援者も含めて指定されうることになります。さらに、英・米が作っている「リスト」にのっている者も加わります。

現在、外為法で外国送金が規制されている者には、ハマスやPFLP・PFLP―GCなどが入っていますが、これも、日本政府が指定しています。

「テロ行為」の定義は曖昧です。例えば、「政府を脅迫する目的で航空機もしくは船舶を破壊し、その他これに重大なる損傷を与える行為」が「テロ行為」とされています。辺野古で海上保安庁の巡視艇の前を航行したり、巡視艇にぶつかっていく行為なども、基地移転に反対するのが目的なので、政府を脅迫する目的とされ、「テロ行為」とされる可能性があります。

また、政府を脅迫する目的で「建造物」をなんらかの方法で破壊し、その他これに重大な損傷を与える行為も対象です。例えば、「オリンピックをやめないと公園の公衆便所を壊すぞ」という脅迫行為は、テロ行為となりえます。

これらの行為を現に行わなくても、行おうとし、そして将来行い、または助ける明らかな恐れがあれば、「テロリスト」に指定される可能性があります。

つまり、今回の法案は、未遂でも将来の危険性を理由に、日本政府が独自に「テロリスト」を指定して規制できる点が、際だった特徴です。

社会生活奪う重い罰則

「テロリスト」に指定されると、公安委員会の許可なしには預貯金の引き出しができなくなり、その他金銭・有価証券、土地・建物・自動車などの贈与・貸付けを受けること、処分の対価の支払を受けること、さらに、内閣が政令で指定すれば、生命保険金や火災保険金の受け取りも公安委員会の許可なしにできなくなります(9条)。

金銭・有価証券など規制対象財産を贈ったり貸したりした側も罰せられます(15条)。1回目の贈与や取引に対して公安員会から禁止命令が出され、2回目以降は、罰則が課せられます。

銀行取引が全面停止されれば、口座引き落とし、クレジット決済もできなくなり、通常の社会生活・経済生活を根こそぎ奪うことになります。

これは、憲法29条で保証されている「財産権」を侵害するもので、憲法違反の疑いが強い法案と言えます。

「対テロ戦争」参戦法案

テロ新法は、犯罪資金の洗浄やテロ活動資金を監視する国際組織である「金融活動作業部会」(FATF)が、日本政府に対して行った勧告が根拠だと説明されています。しかし、そもそも資産の凍結という制裁は、戦時に敵に対して行われる戦争の手段なのです。先の第2次大戦時、米国内の日系移民・市民の資産が凍結され、収容所に送られたこともその一例です。

資産凍結はソフトな戦争手段としてありますので、日本政府は対テロ戦争の当事者としての役割を、今まで以上に果たすことを内外に示す法案でもあります。対テロ戦争への武力行使なきいっそうの参戦という意味もあると言ってよいでしょう。

編:成立の見込みは?

永嶋:同法案は、内閣委員会に提案されているのですが、審議の順番としては後ろと言われていますが、どうなるかわかりません。

次期国会では、盗聴法の改悪と司法取引(仲間の売り渡し)も提案されようとしています。そして、これらの法案が成立した後に控えているのが、共謀罪です。

テロ新法は、一連の治安立法の大きな節目になる法案ですが、まだまだ、その危険性は知られていません。

カンパ禁止法改悪とあわせて、その危険性を周知し、早急に反対世論を形成しなければなりません。

  HOME社会原発問題反貧困編集一言政治海外情報投書コラムサイトについてリンク過去記事

人民新聞社 本社 〒552-0023 大阪市港区港晴3-3-18 2F
TEL (06) 6572-9440 FAX (06) 6572-9441 Mailto:people★jimmin.com(★をアットマークに)
Copyright Jimmin Shimbun. All Rights Reserved.