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2014/10/3更新

日本の常識=世界の非常識
朝日は「日本軍慰安婦」の真実にもっと迫れ

浅野 健一  
ジャーナリスト/同志社大学大学院社会学研究科博士課程教授(京都地裁で地位確認係争中)

米国と一緒にいつでも戦争ができる国を目指す安倍晋三・自公政権下で、「非国民」「国賊」と言わんばかりのファナティックな報道が大新聞と雑誌で展開され、朝日新聞の木村伊量社長が9月11日、記者会見し、東京電力福島第1原発事故の「吉田調書」報道と、慰安婦報道を巡る「吉田虚偽証言」誤報を謝罪した。歴史改竄主義者と読売新聞、産経新聞と極右悪徳週刊誌が共謀して進めてきた朝日新聞「従軍慰安婦報道」攻撃に屈服したのである。

新聞が誤った報道についてお詫びと訂正を行うことは悪いことではないが、誰が何のために朝日を攻撃してきたかを見極め、朝日の謝罪によって日本の人民の歴史認識がより一層「世界の非常識」になっていくことを見なければならない。

極右反動靖国派の政治家・メディアと歴史改竄主義者の従軍慰安婦という用語は、誤っている。日本軍慰安婦または日本軍性奴隷と表現すべきだ。

極右メディアは、前々から日本軍慰安婦の存在そのものを否定してきた。特に、第2次安倍政権が発足した12年末以降、日本軍慰安婦の強制性を認めた「河野談話」(1993年)を否定しようと躍起になっていた。結局、米国など国際社会からの反発で、談話の継続を表明するしかなくなった。

ここで再確認したいのは、安倍氏が内閣官房副長官だった01年1月に日本軍慰安婦問題を取り上げたNHK「ETV番組」番組について、放送直前にNHK理事を官邸に呼び、「公正・中立にやってほしい」と注文を付け、番組を改竄させたことだ。安倍氏がNHKに対して特定の番組の改編を求めたことは、市民団体がNHK相手に起こした民事裁判の確定判決で認定されている。安倍氏の言動は、憲法で禁止されている検閲に当たる。ところが朝日は、安倍氏らがNHKに圧力をかけた事実を報じた本多雅和記者らのスクープ記事について、一部書き過ぎがあったと謝罪し、安倍氏の復権を許した。

朝日はまた、日本軍慰安婦問題で、村山富市首相時代に行った民間のアジア女性基金を評価して、国家による謝罪と賠償を求めていない。日本軍慰安婦の歴史的事実を認めるならば、河野談話を国会決議にして、日本政府が謝罪と補償をすべきなのは当然だ。したがって、朝日の日本軍慰安婦問題の姿勢は極めて生ぬるい、と私は思っている。女性基金構想を支えた当時の左翼リベラル文化人の責任もある。

しかし、そのマイルドな朝日が激しいバッシングを受けているのは、看過できない。きっかけは、朝日新聞が8月5、6日付朝刊に「慰安婦問題」の自社報道検証記事を掲載したことだ。極右メディアやネット上に、「『慰安婦』問題は朝日の誤報・捏造によって作られた」という中傷や批判が止まらないことへの反論だった。

特集記事では、「慰安婦を強制連行」との故吉田清治氏の証言は虚偽として記事を取り消し、「慰安婦」と「女子挺身隊」を混同した誤用を認め、「元慰安婦初の証言」記事に取材記者による事実の歪曲はなかった、とした。「強制連行」については、朝鮮や台湾に限れば「軍による強制連行を直接示す公的文書」は見つかっていないが、他の地域には証拠もあること、問題の本質は軍の慰安所で女性たちが自由を奪われ、意に反して「慰安婦」にされたという強制性にあることだ、と書いた。

この検証記事は、日本軍慰安婦問題が表面化した1990年代以降の調査・研究に沿っており、常識的な内容だった。ところが、極右メディアは、朝日が誤報を認めたとか、訂正までに32年かかった、謝罪がないなどと非難した。朝日叩きについては、山口正紀氏が「週刊金曜日」(8月29日、9月12日)に書いているので、参照してほしい。

靖国派政治家と極右メディアの二人三脚

読売は社説で、《広義の強制性があったとして日本政府の責任を問うことは、議論のすり替え》と主張。産経は6日《「強制連行」の根幹崩れた》と題した社説、特集記事などを載せた。歴史に無知な政治家は、極右メディアと二人三脚で朝日非難を展開した。石破茂自民党幹事長(当時)は8月5日、「検証を議会の場でも行うことが必要かもしれない」と記者団に語った。国会で取り上げる、という暴論だ。橋下徹大阪市長は「産経が頑張って、朝日が白旗あげた」などとはしゃいだ。

また、安倍首相は8日、産経記者の取材に、(吉田証言が)「事実として報道されたことにより、日韓の2国関係に大きな影響を与えた」と語った。

東京新聞だけが7日の特報欄で《報道統制狙う?》と、警鐘を鳴らした。

読売などは、朝日の吉田証言などの報道が《河野談話の伏線となったことは間違いない》と書いているが、河野談話は各国の公文書、旧軍・朝鮮総督府・慰安所関係者などへの聞き取り調査を基に作成されている。

ここまで新聞社が攻撃されるのは、沖縄密約事件の西山太吉記者の逮捕時の毎日新聞攻撃以来ではないか。読売新聞は、拡販のため朝日非難のチラシを300万枚配ったという。「朝日廃刊の危機」というデマも飛んでいる。

9月10日発売の週刊誌は《トップの開き直り、後手後手の対応の果て…朝日新聞が死んだ日》(週刊文春)《広告黒塗り!場当たり対応!説明責任に頬かむり!続おごる「朝日」は久しからず》(週刊新潮)などという新聞広告を載せている。《朝日新聞「売国のDNA」》(週刊文春)《1億国民が報道被害者になった「従軍慰安婦」大誤報!》(週刊新潮)《慰安婦の大虚報朝日新聞の重罪》(週刊ポスト)というタイトルもあった。講談社が日本軍慰安婦否定に参加しているのは、極めて残念だ。朝日攻撃は、中国・韓国攻撃の誌面作りと連動している。

悪徳週刊誌が朝日攻撃を展開するのは、日本軍慰安婦否定を喜ぶ民衆がいるからだ。講談社のある幹部は、「中韓を攻撃すると部数が伸びる」と話している。集英社の編集者は、「昔のような事件報道では部数は動かない。中韓の脅威を煽り、歴史修正主義の記事を出すと、売れるのは事実だ。しかし、弊誌はその路線をとらない。誤った事実で読者を煽ってはいけない」と語った。

中学の歴史教科書から日本軍慰安婦の記述が消え、日本の侵略戦争の過去についてきちんとした教育がなく、記者クラブメディアがほとんど報道しないために、日本軍慰安婦を左翼の捏造と思い込んでいる市民が多いからだ。今、朝日など報道機関に求められているのは、日本軍慰安婦問題の真実を明らかにして、すべての人民が歴史的事実と向き合うことだ。

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